コロナから立ち直る外食、タニコーが有名シェフの調理実演で飲食店の開店をバックアップ
コロナで大打撃を受けた外食・飲食店が徐々に回復しつつある。日本フードサービス協会が1月末に発表した外食産業市場動向調査結果によると、2022年の市場売上は前年比113.3%と二桁増で伸長している。
外食・飲食店では、設備の増強や新店オープンを図る動きも出始めており、2022年度の厨房機器総売上高は前年比12.3%で、4年ぶりに前年を上回る結果となった。さらに、2月に東京ビッグサイトで開かれた厨房設備機器展には4日間で前年比1.6倍の約4万6,000人が来場しており、この勢いは今後も続く見通しだ。
総合厨房機器メーカー、タニコーの谷口秀一社長は、昨今の状況について「新しいものを探す人が増えていて外食の回復を実感する。シェフやオーナーのマインドがこれまでと全然違う」と語る。展示会では、「用意した製品カタログが2日間でなくなってしまい、慌てて印刷にかけた」という。谷口社長にコロナ禍における外食飲食店の変化とブース展示について話を聞いた。
「前年2022年は外食の転換点だった。コロナという未知のものに対し、店を続けるか、あるいは閉めるか、迷いの時期だった。コロナは依然解決してないが、そのせいでお客様が来ないという声はもうほとんど聞かれなくなった。2023年は今まで止まっていたマーケットが動き出す年だ。もう少しすれば外国人が日本の質の高い飲食を求めてやってきて、さらに活気を帯びるだろう。この拡大傾向は、2年は続くに違いないと思う」。
そうした市場の高まりに対応するため、厨房設備機器展でタニコーが掲げたブースのテーマは「Heading2025」。Headingとは航空用語で機首が向いている方向を示しており、2025年に向けて飛躍を目指す外食・飲食店を新しい厨房機器でサポートする思いが込められている。
ブースでは、有名シェフによる調理実演を通して、新店オープンを目指すシェフに寄り添った展示を心掛けたという。
谷口社長は「プロ用の厨房機器なので、展示だけでは不十分だ。見に来る方もシェフなので、シェフ同士の会話がなければ、本当の意味でのニーズを引き出すことはできない。すでに様々な分野で実績のあるシェフに、実際に新しい厨房機器を使ってもらい、その良さを示してもらうことで、シェフ目線で語り合ってもらうことを重視した」と狙いを語った。
食とSNSを絡めた事業で自社ブランドの開発など幅広く活動する料理研究家、戸村亮太さんは、「オンデマンドフライヤー」の調理実演を行った。「オンデマンドフライヤー」は揚げ時間を最大3分の1に短縮するのが大きな特徴。コロナ禍で需要が伸びた冷凍食材も解凍せずに調理でき、ゴーストキッチンやデリバリーサービスなど突然の注文にも即時提供可能。揚げ時間が短いため、食材の油吸収率を約40%削減し、カラッとヘルシーに揚げる。また、高い保温効果が見込め、約20%の省エネを実現するなど厨房環境にやさしい機器でもある。
「マイクロ波で揚げながら解凍もするアイディアに驚いた。調理スピードだけでなく、機器の特性に合わせた料理を考えるのも楽しい。そのお店のオリジナル料理を作れる新商品だと思う」。(戸村さん)
福井市のショッピングモールで新しいコミュニティキッチン「Foodies Hub」をオープンし、地域に根差した料理教室やフードイベントを開催している天谷調理製菓専門学校の天谷豪志理事長は、「フリーゾーンIH」の調理実演を行った。「フリーゾーンIH」は、これまでIHコンロの常識だった鍋を置く丸い枠を無くし、天板の全面に鍋を自由に、いくつでも置くことができる。コントローラーでエリアごとに温度調節ができ、思い通りの温度帯を作ることができる。目の前で多くの料理を管理できるため、キッチン内の移動が軽減され、料理に集中できる。シェフの夢をカタチにした機器である。
「プロの視点を取り入れた高い操作性がフリーゾーンIHの醍醐味。それにより、既存の制約から解放され料理をつくる楽しさをも感じさせてくれる」。(天谷理事長)
谷口社長は外食業界の課題について、「1つ目は人手不足。お客様が戻っても外食で働く人がいない。ホテルも然り。これは切実な問題である。もう1つは食材の高騰で、食材価格を転嫁できるお店と転嫁できないお店の2極化が生まれている」と述べ「コロナ前まで外食を牽引してきたのは、店が大きく、一等地にあり、セントラルキッチンを持って、安い料理の提供で開店率を上げる飲食店だった。しかし、現在のトレンドは、小規模店で席数が少なくても、高い品質のサービスができるお店だ。例えば、あるジビエのお店は席数がわずか8席だが、客単価は3万円。コンセプトを理解している常連客が多く、繁盛しており、そんなお店が増えている。ただし、半年もすれば、大規模店は世の中に合わせてやり方を変えてくるだろう。オンデマンドフライヤーを活用するなど、大規模店でも店舗に応じてカスタマイズしたサービスを展開する動きがでてくるはずだ」と語った。
最後に、谷口社長は「タニコーは長年、世の中の課題に合わせた調理器具を開発、提供してきた。設備投資によってランニングコストを抑え課題を乗り切るという選択肢がある。コロナで一等地のテナントが空いているいま、これほどチャンスな時期はない」と外食飲食店にエールを送った。