【多様性の時代を生きる】LGBTQ+の従業員が「自分の居場所」と考える企業、スターバックスの取り組みとは
昨今、「多様性の時代」という言葉を耳にする機会が増えている。
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セクシュアル・マイノリティに関する理解促進や権利擁護において、企業や団体が果たす役割や存在感が増している一方、まだ「何をして良いのか分からない」という人が多いのも実情だろう。
任意団体「work with Pride」は、日本の企業内でセクシュアル・マイノリティの人々が自分らしく働ける職場づくりを進めるための情報や、各企業が積極的に取り組むきっかけを提供することを目的に起ち上げられた。
2016年(平成28年)に、日本初の職場におけるLGBTQ+などのセクシュアル・マイノリティへの取組みの評価指標「PRIDE指標」を策定。2022年に最高位「ゴールド」に認定された318社の中には、スープストックトーキョー、トリドールホールディングス、物語コーポレーション、スターバックス コーヒー ジャパンの外食各社が含まれている。
本稿では、“多様性の時代に、企業ができること”を考える材料として、以下、スターバックスの取り組み事例を紹介する。
〈「LGBTQ+」の社員に向けた2つの人事制度/スターバックス コーヒー ジャパン〉
まず、「LGBTQ+」とは、「L=レズビアン(女性同性愛者)」「G=ゲイ(男性同性愛者)」「B=バイセクシュアル(両性愛者)」「T=トランスジェンダー(出生時の性別と自認する性別が一致しない人)」「Q=クエスチョニング(自分自身のセクシュアリティを決められない・わからない・決めない人)」「+=プラス(これら以外にもたくさんの性のあり方がある)」という性の多様性を表す言葉で、セクシュアル・マイノリティの総称としても用いられる。従来、広く知られてきた「LGBT」より、さらに広範な性の多様性があることを示している。
スターバックスでは、LGBTQ+の社員に向け、2つの人事制度を採用している。「同性パートナーシップ登録」「性別適合手術のための特別休暇」だ。
「同性パートナーシップ登録」制度は、申請のあった同性カップルに対し登録した同性パートナーを「結婚に相当する関係」「配偶者と同等」とみなし、慶弔見舞などの特別休暇、育児や介護休職、転勤に伴うサポートや支援を実施。2022年3月31日時点で、国内スターバックスで10人が登録している。
「性別適合手術のための特別休暇」制度は、性別適合手術により連続5労働日以上にわたり就業が困難であると会社が認めたとき、勤続年数に応じた日数の有給休暇が取得できる。
スターバックスではこれらの人事制度のほかに、認定NPO法人ReBitとともに、多様性やLGBTQ+に関する出張授業を開催する「レインボー学校プロジェクト」を展開している。スターバックスで働くLGBTQ+当事者などが自身の経験を語り、生徒や教育関係者と多様な性について考えるもの。
〈スターバックスで「自分の居場所を見つけた」LGBTQ+当事者の声〉
スターバックスの“パートナー”(従業員)で、LGBTQ+の当事者でもあり「レインボー学校プロジェクト」に登壇した経験を持つ一條氏は、スターバックスで仕事をする中で、「自分の居場所を見つけた」と語る。
一條氏が自身のセクシュアリティを自認したのは中学生のとき。好意を寄せていた人に思いを伝えるも「気持ち悪い」という反応だった。「まあそうだよな」と思いつつもショックを受け、だんだん「自分はみんなと“違う”」ということに気づき、後ろめたさを抱くようになっていったという。
地元から東京の専門学校に進学し、卒業後にスターバックス店舗でアルバイトを始めたのが一つの転機だったと振り返る。
「アルバイトを始めた時期に、仲良くなった従業員から『どっちの性別を好きになるの?』と聞かれ、最初はすごく驚きましたがこの人だったら打ち明けられると思い、自分のセクシャリティを公開しました。そしたら『この店舗にはほかにも同じような人がいて、皆認め合っているんだよ』と伝えられて、(今まで)こんなに自分を受け入れてくれる事はなかったなと、重荷が外れたというか、鎖から外された感覚でした」
その後、スターバックスも出展した『東京レインボープライド』(日本最大級のLGBTQイベント)に遊びにいった際、いきいきと働くLGBTQ+当事者の姿や、来場者の笑顔に心を動かされたという。
「スターバックスで働く中で自分が何をしたいのか、将来どうなりたいかを考えたとき、今困っている人たちや自分に似ている人たちに手を差し伸べられるような存在になりたいと思いました」(一條氏)。そこから「レインボー学校プロジェクト」への登壇などの活動につながっていったという。
スターバックスでは創業当初から、「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくること」をブランドの価値観の一つとしてきた。行動指針の中では、“誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくる”を掲げており、従業員1人ひとりが職場を自分の居場所だと感じられる環境の実現を目指しているという。