日清医療食品、持続可能な食事サービスモデル「シン・食事サービス」発表、メーカー17社と共同開発

日清医療食品は3月26日から28日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される高齢者食・介護食等の展示会「メディケアフーズ展」に出展する。2月26日には、持続可能な食事サービスモデル「シン・食事サービス」の記者説明会を開催した。
説明会には、立林勝美社長と島田理子管理栄養士が登壇。開発背景とコンセプトを説明後、食品メーカー17社と共同開発したオリジナル商品や調理済・半調理済商品、嚙む力・飲み込む力が弱くなった人へのキザミ食・ミキサー食を紹介した。展示ブースでは、「豚の角煮」「だし巻きたまご」「銀鮭の塩焼き」3種を常食・キザミ食・ミキサー食の3形態で試食提供した。

日清医療食品は病院・高齢者施設向け給食で最大手。1日あたりの提供食数は約130万食で社員数は約52,000人。「シン・食事サービス」を構築するためのプロジェクトは2023年に始まり、2024年10月から高齢者福祉施設を中心に全国で提供を開始した。
主な特徴は、調理業務の省力化と簡素化に貢献するメーカーとの商品開発、業務の標準化と自動化を実現するリヒートウォーマーの導入、時間栄養学を取り入れた献立、栄養管理業務のセンター化などがある。
説明会で立林社長は、「医療分野では担い手確保の問題が深刻で、当社においても将来を左右する最優先の課題となっている。『シン・食事サービス』のコンセプトは、より少ない担い手で、おいしくて、食べやすく、高栄養な食事を提供し、患者様や利用者様の栄養状態の維持向上を図ることだ。イノベーションを進め、超高齢社会の課題解決を目指す」と語った。
島田管理栄養士は自社を取り巻く環境課題について、社員の高齢化、人手不足、高齢者の低栄養問題を挙げ、「1日3食を厨房で調理するモデルでは、食事提供を継続できない。人の手によるサービスの維持は困難だ」と語った。
その上で、「出した1つの答えは、給食施設で手間をかけて価値を生み出すモデルからの脱却だ。これからは、急性期病院を除く一般病院や高齢者福祉施設では、手間をかけずに大きな価値を提供するモデルに転換しなくてはいけない」とし、メーカーと一緒に開発した新商品の4つのコンセプトを説明した。
1つ目は、簡単な調理で提供可能であること。2つ目は、食が細くなった高齢者でも食べ切れる量で高栄養であること。3つ目は、食べやすさと食べさせやすさ。4つ目は、味にこだわり、調理する人の経験に左右されることのないよう加工度を上げて商品化することだとした。
共同開発したメーカーは、味の素、味の素冷凍食品、伊藤ハム、ケンコーマヨネーズ、スターゼン、大冷、ニッスイ、ニチレイフーズ、日本ルナ、ノースイ、ハウスギャバン、ハナマルキ、マルハニチロ、みやけ食品、森永乳業、ヤマサ醤油、ヤマダフーズの17社。現場で使える商品にするため、開発に役立つ様々なデータをメーカーに提供したという。
特にミキサー食は、厨房で加工する時は大きな課題があるという。出来上がった料理に水分を加えてミキシングを行うため、どうしても水分量が多くなり、食が細くなった高齢者が全量摂取するのは難しくなるという。また、加工は調理従事者の経験に左右されるため物性を安定させることは難しいそうだ。
そこで、メーカーと協力して商品を開発。解凍するだけで、誰でも簡単に安定した物性の食事が提供可能だという。ミキサー食はMCTオイルを配合し、主菜は1食90gで200kcal、たんぱく質12gを含む。やわらかさの基準は、日本摂食リハビリテーション学会の嚥下調整食分類の2-2に相当。島田管理栄養士は「安定した物性で少量・高栄養であることから、食べやすく、食べさせやすく、全量摂取が見込めるので低栄養改善にも期待できる」と評価した。
2024年10月に提供開始から3カ月が経過したが、一定の効果が確認されている。
食事をした人たちの体重変化を調べると、常食・一口大・キザミ食を利用する72%の人で、平均1.2㎏の体重増加がみられた。また、ミキサー食を食べる人々の76%で体重が増え、平均1.5kg増加したという。
2025年2月末時点で、契約先の1割を占める500カ所の朝食と夕食で提供している。2025年4月からはさらに500カ所で導入できるよう話を進めており、将来的には、契約先約5500件のうち半数の導入を目指す。4月には東京田町にテストキッチン「SINspire Lab」を稼働し、商品開発を加速させるという。