はま寿司 「Pepper」全店導入で従業員の負担軽減 海外展開への貢献に期待も

Pepperが席への案内を担うことで接客業務の負担を軽減
ゼンショーホールディングス(HD、東京都港区、小川賢太郎会長兼社長)傘下の回転寿司チェーン「はま寿司」は、2016年に人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の導入を開始し、17年12月に全店舗への導入を完了した。全494店舗(18年8月2日現在)では、Pepperの導入により、来店客を客席へと誘導するまでの時間短縮を実現しているほか、Pepperが席への案内を担うことにより従業員の接客業務の負担軽減、生産性向上にも貢献している。この5月からは、多言語化への対応も図り、拡大する海外店舗への導入にも期待がかかる。

ゼンショーHD、はま寿司、ソフトバンク、ソフトバンクロボティクスが協業で、「はま寿司」店舗におけるPepperを店頭の受付や案内業務に活用する実証実験を開始したのは2016年。はま寿司店舗管理部の池ノ上達也次長は、「サイドメニューの充実などが奏功し、連日行列ができている『はま寿司』の案内業務改善に向け、Pepperの導入を開始した。『はま寿司』における接客業務で、最も従業員に負担がかかっていたのが並行して行っていた案内・会計業務。会計やテイクアウトが重なった場合、空席があっても来店されたお客様をお待たせしてしまう場面もあったため、スムーズな案内・会計業務の遂行と従業員の負担軽減に向け、導入を決めた」と振り返る。

はま寿司 店舗管理部 池ノ上達也次長

はま寿司 店舗管理部 池ノ上達也次長

店舗に設置されたPepperは、来店客に人数および希望する座席の種類をヒアリングし、空席がある場合は座席の番号札を発見して案内、満席の場合は整理券を発券し、座席が用意できたら来店客を呼び出して座席の番号札を発券して案内する。3店舗で実証実験をスタートし、2017年末に全店舗への導入を完了した。Pepperが席への案内を担うことにより従業員がレジでの会計業務やテーブルの片付け業務に集中できるようになり、業務効率は改善、QSCAの向上にも貢献し、同業態へのクレームも減少したという。少子高齢化により店舗で働くシニアも増える中、ロボットと人とが、共存することでスピード感のある接客を目指した。

※QSCA=Quality(品質)、Service(サービス)、Cleanliness(衛生)、Atmosphere(雰囲気)の略。

Pepperはこの5月、英語と中国語での対応を開始し、拡大するインバウンド客への対応を図っている。既にホームページや店舗のタッチパネルは前述の2言語に対応し、店頭の案内業務を多言語化することで、利便性を向上させた。同社は今後、現在7店舗ある海外店舗を拡大していく意向で、Pepperの多言語化は海外店舗での活躍に期待がかかる。「入り口にPepperを設置することで、案内業務における言葉の壁がなくなる。Pepperの存在は、海外でさらに輝くはずだ」(池ノ上氏)。さらなる多言語化を進めることで、海外出店を後押ししていく。

〈食品産業新聞 2018年8月2日付より〉