大阪市でホテル建設ラッシュ 業務用食品の売上急増、各社インバウンド提案強化
大阪観光局によると、昨年の大阪府への訪日外国人客数は、17.0%増の1100万人、消費額は35.9%増の1兆1731億円となり、1000万人、1兆円を初めて突破した。また、観光庁によると18年4~6月期の訪日外国人観光客の都道府県訪問率の1位が大阪となったこともわかった。
ここ数年、大阪は無料Wi‐Fiの増設や多言語表示の充実などインバウンド対策に注力している。また、ニューヨーク・タイムズ紙では昨年、「2017年に訪れるべき52の場所」という記事内で、大阪を「究極のごちそうが待っている」と紹介。多種多様なグルメを堪能できるのも人気の一因となっているようだ。
観光客の増加に伴い、大阪では受け皿となるホテルの建設ラッシュが続いている。19年には客室数700室以上のユニバーサル・スタジオ・ジャパン公式ホテルがJR桜島駅近くにオープン。また、20年にはJR大阪駅前「ヨドバシ梅田ビル」北側に建設中の「(仮称)ヨドバシ梅田タワー」高層部に、市内最大規模となる約1000室の客室数を誇るホテルの開業も決まった。
観光客の大幅な増加とホテルの相次ぐオープンラッシュで好調なのは、ホテルのバイキングなどに食材を提供する業務用卸だ。尾家産業(大阪市北区)は、今期の宿泊施設向けの予算を前期比10%増の54億円とし、ホテルへの営業活動を強化。7月までの累計で8.5%増と好調に推移しており、「提案会でもインバウンドコーナーやムスリム向けのハラルフードなど、外国人観光客向けの提案を強化している。注力分野でもあるため、今後も伸長していくだろう」(同社)と話す。
トーホー(神戸市東灘区)も、宿泊施設向け事業は好調に推移し、全社で前期比3.3%増。地区別に見ると大阪は全国平均を大きく上回っており、提案会でもホテル業態向けに、差別化できる「朝食商材」の提案を強化中だ。
25年開催予定の万博誘致活動も進んでおり、今後も大阪の外国人観光客による活況は続きそうだ。しかしながら懸念もある。「大阪府北部地震」や「平成30年台風21号」のような大規模な災害への対応だ。外国人向けの防災対策は居住者を対象としたものが多く、観光客向けの情報発信はまだまだ不十分な点が多い。今後、大阪が真の国際都市となるには、災害時の多言語支援といった対策が喫緊の課題となる。
〈食品産業新聞 2018年10月1日付より〉