ラーメン「一蘭」、開発に20年「100%とんこつ不使用ラーメン」の狙いとは
拡大する訪日外国人客への対応を図るため、同社は要望の多かった「100%とんこつ不使用ラーメン」専門店の出店に至った。開発プロジェクトメンバーの鶴巻英志氏は、「既存の『天然とんこつラーメン』に並ぶ、またはそれ以上の味を作ろうと試作を重ねた自信作。『一蘭』の新たな起爆剤として多くのインバウンド客を呼び込みたい」と強調する。2月28日の専門店オープンを目前に控え、同店への思いを語った。
〈「“天然とんこつラーメン”の味に並ぶまでは提供しない」決意で研究〉
――とんこつ不使用ラーメンの開発経緯と狙いを。
国内外79店舗を展開する「一蘭」は、1993年の創業以来、豚の骨100%から作るスープに自家製麺を使った「天然とんこつラーメン」一本のみを看板に運営してきた。
宗教上の理由から豚を口にすることができない人や、アレルギーなど諸事情によって豚が食べられない人から「一蘭のラーメンを食べたい」という声は、以前から多かった。年々増加する訪日外国人客もターゲットに含め開発したのが、豚とアルコールを一切使用しない「100%とんこつ不使用ラーメン」で、既存の「天然とんこつラーメン」の味に並ぶか、それ以上の味になるまでお客様には提供しないと決意し、研究に研究を重ねた。
スープは鶏をはじめ様々な食材を混ぜ合わせた一蘭独自のスープで、コクと深みのある味わいに仕上げた。これまで培ってきた技術を応用し、おいしいラーメンを作ることは簡単だが、こだわったのはとんこつを使用せず、いかに一蘭のとんこつラーメンの味に近づけるかで、開発に20年の歳月を要した自信作だ。
トッピングは、豚チャーシューの替わりに、牛バラを柔らかく煮込んだオリジナルの「牛弥郎(ぎゅうやろ)」を添えた。「牛弥郎」以外のトッピングは既存品と同様で、特製の辛み調味料「赤い秘伝のたれ」はアルコール不使用品を新たに開発した。スープ、トッピング、自家製麺など全ての食材を「天然とんこつラーメン」同様、当社工場(九州・横浜)で製造している。食材にこだわったことで価格は、既存品より290円高い税込み1180円。価格に見合う「価値」を感じて貰える商品に仕上がったと自負している。
〈「100%とんこつ不使用ラーメン専門店一蘭 西新宿店~発祥の店~」開店へ〉
――専門店が西新宿に2月28日オープンする。
「100%とんこつ不使用ラーメン」は、豚やアルコールの混入を防ぐため、専門店としてオープンする。西新宿に「100%とんこつ不使用ラーメン専門店一蘭 西新宿店~発祥の店~」として2月28日10時にオープンし、インバウンドに加え、オフィス街にも近いことから周辺で働く日本人も呼び込みたい。50人を招待する試食会の参加者をSNSで募集したところ、1500人からの応募があった。多くの人に関心をいただいており、オープン後の集客にも期待したい。「100%とんこつ不使用ラーメン」の土産商品も販売する予定だ。
「100%とんこつ不使用ラーメン一蘭 西新宿店~発祥の店~」外観
〈拡大するインバウンド客に対応、4カ国語表記や店舗の増床も〉
――インバウンドの来店状況と今後の展望を。
「一蘭」には、繁華街を中心に引き続き多くの外国人に来店いただいている。都心では新宿、上野、浅草に加え、これまで来店の少なかった池袋や新橋、横浜といった地域の店舗も外国人客が増えている。
中国の「ウェイボー」など海外のSNSに当店のラーメンがアップされており、口コミ効果から来店客数が右肩上がりで拡大している状況だ。「味集中カウンターシステム」(=隣席との間に仕切りを設け、ラーメンが運ばれてくると目の前もすだれで閉じられ、味覚だけに集中し、心行くまでラーメンを堪能できるシステム)など、味はもちろん、当店独自のシステムが、一蘭でしか経験できない体験として大人気だ。
店内では、外国人にはなじみのない食券機の使用方法を外国語表記で説明し、味を選べるオーダー用紙は4カ国語(日・英・中・韓)標記で用意。外国籍のアルバイトの採用も積極的に進めており、全体の約1割を占める彼らが、外国語による接客を担っている状況だ。繁華街では朝9時から行列ができている店舗も多く、新宿中央東口店や大阪・道頓堀店などは増床することで、拡大するインバウンド客への対応を図っている。
「100%とんこつ不使用ラーメン専門店 一蘭」には、既に大阪や九州から出店要請が来ている。まずは1号店を成功させることで、その先の多店舗展開へとつなげ、「一蘭」の第2の柱へと育成していきたい。
「100%とんこつ不使用ラーメン」開発プロジェクトメンバー・鶴巻氏
〈食品産業新聞 2019年2月14日号〉