「コロナ禍でデジタル化は進むも、DXは進んでいません」-インフォマート石塚氏が語る現状と課題

インフォマートフードマーケティング部部長の石塚賢吾氏
インフォマートフードマーケティング部部長の石塚賢吾氏

コロナ禍におけるテレワークの進展や電子帳簿保存法の改正、インボイス制度の開始で、業態・業種問わずデジタル化が進んでいる。フード業界でも、従来、紙で行っていた受発注や支払請求などの企業間商取引をインターネット上で行い、業務効率と情報精度を共に向上させる動きが浸透してきている。その立役者が、BtoBプラットフォームの普及で日本の商取引のデジタル一本化を進めるインフォマートだ。利用実績は2024年3月末時点で、企業数104万社、事業所数194万店舗、担当者数282万人に上り、年間流通金額は2023年度で44兆453億円と、プラットフォーム型サービスではトップシェアを誇る。フードマーケティング部部長の石塚賢吾氏にフード業界におけるデジタル化について話を聞いた。

現状を尋ねると、間髪入れず返ってきたのが「コロナ禍でデジタル化は進むも、DXは進んでいません」という言葉だった。

「デジタル化は、まずこれまでのアナログデータをデジタルに変換することから始まります。その基盤を作っていただいてからDXが始まります。しかし、現状、デジタル化で留まっている企業がほとんどです」と述べ、「外食や給食では、その店舗が一日どれだけの収入があって支出があるのかを分析して、販売戦略を立てなければ経営は続きません。その戦略立案のためには、一日の仕入れ金額、請求金額、料理ごとの売上金額を明確にして、そのデータをもとに適切な原価率を設定することが求められますが、データがあっても活用しきれていない企業や、データ自体とれていない企業も業態によっては多いのが現状です」と説明した。

では、デジタル化及びDXを阻む要因は何なのか。

デジタル化については、「電子帳簿保存法改正、インボイス制度施行で、とりあえず請求書のみをデジタル化した企業は多いですが、商取引全体をデジタル化している企業はそこまで多くありません。その理由は、これまでの仕事の文化が根付いているからだと思います。先に請求書をデジタル化したからこそ、それまでの過程も見直した方がいいのではないかと思い、さらに一歩前進できる企業とその一歩が踏み出せない企業の差は今後も生まれてくるでしょう。一歩踏み出すことで会社が成長するのか、踏みとどまるのか。コロナ禍が明けてその分岐点が今だと強く感じています」と見解を述べた。

また、DXについては、社内での連携不足を要因に挙げた。

「各社のサービスアプリケーションのデータがバラバラでつながっていないからDXが浸透していないと考えます。DXをしようと思うなら、まずはデジタル化すること。次にそのデジタルデータをつなげることです」と述べ、「例えば、DXを実現している先行企業では、戦略的に購買をしています 。現在の購買データをもとに次期の購買量を予測して決定し、早期に卸企業と売買取引しているため、商品を安定的に仕入れることができ、必要な食材仕入れを行うため店舗における食品ロスを削減するなど様々な効果を得ています」と事例を語った。

最後に、今後について尋ねると、「コロナ禍が明けて人手不足が深刻になっている中、従来の仕事のあり方を見直し業務効率化を図らなければ、フード業界だけがデジタル化に乗り遅れ、産業自体、縮小してしまう恐れもあります。北欧を筆頭に世界各国では、商取引の一連の流れにおいてアナログデータを挟まず、デジタルデータだけで一本化する動きが主流になりつつあり、日本も同様に、業務効率化を進めなくてはいけません。当社は、BtoBプラットフォームを通じて仕事の標準化を実現します。各社が別々のフォーマットでばらばらに『競争』するのではなく、プラットフォームという共通のフォーマットを使い、共通のデータをもとに『共創』することで業界全体が発展することができます。それがひいては、フード業界の成長につながり、国力アップになります。ニッポンの商いを、イッポンに。コロナ禍が明けたからこそ、デジタル化の分岐点に差し掛かっていると考えています」と語った。

なお、石塚氏の横に掲示されたポスターは、日本経済新聞社が2023年10月に発表した「第50回日経産業新聞広告賞」において、最優秀賞を受賞した。広告のキービジュアルに、日本を天下統一によってイッポン化した豊臣秀吉を起用。太閤検地をはじめとする政策で日本国内の統制・統一を図り、商業や経済の発展に貢献したという志に共鳴し、風格ある豊臣秀吉をメインにした親しみやすいデザインに仕上げ、商取引の帳票類のイッポン化の普及拡大を推進する。

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