給食企業の「スマートミール」認証事例(2)サンユー 「健康な食事・食環境への取り組み ~栄養士の力を活かして~」

サンユー 品質保証部担当次長(管理栄養士)鈴木陽子氏
日本給食サービス協会は去る2月20日、第40回フード・ケータリングショーの一環として、協会主催セミナー「~安全・安心に取り組んでおります~健康な食事・食環境『スマートミール』への取り組み」を開催、給食企業3社がスマートミール認証の導入事例を紹介した。

〈関連記事〉第40回フード・ケータリングショーで給食企業の「スマートミール」認証事例を紹介/日本給食サービス協会=https://www.ssnp.co.jp/news/feeding/2019/06/2019-0624-1115-14.html

以下、サンユーの事例紹介。

受託先事業所で星3つの認証を取得した。認証店舗の食堂座席数は約300席で、平均食数は昼食で約350食。

スマートミール認証基準

スマートミール認証基準

お客様は従業員の健康に対して関心が高く、所長出席の給食会議を毎月実施し、栄養指導講習会も開くほど。2005年には「ヘルシー定食」の提供を開始したが、当時は「健康な食事」の基準がなく他の定食との違いを認識してもらえなかった。そこで、今回、新たに「健康な食事」の基準が設けられたことから、胸を張っておすすめできる健康食を提供したいという思いで、スマートミールの認証取得をお客様に提案した。今では、昼食メニューで「バランスランチ」という名称で、A・B定食とともに提供している。

バランスランチの例

バランスランチの例

〈スマートミール導入に向けた準備〉
認証取得に向けてお客様の理解を得た後、次に取り組んだのが、調理従事者への説明だ。本社が献立を作成しても現場でしっかり調理できない場合もあり、作業動線や作業場所の確保、作業分担決めなどを綿密に話し合った。
 
A・B定食との違いが一目で分かるように食器を新たに用意して、お客様に興味を持ってもらえるようスマートミールの説明や案内表示も作成した。
 
献立作成時には使用できる食材の調査を行った。これまで使用したことがない野菜も使って新しい献立を作りたいと思ったが、毎日提供することや、価格、発注単位、オプション項目等も意識して献立を作った。その後、味や見た目だけでなく、現場で必要な調理器具類も確認しながら調理試作を行った。
 
〈献立の基本設定と注意点〉
認証基準のオプション項目は、8、9、10、11、13、14、20、22、24、25の合計10項目をクリアした。基準は「ちゃんと」。1食あたり約550kcal でPFC バランスと食塩相当量は基準どおりだ。月・水・金曜日の主菜は魚で、主食は「五穀米」。主食の量は選択でき、普通量は150gで小盛量は100g。大盛りは提供しない。中途半端に終わってしまった「ヘルシー定食」の反省を踏まえ、A・B定食との差別化を考え、主菜には揚げ物をいれず、またA・B定食では小鉢を選択できるが、バランスランチでは定食の形でトレーごと提供している。
 
主な注意点は、▼野菜使用量が多いので使用方法を工夫する▼週3回魚を提供するので変化をつける▼満腹感が得られやすいよう食材を大きく切る、歯ごたえのある食材を使うなど工夫する▼価格や発注単位等をチェックして、冷凍の食材を上手に活用する▼作業スペースや設備が限られているので、安全な工程を考える――など。
 
苦労したのは、主食の量を調整してもPFC 比を基準内に収まるようにしたことだ。事業所給食では、お客様が食堂に来たらすぐに提供する必要があり、その場で主菜・副菜の内容量を変えられないため、主食の量を減らしただけでも基準を満たすよう工夫した。食堂には、食事の選択時に必要な栄養情報等を掲示し、周知に努めている。これまでも実施していたが、認証を取得にあたり「健康な食環境」における情報提供ということを意識し様々な掲示を行っている。
 
〈「見た目」「味」「腹持ち」も大事〉
毎日、バランスランチを召し上がるお客様もいる。飽きのこないよう工夫するとともに、体に良い食事も、「見た目」「味」「腹持ち」が悪いと売れないので、献立だけでなく、いろいろなところに注意して食数増を実現したい。また、他の店舗にも展開するよう取り組みたい。それらのことを実現するためにも、社内外にスマートミールのPR を行い、認知度向上を図りたい。