関西外食、コロナ感染拡大に伴うインバウンド減で観光地と都心が打撃、巣ごもり傾向の地元客つかみ郊外店は健闘

大阪・黒門市場の観光客も減少
食品産業新聞社では3月19日から25日にかけて、関西の主要な外食チェーンと業務用卸などに、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、売上への影響を聞き取りした。インバウンド客の激減に加えて、歓送迎会など宴席の自粛ムードの高まりにより、観光地や都心の外食店、ホテルがダメージを受けている一方で、地元客に支えられている郊外店が健闘していることがわかった。

〈がんこフードサービスは大阪ミナミなどで大打撃も、郊外店は通常通り〉
和食を中心に展開するがんこフードサービスは、インバウンド客で盛り上がっていた、道頓堀店(大阪市中央区)などの大阪ミナミの店舗が大打撃を受け、売上は半減近く落ち込んだ。また、大阪・京都の店舗を中心に、全体の売上高も2けた減少した。「インバウンド客だけでなく、日本人観光客も減っており、観光地の店舗は痛手」(同社広報)という。

歓送迎会などの宴会キャンセルも響いた。観光地のほか都心のオフィス街も苦戦。一方で、郊外店は通常通りと健闘している。各店舗では、営業時間の短縮などを臨機応変に対応しており、立地によっては土日の営業を休む店舗もある。

〈グルメ杵屋は空港や観光地の影響大、路面店は健闘〉
グルメ杵屋は、関西国際空港内の関空エアロプラザ店(大阪府泉佐野市)の落ち込みが最も大きいほか、観光地をはじめとするショッピングセンター、ビジネス街、駅ビルの店舗に影響が出ているという。路面店は通常より若干減少も、健闘している。

業態では、店舗数の多い杵屋(うどん)とそじ坊(そば)の影響が大きいという。観光施設に隣接するユニバーサルシティウォーク(大阪市此花区)や天保山ハーバービレッジ(大阪市港区)の店舗は施設そのものが休業しており、ショッピングセンターや百貨店の店舗は施設に合わせて営業時間を短縮しており、売上に響いている。

その他の外食店の状況は、焼肉業態は都心店、郊外店ともに前年を割る厳しい状況が続いている。とくに都心店はインバウンド客の大幅減と宴席自粛によって大きく落ち込み、売上高が2~3割ほど減少したとの声も聞かれる。一方郊外店の中で、固定客で成り立っている店舗は、若干の落ち込みにとどまり健闘している。

あるカフェ業態の郊外店も好調という。郊外店はおおむね、巣ごもり傾向のある地元客をしっかりつかんでいるようだ。

〈業務用卸はホテルなど宿泊施設向け食材に大きな影響〉
業務用卸の状況を見ると、トーホーはホテルなど宿泊施設への朝食向け食材を取り扱っていることから、同業態向けの売上に大きな影響を受けている。「ホテルは稼働率が3割のところもあり、全体で見ても4~5割程度。取り引きもそれと並行して減少している。特に温泉街などの観光地が厳しい」という。

また、大規模な宴会や歓送迎会の中止が相次いでいることから外食業態でも影響が出ている。今期(2021年1月期)は、新型コロナウイルスの影響額として60億円の減収を計画に織り込むが、「現時点の数字のため、さらに影響が出る可能性もある」(同社広報)と厳しい見方を示す。

尾家産業は、宿泊施設向けの朝食や大規模な宴会の中止の影響を受けているものの、居酒屋などメーンの外食業態の売上は、微減にとどまっている。近年病院などのヘルスケア業態向けの営業を強化しているが、現時点で同業態への影響はほぼないとしている。

ケイ低温フーズは、外食業態の売上が減少している。学校給食用の食材も卸しているが、休校措置で大打撃を受けているという。