学校給食を完全無償化している自治体は30%と大幅増加、予算の確保などが今後の課題
小中学生全員を対象に学校給食費を無償化している自治体は、全国1794自治体中547自治体と約30%にのぼり、2017年の4.4%から大幅に増加した。また、小中学校のいずれかで無償化をする場合や、多子世帯や所得などを無償化の条件にするケースを含めると、722自治体となり、全体の40%におよぶ。2023年9月1日時点のもので、文部科学省が6月12日に公表した調査結果より明らかとなった。調査資料には、無償化に関するデータをはじめ、無償化の成果や課題などが示されている。
給食費の無償化をはじめた理由としては、「保護者の経済的負担の軽減、子育て支援」の他、「少子化対策」や「定住・転入の促進、地域創生(人口の増加を期待した支援)」などが並んだ。文部科学省は結果を受けて「『食育の推進』など教育の質の向上に直結する目的を掲げる自治体は少ない」とコメントしている。
さらに、無償化の財源を見ると(複数回答可)、475自治体が「自己財源」とする一方で、233自治体がコロナ禍に対応して給付された「地方創生臨時交付金」、74自治体が「ふるさと納税」と回答した。
調査では、全員無償化のみならず何らかの条件を設けて無償化を実施している計722自治体がその成果事例を回答している。結果をまとめたものが【表1】である。最も多くあがったのは、保護者に向けた成果の「経済的負担の軽減、安心して子育てできる環境の享受」。全体の61%を占める442自治体が回答した。
次いで、学校・教職員にとっての「給食費の徴収や未納者等への対応負担の解消」があがり、27%の199自治体が回答した。また、児童生徒に向けた成果としては、「家庭環境に関係なく学校給食の提供を受けることが出来る・食育の充実」や「栄養バランスの良い食事の摂取や残食を減らす意識の向上」などがあがった。地域に向けての成果は「子育て支援」「定住・転入の促進」などの回答があった。
一方で、722自治体は無償化の課題についても回答しており、結果をまとめたものが【表2】。最多は、「予算の確保」の132自治体が回答した。次いで「申請書の受付等、業務の負担増加」の42自治体となった。3番目には、「食育に対する意識の低下」があがり、【表1】の成果と相反する意見も見られた。
また、「学校給食の提供を受けていない児童生徒等への対応」をあげる自治体もあった。文部科学省が2023年5月1日に実施した調査によると、およそ28万5000人の児童・生徒が給食の提供を受けていない。給食の提供がない理由として、重度のアレルギー、不登校といった理由の他に、一部の中学校で選択式の給食を実施していることなどがあがった。