「給食の仕事」を通じたSDGsへの取り組み、事例共有で発展へ
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給食現場ではSDGsに貢献する様々な取り組みが行われている。日本給食サービス協会は2月5日、東京ビッグサイトで開かれたフード・ケータリングショーにてセミナーを開催し、会員企業3社がSDGsへの取り組みを発表。給食業界関係者約170名に、給食の仕事を通じてSDGsに貢献する工夫点や苦労話を紹介した。
日本ゼネラルフードの坂倉若菜さんは、「気候変動問題への対策として、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出削減が求められている。当社のクライアントの多くはプライム上場企業であり、温室効果ガスの排出量の開示が求められており、我々給食会社も、削減に取り組むことが必要だ」と述べ、自社の環境への取り組みを具体的に紹介した。
CO2削減の観点では、廃食用油をSAF(循環型の原料で製造された航空燃料)の原材料に使用する取り組みや太陽光発電パネルやFC(燃料電池)トラックの利用、環境負荷が少ない大豆ミートの利用拡大などの事例を挙げた。
また、外国人技能実習生に「日本で働くこと、同社で働くことが楽しい」と感じてもらえるように懇親会の開催など実習生同士の交流を図っていることや、障がい者雇用の促進、児童養護施設や母子生活支援施設の新1年生へのランドセル寄贈などの取り組みを紹介した。
今後については、ダイバーシティの推進などを挙げ、「多様な人材がさらに活躍できる職場を実現するために、社内の制度設計と従業員の意識改革を推進する」と語った。また、「持続可能な社会の実現に向けて、会社全体の数値目標をブラッシュアップし、全社を上げて目標達成に取り組む」と述べた。
ニッコクトラストの馬田忠義さんは手話通訳士とともに登壇し、『明日の「食べる」をデザインする』をテーマに自社の取り組みを紹介した。同社では、グリーンリカバリーの考えに賛同し、食から温室効果ガス排出を削減する環境問題に取り組んでいる。
給食会社ではいち早く、2017年4月より中央省庁の職員食堂でベジタリアン・ヴィーガンの食事の提供を始め、環境問題、動物愛護、健康増進を広める活動を展開。また、2017年から、週に1日だけ「菜食」を実践する「ミートフリーマンデー」の取り組みを開始し、多くの給食施設で提供を継続。大豆ミートを使用した唐揚げやおむすび、動物性食品を使用しない麺など、動物性食品から植物性食品へ置き換えることでCO2削減を進めている。
また、「働きがいを全ての人に」の考えのもと、性別や年齢、国籍の異なる多様な人材雇用と働きやすい環境整備、社内の情報をいつでも閲覧できる社内ポータルアプリの導入、ワークライフバランスをサポートする福利厚生プログラムの推進などの事例も紹介した。
最後に、「給食会社として、地域社会や地球環境に配慮した取り組みを進めることが、次世代への責任であると考えている。一人ひとりの力が集まれば、より大きな変化を生み出すことができる」とまとめた。
魚国総本社の小川まゆ子さんは、受託している全国の保育園、幼稚園、こども園で実施した食育イベント『みらいの給食週間』の取り組みを中心に発表した。『みらいの給食週間』とは、国連でSDGsが採択された9月25日を含む1週間に、世界の豊かな自然とそこで働く人々の暮らしを守るフェアトレード食材や、環境負荷の削減に役立つとされる大豆ミートや陸上養殖の魚、地産地消の野菜などを使ったメニューを日替わりで提供するイベント。
円谷プロダクションが作成した「かいじゅうステップSDGs大作戦」のアニメーション上映や絵本の読み聞かせ、世界の生産者からのビデオメッセージなどを通して、子どもたちが楽しくSDGsについて学べる場所を提供している。
小川さんは写真と動画を使いながら事例を発表後、「食の大切さを伝えることで、子どもたちが安全に安心して成長できる社会につなげたい。これからも、未来を担う子どもたちに、おいしい食事を通してSDGsの活動を広げていく」と抱負を語った
協会の東雅臣教育研修委員会委員長(東京天竜代表取締役)は、「我々、給食サービス事業者にとっては、安心しておいしく、楽しく、安全に食べられる給食を提供するとともに、栄養管理・衛生管理についても考えながら食育活動を行っていくことが大きな課題になっている。各社の発表は大変すばらしい内容だったが、発表した皆さんが言われたように、ひとつひとつの活動は普段の給食の仕事の延長線上にあり、少しの工夫でSDGsに貢献できる。このことを考え、自社の取り組みの参考にしてほしい」と語った。
日本給食サービス協会は、ホームページ上で会員によるSDGs取り組み事例を多数掲載している。CO2やフードロスの削減、環境負荷を考慮した食材の使用、食育の推進など、取り組みは多岐にわたる。そうした事例を会員同士共有することで、給食業界におけるSDGsの取り組みを推進する考えだ。