個人店にも広がるインバウンド需要 対応可能な外食店が足りない

中国の旧正月、春節がこのほど終了し、今年も中国圏から多くの観光客が日本に押し寄せた。彼らにとって魅力に映るのは、家電や宝飾品はもちろん、日本で食べる食事もそのひとつだ。この好機を逃すまいと取り組んだのが外食店。大手チェーンはもちろん、個人店でもいまインバウンドを取り込む動きが顕著に進んでいる。

「需要はあるのに競争率が少ない。今が参入の一番のチャンス-」。声を高らかに力説したのは、東京・浅草でお好み焼き・もんじゃ焼き専門店「つる次郎」を経営する浜田圭二氏。ぐるなびがこのほど、会員の外食店向けに開催した「外国人客対策のための特別セミナー」で、訪日外客の取り込みに成功している個人店として講師を務めた。言葉やサービス面でインバウンドの取り込みに躊躇してしまう個人店は多く、指さし英会話表にsNsの「LINE英会話通訳」を活用するなど、外国語が全くできない、コストを掛けたくないといった個人店ならではの悩みに応える対応策を多数紹介した。

昨年1年間の訪日外客数は1973万人。今年中にも政府が2020年を目途に掲げる2000万人を前倒しで達成する見込みだが、急激な増加に伴い、対応できる飲食店の数が圧倒的に足りていない現状がある。人員やコストをかけ対策のできる大手チェーン店と比較し、まだまだ個人店での対応は進んでいない。浜田氏は、「言葉やサービス面で不安があっても、外国人を呼び込むことは、それを乗り越える以上の価値がある」と強調する。誰もが使えるsNsなどを活用することで、言葉の壁を解消、また口コミ効果が何より集客に直接結びつくことから体験型のサービスを充実させることも重要だとした。同店では、お好み焼きの焼き方を動画で伝授、来店記念に撮った写真をその場でプリントするサービスを無料で実施している。体験型付加価値サービスが外国人、また外国人を引率する日本人のリピーター客を引き付けている。サービス面を充実させることは、店舗の活気、従業員のやりがいや喜びにもつながり、人手不足に喘ぐ外食店の魅力アップに繋がる可能性もある。

一方、大手外食チェーンのコロワイドは、14年から専門部署を立ち上げるなど早くから訪日外客の取り込みを強化してきたが、今期の外国人来客数は前年比3割増で推移中と引き続き伸長している。またインバウンドの増加に伴い、新たな客層が昨年大きく増えたという。修学旅行生の増加だ。これまで昼食で使っていたホテルが訪日外客の増加で確保しにくくなったことで、ランチ営業を実施する同社の居酒屋の大箱店舗へと流れた。外食店の規模の大小を問わず、想わぬ恩恵ももたらすインバウンド効果に、今年も目が離せない。