新調理システム推進協会、セミナーでセントラルキッチン成功事例を紹介
新調理システム推進協会は10月26日、東京ビッグサイトで開かれた医療・福祉施設設備・機器の展示会「HOSPEX JAPAN2022」にて特別企画セミナーを行った。施設経営者や管理栄養士、調理師ら60名の参加者に、HACCPの考え方を取り入れた最適な厨房運用や、働き方改革につながり人手不足を解消するニュークックチルシステムの導入ポイントについて具体的に紹介した。
2022年、新調理システム推進協会は創立33年になる。同協会は設立当初より経験と勘で養われた調理に調理科学の視点を採用することで、食の品質を高めるとともに経営効果をもたらす調理システムを各界に提案し推進している団体である。
セミナーの第一部は、協会事務局長の西耕平ニチワ電機専務による「これからの病院福祉給食に求められるニュークックチルシステム導入ポイント」。ますます厳しさを増す食材の高騰から超人手不足の時代に向けて、365日朝昼夕の食事を安定的に安全に満足のいく食事提供を可能にさせるニュークックチルシステム(加熱調理した料理を30分以内に冷却を開始し、90分以内に中心温度3℃以下まで冷却して、チルド状態のまま盛り付けを行い、食事を提供する前に器ごと再加熱する調理方式)について分かりやすく解説した。
続く第二部のテーマは「省人化&感染症対策された福知山学園のニュークックチルシステムご賞味会」。様々な福祉施設の経営に携わる社会福祉法人福知山学園の福島調理師が、法人の人気献立である、熱々の肉うどん、茶碗蒸し、ミルクパンと、冷菜にはキャベツの和え物、オレンジゼリーについて紹介、食事提供した。参加者は、「出来立て同様の温度と食感に驚いた。おいしい」とコメントした。
第三部〈1〉特別講演では、福知山学園の松本理事長が「補助金を軸とする“施設運営”から社会福祉の未来を創造する“法人経営”へ」と題して講演した。地域の多様化するニーズを的確に把握し「ヒト・モノ・カネ」の経営リソースの最適化として取り組む同法人の中期計画「FUKUGAKUバリューアップ計画」について力説。
「目まぐるしく変化する社会経済情勢のなか、社会福祉の未来を創造するには柔軟かつ斬新な発想の法人経営が必須である。利用者の質の向上を高めつつ従業員の育成を強く意識した未来型投資としての環境整備は重要」と呼びかけた。
第三部〈2〉のパネルディスカッションでは、コーディネーターに東京大学大学院工学系研究科の松田雄二氏を迎え、パネラーには福知山学園松本修理事長と福知山学園のセントラルキッチン建築設計を担当したゆう建築設計チーフの木下博人氏と西耕平氏が登壇。
福知山学園が中期計画の一環としてセントラルキッチンを建設してニュークックチルシステム方式を採用した経緯や、HACCP法制化への対応をベースに施設入居者の食事サービスが向上したことなどについて話しあった。
松本理事長は同法人の代表として、社会福祉の未来の経営について熱く語った。給食従事者含め同法人470名の従業員の働き方改革については、「建設前は1日当たりの作業時間が6施設で合計201.5時間だったが、建設後は158時間まで削減。およそ2割の省力化を実現した」とセントラルキッチン建設による効果を説明した。
木下氏は、「建築で福祉を支援する」ために、同法人の要望を建築で具現化したメソッドを紹介。
西氏は、福知山学園がニチワ電機のコンサルティングを受けて、スチコン、スチコン式再加熱カートなど厨房設備を導入し、日産1800食のセントラルキッチンを建設した背景を説明。厨房運用において欠かせない「厨房の5S」について説明した。
最後に、松本理事長は「セントラルキッチンを採用したことで、法人としてHACCPを理解しニュークックチルシステムのトレーニングを行い、これからの食事サービスを法人全体で学ぶことができた。計画当初は、古くより頑張ってもらっている調理師さんから理解を得るのが難しかったが、計画をすすめていく中で皆さんに理解され、70歳、80歳まで働けるうちは頑張るとまで言ってもらえた」と振り返り、「セントラルキッチンの建設は働く人が満足できる企業にするためには不可欠だった。経営陣が現場で働く人の考えをきちんと汲み取ることができることは学びになった」と語った。