日清医療食品が大竹栄養専門学校で特別授業、少子高齢化の中で即戦力の栄養士教育のため産学連携
去る11月12日に実施したもので、通常、契約先病院・介護施設のみにしか提供していない「モバイルプラス(※1)」を活用し、
〈1〉社会課題である少子高齢化とその対策
〈2〉省力化となるクックチル(※2)商品の有用性
――の2点を伝えることを目的としたもの。専門学校2年生43人が参加し、クックチル商品の活用と現場の省力化の効果を体験した。産学連携のコラボ授業の詳細をまとめる。
※1モバイルプラスは、日清医療食品(株)のセントラルキッチン(大量調理を一箇所で行う施設)でクックチル方式により大量調理した食事を、受託先事業所のニーズに合わせて、真空パックにして配送するサービス。
※2クックチルとは、加熱調理した食品を急速冷却し、喫食時間に合わせて再加熱し、提供する調理システム。
〈クックチル商品の有効活用による現場の省力化を伝える〉
少子高齢化が進むなか、様々な業界で人手不足が顕在化している。病院・介護施設においても例外ではなく、現場の負荷低減や生産性向上が大きな課題だ。日清医療食品(株)によると、「多くの病院・介護施設は依然、クックサーブ(※3)で食事を提供しているが、徐々にセントラルキッチン(以下、CK)を活用したクックチル方式での食事提供を導入する病院・施設が増えている」という。
※3クックサーブとは、現地で食材を下処理・加熱等に調理後、すぐに提供する調理法。
しかし教育現場では、従来のクックサーブ方式は学べるが、クックチル方式については座学がメインで、その有用性は学びにくい。そこで、大竹栄養専門学校は日清医療食品(株)が和洋女子大学や龍谷大学等で特別授業をしていることを聞き、同社に特別授業を依頼、開催に至った。専門学校副校長の小泉あゆみ先生は「少子高齢化でクックチル方式による食事提供が主流になりつつある。経験をしていないと、社会に出た学生は職場で戸惑うこともあるため、実施したかった」と動機を語る。授業は、「応用栄養学実習」として行われ、常食・エネルギーコントロール食(以下、エネコン食)それぞれ約20食の「モバイルプラス」が提供された。
日清医療食品のクックチル商品(さわらのみりん焼き、大根おろし、花人参)
調理を始める前、阿南道也管理栄養士(日清医療食品(株)東京支店管理部受託管理企画課)は、「少子高齢化によるマンパワーの減少は避けて通れない。このままいくと、食事の提供が1日2食の時代がくるという声もある。今までと同じ仕事をしていたら、3回の食事提供が厳しくなるので、少ない人数で高い品質の食事を一括して管理、提供することが求められる」とCK方式に注力する社会背景を説明した。
その上で、全国5工場で日産延べ13万食を製造する各CKを紹介。CKの役割については、「献立作成・発注・検収・下処理といった給食管理業務の一元化により、品質の恒久的維持が可能」とし、「各CKで献立を共有し、調理工程を統一することで、安定した品質を確保し、不足の事態での供給力を確保できる。また、集中した品質管理を行うことで、安全で衛生的な食事提供を行う。さらに、献立作成業務の集約により、事業所における事務作業の効率化、調理作業の簡素化、時間の短縮による省力化も実現する」と詳細に語った。
学生は常食とエネコン食のチームに分かれ、サテライトキッチンに見立てた実習室で調理に挑む。手袋をつけて衛生管理に注意しながら、湯煎、開梱、食材計量、食器選択、盛り付け、洗浄といった作業を分担する。40分もすると、どの班も調理を完了した。クックサーブに比べて短い時間で終了する手際の良さに驚く学生は多く「簡単」「楽すぎて何もすることがない人もいた」「5人分だと実際は1人でも対応ができると思う」などの声が聞かれた。また、食事については「クックサーブとの違いを感じなかった」とコメント。「こういう商品が一般で売られたら買う人が出ると思う」「特に制限食については求めている人が多いのではないか」とクックチル商品の可能性を考える学生もいた。
クックチル商品を活用した調理メニュー例
〈実際の給食提供を教わることは大きな学び〉
調理終了後、阿南管理栄養士は「(クックチル商品の)袋を開ける際はハサミを途中まで入れた方が良い。全て切ってしまうと、切り落とした部分が異物混入につながる恐れがある」と指摘するなど、細かい部分まで丁寧にフォローした。また、味噌汁の調理について、「通常、鍋に具材を入れて味噌を溶くやり方があるが、それは少人数の場合である」とし、「100食・200食の大量調理では、水で戻した具(お麩、わかめ)を先にお椀に入れて、それから味噌を入れると時間短縮を図ることができる」と提案。これらの説明に響く学生は多く、大量調理の様々な工夫に驚き、学びとした。
小泉あゆみ先生は「実際に現場で活躍されているプロの説明を聞けて、学生は大いに学んだのがわかった」と授業の効果を語った。
厳しい人手不足の中でこれまで同様の給食を継続するためには、CK方式のような新しい給食システムが不可欠になっている。今回の授業のように実際の給食サービスで行われている提供方法を伝えて、業界に人材を呼び込む取り組みは令和でさらに求められてくるだろう。