コロナ禍でデリバリーに注目、出前館の加盟店数・注文数が大幅増

コロナ禍でデリバリーに注目(画像は出前館のデリバリー)
新型コロナウイルスによる中食需要の拡大で、デリバリーは注目を集めている。出前館も利用者数や加盟店数は急激に伸び、利用者数は前年比で30%弱増えた。

※中食=弁当・総菜などの調理済み食品を購入し、自宅で食べること。

デリバリー機能を持たない飲食店でもデリバリーを行えるようになる「シェアリングデリバリー」サービスも展開を広げている。出前館は2020年3月26日にLINEグループと資本業務提携を締結し、今後はデリバリーだけでなく飲食店のサービスを総合的に支援する「フードマーケティングプラットフォーム」を目指す。出前館マーケティンググループ広報チームの担当者に現状や今後の展望を聞いた。

——新型コロナウイルスの影響は

5月末のアクティブユーザー数は約370万人(前年同期比28%増)、加盟店舗数は約2万4,000店(同25%増)、オーダー数は約2,605万件(同25%増)、シェアリングデリバリー拠点数は336拠点(同109%増)だった。6月以降も堅調に推移している。コロナによる生活様式の変化や加盟店の増加などが伸長要因だと考えている。また、コロナの影響を受けた飲食店の支援として、新たにデリバリーを導入しやすいよう配達代行手数料の助成や、初期費用2万円の無料などのキャンペーンを10月末まで実施し、加盟店の増加につながった。

中でも「シェアリングデリバリー」が急速に拡大している。「シェアリングデリバリー」は、出前館と連携した物流などの事業者の配達網を活用し、デリバリー機能を持たない飲食店でも出前を行えるようにするサービスだ。2017年から本格的に導入しており、5月末時点で336拠点を展開している。コロナ禍の5月から7月にかけて、熊本・沖縄・鹿児島・新潟・愛媛などでサービスを新たに開始するなど拡大を続けている。引き続きシェアリングデリバリーの拡大は進めていく。

当社は「日常食としての出前活用」を推進している。コロナ禍で外出自粛期間中に新たにデリバリーを利用した人は、緊急事態宣言が解除された後も週に数回利用するなど、徐々に定着し始めたと思う。最近では、実際の店舗を持たずにデリバリーのみを行う「ゴーストレストラン」も増えている。デリバリーが日常化することで飲食店の形も変っていくと思う。

——デリバリー業界の状況は

世界のデリバリー比率を見ると、韓国は約10%、中国やイギリスは8%となっている。対して、日本は3%に留まる。海外と比較して、日本のデリバリー市場の規模はまだ小さい。しかし、そこに成長の余地がある。現在、中食需要は働く女性や単身世帯の増加、少子高齢化などの社会情勢に加え、新型コロナウイルスの影響で中食や内食の需要は高まり、出前への支持も広がっている。こうした社会情勢の中、日本のデリバリー市場の拡大を目指して、CM投下やキャンペーンを実施している。また、今後はLINEグループとのシナジー発揮によってデリバリーのさらなる認知向上を図りたい。

——今後については

LINEグループとのシナジー(相乗効果)を発揮していく。2016年にLINEグループと業務提携を締結し、デリバリーサービス「LINEデリマ」を運営してきた。今年3月の資本業務提携により、「LINEデリマ」を「出前館」ブランドに統合する。「LINEデリマ」の利用者は20代〜30代の女性が多く、「出前館」は30代〜40代の男性が多い。統合することで利用者層の拡大が期待できる。

それ以外にも出前館のシステムを強化し、将来的には、国内月間利用者数8,300万人を超えるLINEのコミュニケーション基盤や、IDマーケティング、位置情報、AI技術の活用と出前館の加盟店営業力を活かしていく。デリバリーだけでなく、テークアウト、イートイン予約、モバイルオーダーなど、飲食店のサービスを網羅的にカバーする「総合フードマーケティングプラットフォーム」を目指していく。

〈食品産業新聞 2020年8月6日付より〉