東京ガスが提案「生産性向上につながる厨房環境のつくり方」、従業員満足度の向上に着目
約100名の参加者が見守る中、東京ガス業務用営業部の丸山文洋氏は「厨房生産性向上委員会」の活動成果を報告。千葉大学の林立也准教授は厨房の生産性を向上させる方法を説明して、「厨房ESチェックリスト」の活用を提案。給食・外食業界で人手不足が深刻化しているなか、従業員満足度の向上に着目した生産性向上につながる働く環境の作り方を紹介した。
東京ガス業務用営業部 丸山文洋氏
〈「従業員の満足を高める」ことは「お客様の満足を高める」ことである〉
「食の作り手の皆さまの環境を整えることは、東京ガスの使命である。なぜならば、ガスや電気などのエネルギーをご利用頂いているお客さまが抱えている課題は東京ガスの課題であり、その課題である『人材不足を補う生産性向上』にむけて我々は全力で取り組む必要がある」。
東京ガスの丸山氏は冒頭、このように述べて、業務用厨房の環境を向上させる活動を丁寧に説明した。丸山氏によると、従来は「お客様満足」(CS)」が重視されてきたが、近年は「従業員満足(ES)」を高めることによってお客様の満足につなげていくという、考え方の転換が進んできているという。
この考え方をもとに、東京ガスは業務用厨房に造詣が深い専門家から成る「厨房生産性向上委員会」を2017年に設立。従業員満足の向上、働きやすい、かつ働きたくなる厨房環境の実現を目指して活動を展開してきた。
2019年2月には委員会の活動結果をまとめた「生産性向上につながる働く環境のつくり方」冊子を作成。日本ホテルの中村勝宏統括名誉総料理長と帝国ホテルの田中健一郎総料理長の対談記事とともに、従業員満足度を高める「厨房ESチェックリスト」や企業の取り組み事例を紹介している。
厨房生産性向上委員会作成「生産性向上につながる働く環境のつくり方」冊子
千葉大学の林准教授は「生産性を上げるためには、インプット(投入)を下げるか、アウトプット(産出)を上げるかの2通りがあるが、飲食業界の生産性向上はロボット化やシステム化など前者が多く語られ、後者は体系的に整理されていないのが現状である。アウトプットを上げるためには、これまで市場開拓や顧客満足度の向上に重点が置かれていたが、これからは従業員満足度の向上が必要不可欠である」とESの必要性を強調。
千葉大学 林立也准教授
厨房での作業は緊張状態が続き、身体的・心理的負荷が大きく、オフィス作業と比べて肉体的・精神的疲労が蓄積されやすい。林准教授は「ESを高めるためには、快適性、作業性(働きやすさ)、コミュニケーション、リフレッシュの4つの機能を良好に保つことが大事だ。『厨房ESチェックリスト』を活用して、従業員の現状を確認、チェック結果からの気づきを好循環の起点にして改善に努めてほしい」と提案した。
〈「厨房ESチェックリスト」で厨房環境の課題を見える化〉
「厨房ESチェックリスト」は、委員会が実際に飲食で働く従業員へヒヤリングを行い、先述した4つの機能と関わる事項をチェック項目として抽出して作成したもの。労働環境の改善や不足している機能を効率的に把握でき,結果から得た気づきをもとに対策を講じることで、経営・運営と厨房現場の改善に好循環を生み出すことが可能。
「厨房ESチェックリスト」は東京ガス公式サイト内のページ(https://eee.tokyo-gas.co.jp/service/saitekichubo/es/)よりダウンロードができる。
今後、日本の生産年齢人口は加速度的に減少していく。深刻な人手不足が予測されるなか、働き方改革が提唱され、長時間労働の抑制やIT 化の促進、多様な人材雇用が推奨されているが、人材の確保と育成は大きな課題となっている。
東京ガスは日本の食文化の継承・発展のためにも、働く人の安全と健康を守り、高い意識をもって仕事に向き合える、“働きやすい厨房環境の実現”に向けて、今後も活動していくという。