ケイエス冷凍食品、業務用ミートボールを外食・老健へ拡大 家庭用の立て直し、原料高騰への対策が課題

ケイエス冷凍食品 久田貴之社長
ケイエス冷凍食品は4日、同社東京本社(東京都中央区)で今期事業の概況報告会を開いた。今期(2017年1~12月期)は家庭用の苦戦が響き、減収となる見通しだが、業務用は主力のミートボールを中心に秋口から拡大基調となっている。販路を既存の惣菜、弁当ルートから外食、老健施設へ拡大し、構造転換が進んでいる。ミートボール拡大の道筋が見えはじめている。次年度は家庭用の立て直しと、原料価格の高騰に対する生産性向上、コスト削減が課題となる。

久田貴之社長は今年度の振り返りとして「15年~17年度は食品メーカーとしての基盤の再強化に取り組んできた。人材育成を図るとともに人事処遇制度、基幹システムの見直し、食の安全・安心の取り組み強化――といった会社の土台を高める中で、生産、開発、営業、物流、調達――の各部門の強化を図ってきた」と述べた。人事処遇制度は今年度1月から改定し、基幹システムは18年1月からJT(日本たばこ産業)、テーブルマークと同じシステムに切り替える。

今期の事業概況は売上高・収益ともに「前年を少々下回る」見通しだ。

売上高構成比は家庭用と業務用とでほぼ半々だが、今期は家庭用が前年割れ、業務用は前年を上回って推移した。「家庭用は弁当カテゴリーが苦戦。業務用は年初に大口顧客の減少が見込まれる中で打ち手が遅れたために前半は若干苦戦したが、後半は新規顧客が増え秋口は順調に推移、年間では前年を上回る見通し」と説明した。

家庭用は「鶏つくね串」など基幹商品が伸び悩み、新商品も計画を下回った。弁当市場全体の冷え込みの影響がある。久田社長は「冷食売場でも弁当から食卓への切り替えがある。食卓で利用できる商品であることを訴求していきたい」とした。

来年は家庭用の「肉だんご」が発売45周年、「鶏つくね串」が25周年を迎えることから、春に消費者キャンペーンを実施する。「この2アイテムを中心に拡販を図る」と述べた。業務用では主力の肉だんごがタレ付き・タレなしともに順調。業務用ミートボールはこれまで弁当・給食業態から惣菜ルートへと販路を拡大してきたが、さらに外食、老健ルートが直近2年で急速に拡大している。

価格競争の激しい箱弁ルートは営業方針に沿ったかたちで、大幅に減少しているが、今春発売した「THE WORLD MEATBALL」シリーズがきっかけとなって既存ミートボール商品の販路も外食・老健に広がりを見せている。業務用では次年度も「順調な流れに乗って、現在注力している外食、老健の各ルートを伸ばす」方針。業務用売上高のうち外食が30%、老健が15%弱を占めるまでになっている。

業務用和惣菜(八幡巻き)は微増。国内生産できる工場が減っているため安定した動き。エスニック「東方屋台めぐり」シリーズは品ぞろえを絞り込みつつ順調に推移。発売丸5年となるが、外食チェーン店だけでなく個店で定番化するなど市場に根付いている。今秋の新商品も好調だ。

収益面について、今期の減益要因は家庭用の売上げ減とともに、原材料・人件費・物流費――等のコスト上昇が影響した。特に肉だんごの主原料となる、鶏ムネ肉の価格高騰の影響が大きい。同社では国産鶏肉を年間3,300t使用しているという。自社工場(泉佐野工場)は2年かけて設備投資を進めたが、さらなる省人化・効率化に取り組む。「コスト吸収の努力はしていくが、限界はある」としながら、価格改定は検討段階と述べるにとどめた。基幹システムがJT、テーブルマークと同じシステムになることから、一層の協業シナジー創出を図る考え。久田社長は「生産部門、物流部門と協業を進めているのでその効果を一層高めたい」と話した。

2018-2020年の次期3カ年計画についても触れ、久田社長は「この3年間の取り組みの延長線上の取り組みを進める。自社主力商品を伸ばし、強い部分をより強化していく。さらに将来に向けて持続的成長の布石を打っていきたい」と述べた。工場設備の脱フロン化については次期から着手し、20年中には更新を完了する計画だ。

〈冷食日報2017年12月6日付より〉