「ガスト」で本格ピザ展開、宅配市場も取り込みへ 背景に軽減税率への対応も

食感にこだわった自家製生地を使用、ガストの「マルゲリータピザ」(税抜599円)
既存店強化策の一環として「ピザ」を全面リニューアルし、宅配ピザ市場に触手を伸ばすのは、すかいらーくレストランツが運営するファミリーレストラン「ガスト」だ。

同社は今年4月、「ガスト」全店に生地にこだわった新しいピザを投入した。既存店売上高の拡大と、地方でのピザ宅配モデルを確立するため刷新したもので、ウーバージャパンが運営する「ウーバーイーツ」との連携も強化し、ファミレス市場だけでなく、宅配市場も取り込む考えだ。すかいらーくホールディングスがこのほど都内で開催した18年上期業績説明会で発表した。

谷真社長は、「ピザはファミリーにとってシェアできるアイテムとして、もう一品注文いただけるアイテムとして非常に重要だ。地方の宅配ピザの拠点は、ニーズがあるのに非常に少ない。宅配の機能を『ガスト』自身が持つことを念頭に置き、工場に投資した。経営戦略のひとつとしてピザを強化する」と本格ピザの提供にかける意気込みを語った。セントラルキッチンにおけるピザの製造ラインに約8億円を投資し、ピザ職人が手でこねる工程や、生地を伸ばす工程を機械で再現した。リニューアル後の販売数量は1.7倍(イートインのみ)に伸びており、好調に推移している。イートインは3品だけだが、ピザの宅配ステーションとして機能している店舗では14品を展開。同業態の上期宅配売上は前年比18%増で着地し、ピザの強化も功を奏しているという。

来年10月には消費税率が8%から10%に引き上げられるが、それと同時に導入されるのが軽減税率だ。外食店はイートインの場合10%、テイクアウトの場合8%に据え置きが予定されており、宅配事業を強化することで、同社は増税後も選ばれる外食店として、確固たる地位を確立したい考えだ。

〈宅配ピザ市場に新たな協業も〉
一方、宅配ピザ市場自体は横ばい傾向で推移しているものの、配達員の人手不足を受け、宅配ピザの業態では持ち帰りを強化する動きが出始めている。大手宅配ピザチェーンの日本ピザハットはこのほど、昭和シェル石油との業務提携を発表した。双方の利用客にとっての利便性の向上と新たな価値の提供を目的に協業を発表したもので今後、共同出店する店舗開発を進めていくという。

ピザハット 昭和シェル石油SS内への出店イメージ

ピザハット 昭和シェル石油SS内への出店イメージ

昨年の日本KFCホールディングスからの分離独立以降、日本ピザハットではより身近で利便性の高い場所で、楽しんでピザを食べてもらえる店舗形態を展開すべく、他業種との協業を含め、検討を続けてきた。一方、昭和シェル石油は、多様化するニーズやライフスタイルなどに対応し、より利用客の期待に応えるサービスステーション(SS)のあり方を追求してきており、今回の業務提携に至ったという。

業務提携では、昭和シェル石油のSS店舗内にピザハット店舗を設置し、利用客が燃料補給とともに、ピザのテイクアウトができる店舗となる。ピザの受け取りは事前予約もでき、利用客にとってはワンストップで2つのニーズを済ませられる、より利便性に富んだ店舗を実現する。

両社は今後、5年以内に協業型店舗を100店舗開発することを計画。日本ピザハットは現在、372店舗を運営しており、昭和シェル石油との協業で、500店舗以上の出店規模を目指す意向だ。

〈食品産業新聞 2018年8月23日付より〉