新機軸に“健康感”-外食チェーンが施策

「外食でも健康に気を使うメニューを用意し、お客様に配慮していることを浸透させていきたい-」。ファミリーレストラン売上トップのすかいらーくは6月、『健康感』をテーマのひとつに「ガスト」で大幅なメニュー改定を実施した。CVsや中食など他業種も含め、競争激化が進む中、いま、野菜メニュー、ヘルシーメニューを新たなメニュー施策として強化する外食チェーンが増えている。背景にあるのは、あらゆる年代で高まる健康志向。少子高齢化へと向かう中、限られたパイの奪取の一手に、トレンドとニーズを捉えた健康感のあるメニューの投入は欠かせない。ロイヤル・カスタマーの来店頻度拡大に加え、ラプスト・カスタマー(休眠顧客)に再度店舗へと足を運んでも貰うことも狙いのひとつだ。

「狙いはライト、ラプスト・カスタマー。ロイヤル・カスタマーの来店頻度拡大はもちろんだが、以前は来ていたが、年代や環境の変化で来なくなったラプスト層を呼び込みたい」。今夏、サラダメニューの強化と、野菜の国産化を発表した日本ケンタッキー・フライド・チキンマーケティング部担当者は、野菜メニューを拡充する背景をこう語る。また前述のすかいらーくもヤングファミリー向けのメニュー構成から、糖質オフ麺など『健康感』のあるメニューも投入することで、「自分に合うメニューが無い」と二の足を踏んでいた客に再度来店してもらうことが狙いだと強調する。

一方、昨春から野菜のみの丼ぶり「ベジ丼」を提供する吉野家でも「成長を継続させていくためには、健康感のある商品の投入は不可欠-」(同社広報)とし、現段階では売上には結びついてはいないものの、これからの吉野家を象徴する商品として、「ベジ丼」を継続して販売していくという。「狙いは女性客ではなく、既存の男性客」と強調し、既存客の来店頻度拡大を狙う。

野菜を看板に、また野菜を新たな柱に掲げる外食チェーンは、今後ますます増える見込みで、既存客の来店頻度拡大はもちろん、健康感をキーに今まで来ていなかった客、足が遠のいていた客を呼び込みたい考え。『健康感』という新たなブランド価値をまとうことで、価値戦略をより強固なものにする方針だ。

食材の国産化進むリンガーハット

一方、『健康感』をキーにメニュー戦略を進めた場合、重要視されるのは、食品の安全性だ。安心安全で、消費者が信頼感を持つ、食材の国産化への検討が進む。06年の中国産餃子事件以降、野菜の国産化を検討する外食店が増えていたが、昨年の中国産鶏肉問題を発端に、更に国産化が進んだ。「国産はもはや当たり前の時代」と強調し、野菜の国産化を謳う外食チェーンが近年増えている。

そのような中、06年から国産野菜を使用するリンガーハットは、これまで供給の難しかった「国産きくらげ」の量産化の見通しが立ったことから8月から導入を決定。野菜の国産化の「第二ステージ」を掲げ、栄養・機能面にも着目、安定供給に向け、契約農家とのタッグを強化、引いては自給率向上への貢献も目指すという。使い手の立場から、日本の農業を支える意向も占めて示している。

なおリンガーハットは06年の野菜国産化で、原材料費が年間10億上がった。価格改定も実施しておりデフレ真っ只中の当初、売上高の落ち込みが懸念されたが、客数で一時2割増を超えるなど現在も高い支持を集めている。

景況感の悪化を背景に今年に入ってから一部では再デフレ化も懸念されている外食産業。「国産」の付加価値で阻止できまいか。国産野菜の安全性、味の良さが救戦士となるか注目だ。