【PR】復活する外食市場、タニコー・谷口社長に聞く成功する飲食店の特徴と“設計”の価値
外食市場が復活を遂げている。日本フードサービス協会が1月末に発表した外食産業市場動向調査結果によると、2023年の市場売上は前年比14.1%増で伸長。19年比では7.7%増とコロナ以前を上回った。外食・飲食店では、設備の増強や新店オープンをすすめる動きがみられ、23年度の厨房機器総売上高は前年比4.3%増と伸長している。しかし一方で、物価高騰や人手不足の常態化など、外食産業を取り巻く環境は依然厳しい状況が続いている。物価高騰の時代では、どのような飲食店が成功するのか。そして、どのような厨房設備が求められるのか。2月に東京ビッグサイトで開かれた厨房設備機器展を訪問し、これまで数多くの外食・飲食店の厨房設計に関わり、経営をサポートしてきた総合厨房機器メーカー、タニコーの谷口秀一社長に話を聞いた。
「外食産業が復興し、マーケットが大きく変わってきた。しかし、人手不足による人件費高騰と電気、ガス、水道、エネルギー、食材の高騰で、飲食店を経営する際の原価上昇が大きな課題となっている。この出口はメニュー単価を上げる、ただ1つしかない。しかし、原価が上がったからといって、以前と同じメニュー同じサービスで、値段を上げたらお客様が逃げてしまう。値段を上げてもお客様が納得するサービスを付加できるよう、メニューをブラッシュアップすることが重要だ」。
谷口社長は、お客様が納得する付加価値サービスとして、焼き立てパンの提供を例にあげた。ここ数年、レストランやスーパーマーケット、ドラッグストア、道の駅、大学食堂などでは、焼き立てパンを手軽に焼けるミニベーカリーオーブンの導入が増えているという。
「例えば大学食堂では、従来の厨房施設に後付けでミニベーカリーオーブンを設置し、焼きたての高品質なパンを提供する施設が増えている。学生、特に女子学生から好評で、追加で大学生協からも発注を受けたことがある。ベーカリーオーブンというと大きなサイズしかないと思われがちだが、当社は小さなサイズも用意している。導入先もパン屋さんを思い浮かべる方が多いと思うが、今や業態を選ばず採用されている。理由は、小スペースでも導入できる生産性の高い機器があるからだ。当社は、お客様との対話の中でその業態のその施設特有のニーズを引き出して、ご要望に応じた商品を提案している」。
また、近年好調な飲食店の特徴を尋ねると、「高価格帯のお店だ。特に30代の若いシェフの出店は高いお店ばかり。客単価2、3万円のお店なら、人手不足も、エネルギーや食材の高騰も、全て吸収できる。そうしたお店の多くは10席くらいしかない。価格が高い代わりに、席数は少なく回転数も1、2回転と少ない。それでも収益を保てて人気だ」と語った。そして「これからは、お客様が高価格でも喜んで金をお支払いいただけるようなビジネスにしなければ、飲食店はやっていけないだろう。昔みたいに大きなホールで安い値段で料理を出し、高回転率にしたとしても、人手が確保できない。量ではなく質の時代だ。物価高騰の時代では、本物のサービスが選ばれ、中途半端なサービスは淘汰されるかもしれない」と分析した。
では、付加価値のある食事を提供したい外食・飲食店に対して、厨房機器メーカーとして何を提案しているのか。谷口社長の回答は厨房機器そのものではなかった。
〈設計は厨房の新しい価値になる〉
「私たちがまず提案しているのは、設計である。シェフの思い描く厨房をたたき台が何もないところから作っていくのは難しい。長年当社が積み上げ蓄積した、経験と知識を活かした多様なバリエーションを示すことで着想を得ていただく。あれもこれもできるのではないかとイメージが膨らみ、対話が弾み、そこにシェフのこだわりを足していく。対話の中で成功するお店を一緒に創り出すのが当社の考え方だ。0からのモノづくりではなく100からこだわる。シェフと向き合い共に作り上げていく。当社の新しいカスタムオーダーである」。
同社では、シェフの要望に応じた設計プランを用意している。ホテルやブライダルの場で求められる高い衛生性、耐久性に加え、デザイン性、機能性を兼ね備えたオーダーキッチン「シンフォニックライン」。高みを目指すフレンチレストランや調理学校、キッチンスタジオなど、デザイン性、機能性を組み込んだオーダーキッチン「ハーモニックライン」。同時に調理作業面や操作パネルの高さなど作業性も考えた製品設計の見直しも進めているという。いずれも優秀な設計士がいる同社ならではの提案である。
谷口社長は「いずれ、設計は厨房の新しい価値になるだろう。厨房は客席から見えないものだから、これまでデザインの考え方がなかった。しかし、調理作業面の高さを変えるだけで調理がしやすくなり、機器下の高さを5cm上げるだけで清掃性は高まる。設計にこだわることで合理性と衛生面が担保され、シェフは調理に専念できるのは明らかだ。価値ある食事サービスには設計の思想が今後不可欠になるだろう」と展望を語った。
〈シェフの願いをカタチにする伴走者〉
厨房設備機器展の同社ブースでは、有名シェフによる調理実演を行い、新店オープンを目指すシェフに寄り添った展示を心掛けたという。東京都・青山のイタリアンレストラン「JINBO MINAMI AOYAMA」の神保佳永シェフは、場所を選ばず自由に鍋を移動して調理ができる「フリーゾーンIH」やコンパクトかつ高出力の「サラマンダー」、「冷却機能付きシンク」など、同社と共に開発した機器群を使った調理実演を行った。
神保シェフは「タニコーさんはシェフの求めている機器をカタチにしてくれる。製品を売って終わりではなく、困りごとを一緒に考えてくれる伴走者だ」と述べ、一緒に開発した機器群を紹介。「今や、おいしいものを提供するのは当たり前で、付加価値が求められている。お客様の中には、オンリーワンの厨房機器で調理することを求める方もいる。当店には次世代型厨房があるから出せる料理がある。時代の変化の中で我々は新しい調理に挑戦する。これからもその想いに付き合ってもらえるとありがたい」と語った。
神保シェフのレストランにはインバウンドの外国人観光客の来店も多い。次世代厨房ツアーも求められることがあり、自信を持って紹介するそうだ。
また、福井県のショッピングモールで新しいコミュニティキッチン「Foodies Hub」をオープンし、地域に根差した料理教室やフードイベントを開催している天谷調理製菓専門学校の日本料理講師多田竜也先生とFoodies Hubスタッフの竹内侑誠さんは、「フリーゾーンIH」を使った日本料理の調理実演を行った。
多田先生は同製品について、「10年以上の料理人人生で、ここまで画期的な厨房機器には出会わなかった。どこにでも、何個でも鍋が置けて火の調整も簡単。調理のバリエーションが増えて、日本料理にもマッチする。同時進行で複数の調理ができ、シェフの感覚が研ぎ澄まされ、料理がおいしくなるのを感じる。今後のスタンダードになるのではないか」と語った。