炒飯に次ぐ既存分野の活性化
◎外食・中食の未開拓市場に挑戦
生産投資が加速、新技術に期待
冷凍食品の昨年の国内生産量は153~155万tと、前年を1~2%上回る見通しだ(日本冷凍食品協会調べ)。国内生産量は消費税率引き上げや製品値上げが影響して2年連続で前年割れとなっていたが、昨年は米飯類、とりわけ家庭用炒飯市場の拡大を受けてプラスに転じると予想されている。
「炒飯がおいしさで競い合うことで市場を拡大した。これには業界の伸び代を感じている」(日本冷凍食品協会伊藤滋会長=マルハニチロ社長)
〝炒飯戦争〟とも言われた現象は、消費増税以来、伸び悩んでいた家庭用冷食市場において、まだ拡大の余地が大きいことを示し、業界関係者に勇気を与えた。
家庭用においては今年、炒飯に次ぐ既存カテゴリーの活性化が成長のカギを握る。
炒飯では明確な差別化をうたえる商品の開発とそのプロモーションが噛み合ったことが成功につながったが、さらに大容量化というアプローチでカテゴリーの価格レンジを広げる好例にもなった。硬直化している価格領域の拡大も家庭用における大きなテーマといえる。
昨年、フランスの冷食専門店「ピカール」が日本に初出店した。食卓の一品となる素材や調理品を中心に品ぞろえし、全般的に日本の商品よりも高価格帯で、4桁台の高額商品もいくつか品ぞろえしている。
「日本市場において冷食の価格にある〝壁〟を破ることが出来るかどうか注目している」(冷食協伊藤会長)とピカールが黒船となるのか、冷食業界の関心を集めている。
価格の壁から解放されれば、より柔軟な商品開発に取り組めるようになり、新しい商品分野の可能性も広がる。逆にそれが出来なければ、チルド惣菜など新しい売場に優良市場を奪われるおそれがあることを認識すべきだ。
外食や中食に利用される業務用冷食は食の外部化という大きな流れと調理現場における人手不足の深刻化によって、今後も需要拡大が見込める。そして、いよいよ現実のものとして視野に入ってくるのが2020年の東京オリンピック・パラリンピックだ。
東京五輪では選手をはじめ海外観光客の食事の需要にこたえるフードサービス産業の市場をいかに取り込むかが勝負となる。そのための下地づくりに本腰を入れるときが来た。
冷食大手には営業部門のひとつに東京五輪を見据えた新組織を設置した例もあり、既存チャネルのシェア争いにとどまらず、未開拓の幅広いチャネルを開拓していく構えを見せている。五輪に向けたこのような取り組みが、その先の業界の発展にとって大きな財産になることを期待したい。
2020年は冷凍機の冷媒として主流となっているHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)の生産・消費が全廃される年でもある。これに対応するノンフロン化はメーカー各社の重要課題となっているが、それと並行するように、生産面での大型投資案件が加速している。
一昨年は年初に冷食最大手のニチレイフーズが千葉県船橋市に新工場を稼働させ、夏には日清フーズが神戸市に冷凍パスタ専用工場を、年末には極洋が宮城県塩釜市に冷食の基幹工場を、それぞれ竣工した。
今年は4月にマルハニチロの新石巻工場が稼動する。キンレイも5~7月にかけて大阪府岸和田市に新工場を稼働させる計画だ。またテーブルマークは3月、新潟県魚沼市に冷凍うどんの新工場に着工し、来年竣工予定で、併せて今年から5年かけて国内工場の抜本的再編に着手する。
そのほかライン増設や生産能力増強を図る設備投資の例も近年目立っており、枚挙に暇がない。効率化にとどまらず新技術を導入することで、画期的な商品開発につなげていくことに期待したい。
需要の拡大と新たな販売チャネルの開拓、それに対応した生産体制の強靭化–。先行きの明るさが目立つ冷凍食品業界だが、このようなときこそ、生活者の目線に立ち、地に足を付けた健全な成長を目指していきたい。