〈新型コロナ〉学校給食の卸3団体などが農水省・文科省に補償を陳情
新型コロナウイルス問題で、政府が小中高校等を対象に3月2日から春休みまで臨時休校を要請した件で4日、学校給食に携わる卸3団体等は全国給食事業協同組合連合会事務局にて行政関係者2人とヒアリングを実施した。
今回「新型コロナウイルス感染症対策のための学校給食中止における課題検討会」としてヒアリングに集まったメンバーは、
◆全国給食事業協同組合連合会
・中島正二副会長(中島食品社長)
・原田哲郎専務理事
◆(一社)日本給食品連合会
・野口昌孝会長(野口食品社長)
・中込武文副会長(甲信食糧社長)
・大塚史生専務理事
◆(公社)学校給食物資開発研究協会
・福島毅春理事(ふくしま社長)
・渡辺浩志専務理事
・高橋俊之事務長
◆協同組合関東給食会
・平井昌一副理事長(日栄物産社長)
◆学校給食用食品メーカー協会
・北條新太郎事務局
――の10氏。
事務局に招請されたのは、農林水産省からは、食料産業局食品流通課の石黒梓食品サービス第1班係員、文部科学省からは、初等中等教育局健康教育・食育課の齊藤るみ学校給食調査官の2氏。
検討会後、近隣ホテルで「学校給食卸の現況と今後の対応」と題して緊急記者会見が行われた。各代表者の発言概要は次の通り(敬称略)。
〈中込〉 地元山梨の県委員に書類を提出した際、バラツキがあり、団体として対応した方がよいと関係者に連絡したところ、各団体の役員から何かをしないといけないとなり、各会長に電話をして進めた。政府の補償問題が進まないうちに予算取りをきちんと上に上げてもらわないと間に合わないと考え、農水省と文科省関係者に伝達する場を設けた。行政からすれば、今現場で何が起こっているのか分からない。一方で被害状況の把握は、各社からのアンケートが未だ集まらない状況だが、3月の売上は1日か2日分しかないのは確実で、今回の意見を検討材料にしていただきたい。
〈平井〉 全国の小中学校には概算930万人いて、4,200円×1カ月間で計算すれば、学校給食の食材費390億円がなくなるということ。一方、支払いは月末とか日割りとか各行政がバラバラだ。学校給食のために食品を発注し、補填しているのだから、国の明確な指針が必要だ。
〈大塚〉 各地域の学校や給食センターと交渉しても対応はまちまちで、伝えても進まない。休校日も違い、当面休校しない所もある。全国の小学校中学校合わせて約930万人いて、食材費の390億円のうち生鮮食品が半分を占めている。全国に運ぶ冷食やチルドの食材費だけでも約200億円程度の影響は出てくると考えられている。
ここで、野口日給連会長が3日に農水省の要請により公明党と行ったヒアリング内容(問題点と要望)を紹介した。その内容は次の通り。
「突然の休校であらゆる業者が混乱している。3月の献立を確認して発注した後だったため、メーカーで生産したり、すでに手配した食材について個別交渉しているが、4月もすでに完了しており順延は難しい。また3月は年度末のため高額商品も多い。すでに2月中には倉庫に入っている。卒業生祝いとして予算が余った中でよいものを作るなどもしており転売は難しい。高額商品であり、かつ日本で一斉に起こっているため、またイベントやテーマパーク、カラオケ店など疲弊する中で転売も難しい。幼稚園も食材供給がほぼキャンセルとなり、学校以外の業態もシュリンクしている。国の支援が何か分からず、暗中模索で不安状態だ。対応やリカバリーなど、国として関係省庁と連携するなど、国として取り決めたものであり、何とか明確な指針がほしい」
〈中込〉 国策として休校にしようとしており、ほぼ90%以上のロスが出る。学校給食が止まったら、廃業する企業も出てくる。給食費を払う払わないとか、納品が未だなら払う必要がないとか、個々でやると進まないので国の補填などスピードある対応をお願いしたい。
〈中島〉 都は23の行政府があって対応が異なり、更に1校1校との仕事のために細かい対応が迫られている。また都の場合、ほとんどが手作りのために、献立が出て直ぐに動かないといけない状況の中、ほとんどが生鮮品であり、廃棄するにあたってはどこまで補償してくれるのか1校1校に当たっているのが現状だ。
〈福島〉 地元埼玉県では、40市町村ある中で36について2日より休校となり、納品も28日で止まった。それでも受け入れてもらえる学校でも納品はバラバラで、一部の市町村はそれすら返品するなど受け入れ態勢がないところもある。3月分の仕入もすでに随分入っているが先が見えない。国には我々の要請にできるかぎりの対応をお願いするためヒアリングに加わった。
〈平井〉 地元群馬県では、太田市の学校が休校をしないなど一定の理解がある。「キャンセルできるものはキャンセルを、キャンセルできないものは請求して」と言われ助かっている。コロナウイルス問題を原因とする子を持つ保護者向けの助成金の新設が発表される中、我々企業に対する補償はない。我々にとって3月の売上や利益が1番大事で、利益補償が1番大事だ。痛みを分かち合うような対応の施策をしていただかないと、体力のない企業は持たない。これまで学校給食を育ててきた企業は多い。多少の無理なら当たり前で、例えば山の奥地でも使命感で配送するなど頑張ってきたが、今は必要以上にダメージを受けないよう努めるしかないと話をした。
〈中島〉 食品メーカーからは、各問屋の与信の状況をうかがっているとの話も聞いている。メーカーが問屋に対して再度、与信の見直しをしている状況がある。そしてまた我々業者だけではなく運送会社の補償も必要となっている。
〈中込〉 学校給食が中止になっても、従業員はごたごたに対応するため、市町村ごとに違う対応を強いられているため休業はできない。各地方自治体がバラバラでは、団体として取りまとめをしたり、文書の提出も難しく、手の打ちようがない。今こそ国として大きな指針が必要だ。
〈冷食日報2020年3月6日付〉