組織づくりと人づくりで安全・安心にまい進、給食への薬膳活用も/メリックス・大髙社長インタビュー

薬膳を取り入れた給食
給食事業者のメリックス(株)はコロナ禍で様々な挑戦を行っている。従来の学校・事業所・メディカルの給食受託業務と併せて、緊急事態宣言下から定期的に「応援弁当の宅配」を開始した。

また食の安全・安心に対する企業のあり方、価値観を見直し、全社一丸となってISO22000の取得を目指すとともに、衛生・品質管理を行っている食に関わる事業者を、ネットを通じて紹介するWEBサイト「TOKYO FOOD LINK」も立ち上げるなど独自の取り組みを行っている。メリックスを訪問し、大髙絵梨社長にコロナ禍の改革について詳しく話を聞いた。

メリックス 大髙社長

メリックス 大髙社長

 
〈強みを掛け合わせて社会貢献〉
――なぜ「応援弁当の宅配」を始めたのか?

 
新型コロナウイルス対策を迫られる今だからこそ、安全と安心の食を皆さんにお届けして社会に貢献したいと思い、不定期で始めました。給食の“栄養”、外食の“調理”、大量調理の“衛生”の3つの強みを掛け合わせた新しい取り組みです。見た目や味はもちろん栄養バランスにもこだわり、中には薬膳を使用した免疫力アップを考えたお弁当も提供しました。喫食者に向けた一言メッセージも喜ばれています。口コミで広がり、福利厚生として食堂を持っていない企業様や会議など特別な席に利用されています。
 
――お客様からの反応は?
 
お値段以上の良さがあると言われます。商工会議所の友人や地域の方々などそれまでビジネスのやり取りがなかった方々に、お弁当を通して会社や給食の仕事を知ってもらうきっかけになりました。オーダーされる方々のご意向を受けて、可能な限り価格を抑えながら、季節感や免疫力強化、心と体の栄養補給の要素も取り入れたお弁当をご提供することで、食堂というスペースがなくても本質的な福利厚生の在り方を実現している実感があります。
 
〈給食会社だから安全情報を届ける〉
――「TOKYO FOOD LINK」はどんなサイトか?

 
衛生・品質管理をしっかり行い、食の安全性を担保しているテイクアウトやデリバリーを行う飲食店・生産者の料理や店舗情報などを紹介しております。紹介事業者は、〈1〉HACCPに準拠した衛生管理を実施(または準備)しているか〈2〉従事するスタッフの健康・身だしなみを毎日チェックし、月次の細菌検査を実施しているか〈3〉生産者やメーカーと直接交渉し、管理栄養士・調理師が試食した上で厳選された安全・安心な美味しい旬の食材を調達しているか――など高い衛生・品質管理基準を満たしている点が特徴です。
 
――WEBサイトの狙いは?
 
コロナ対応で保健所はとても大変です。間接的でも保健所の役割を補完したいと思い、食に携わる企業の中でより高い衛生管理を実施している給食会社として、衛生や感染症対策など予防策に取り組んでいる企業を紹介して、喫食者様に安全情報を届けられると思いました。
 
〈ISO22000取得で安全・安心強化〉
――安全・安心へのこだわりを強く感じます。社内での取り組みを教えてください。

 
5月に組織改編を行い、品質管理部を中心とする業務推進ワークグループを立ち上げました。事業部をサポートするため横断的に動くチームです。定期的に情報を共有し、改善が必要な場合には随時巡回・面談を行うことで安全・安心な給食運営につなげます。
 
また、弊社は「徹底した衛生管理のもと、食の安全・安心を追求し続ける」という品質方針を掲げ、ISO22000に準じて策定した品質管理・衛生管理マニュアルに基づき安全・安心な給食づくりに努めております。
 
――ISO22000について詳しく。
 
ISO22000は食品安全マネジメントシステムに関する国際規格です。HACCPの食品衛生管理手法をもとに食品安全のリスクを低減し、安全なフードサプライチェーンの展開を実現します。サプライチェーン全体を対象としており、幅広い適用範囲を意図する内容となっております。
 
HACCPの義務化もあり、しっかり法令順守をしていることをお客様やお取引先企業にも分かるようにしたいと思い、2021年6月までの取得を目指しております。
 
――給食事業者では珍しいのでは?
 
確かに給食事業者ではISO9001やISO14000の取得が多いように感じます。弊社も2004年にISO9001の認証を取得いたしました。しかし、これから他社とご一緒する場合などを考慮しますと、早めのISO22000取得により、より安心且つスムーズな連携が取れると考え、目指しました。
 
このISO22000導入においても、先述の組織改編が良い効果をもたらしています。大きな方針に関わる部分は全社的にローカルルールを極力無くし、意思統一とマニュアル化を進めております。逆に言えば、それ以外の部分は現場判断で動きやすいようにしました。日々改善は現場で生まれるからこそ、現場で深く考える方々を増やして、自発的にサービス向上を図れるようにしました。マニュアルはそこに人をはめるものではなく、逆に人を動きやすくするものです。そう考え、円滑なISO22000の導入を進めております。
 
〈薬膳導入で免疫向上〉
――健康増進や免疫力強化の取り組みを教えてください。

 
例えば、各事業所に月次でお渡しする「栄養メモ」があり、この半年間は薬膳の考え方をそこに取り入れております。弊社では2015年より給食への薬膳導入を始めました。薬膳は日々継続して食べれば体の健康を維持する効果が期待され、毎日同じお客様が食べる給食だからこそ、薬膳を取り入れる意味があります。
 

「栄養メモ」

「栄養メモ」

 
コロナ禍だからこそ、季節と食材の性質や自分の体調を認識した上で食事を選ぶことが重要です。例えば秋は空気が乾燥しやすい季節です。身体も乾燥の影響によるトラブルが起こりやすくなりますので、食物の持つ性質を活かして、肺・呼吸器を潤す成分を摂る必要があります。給食や外食、イベントなどでカスタマイズして提供しております。
 
また、サポート契約を結んでいる陸上競技棒高跳びの山本聖途選手への栄養サポートでも薬膳の知識を取り入れた「栄養メモ」を活用しており、選手のコンディション調整に効果を発揮してベストパフォーマンスをサポートしていきます。
 
〈コミュニケーションがヒントを生む〉
――ウィズ・コロナのフードサービスで大切なことは?

 
コミュニケーションと信頼関係の構築の比重がさらに大きくなっていると感じます。感染リスクを回避する目的で導入したオンライン会議は、その利便性から、今後も引き続き取り入れていきます。また、オンライン形式での研修など、対象や目的に合わせた「場所」に捉われない仕事環境づくりは、働き方改革の一環としても定着していくことと思います。ただし、意思統一のための毎日の朝礼や夕礼は継続していきます。働き方が変化しても社内の人間ともっとコミュニケーションを図り、いろいろな声を吸い上げられるようになりたい。お互いがしっかり向き合うことで今後のヒントがみつかると思います。
 
弊社は組織づくりと人づくりを通して、メリックススタッフに誇りとやりがいを持ってもらえるよう取り組み、人づくりの企業風土を推進し、全社一丸となり組織として人づくりにコミットできる体制の構築を目指しております。これにより、管理栄養士・栄養士・調理師の地位向上や働く皆のやりがい・モチベーションアップ、働きやすさの向上、生活の質の向上につなげていき、関わる全ての方々にバリューとメリットを提供できるようこれからも精進して参ります。

◆「TOKYO FOOD LINK」WEBサイト