おいしさ・個食化・保存性・在宅「冷食の価値もっと高まる」=冷食協伊藤会長
日本冷凍食品協会の伊藤滋会長(マルハニチロ社長)は12日、本紙など10社が加盟する冷凍食品記者クラブに対し年末記者会見を開いた。今年(1~12月)の冷食の国内生産量は過去最高だった前年をさらに3%上回る160万tに達する見通しを示した。国内生産体制の増強投資は続く、として今後も同程度の拡大局面が続くとの認識を示した。伊藤会長は今年の冷食市場を総括し、「家庭用については引き続き各社の強みを活かして米飯類を中心に好調。各社、消費者ニーズに沿った商品開発やマーケティング、メディアへの露出を積極的に展開した。数量・金額とも増加すると考えている。業務用について外食はビアレストランや居酒屋はやや不調のようだが、そのほかは中食をはじめ堅調だ。数量・金額とも前年並みを確保できると思う。少子高齢化や単身世帯の増加など社会構造の変化とそれに伴うライフスタイルの変化を受けて、今後も需要は増えていく」と述べた。
伊藤会長は「家庭での個食化があり、地方では買い物難民の増加でおいしさと新鮮さを保った冷食の需要は高まる。介護においても在宅の食事に大きく貢献できる。冷食の価値、位置付けはますます高まっていく」と、更なる業界の成長見込みについて語った。
一方でコスト上昇について強調した。「為替がやや円安に振れた影響がある。特に海外の水産物は買い負けが見られ、安価な調達は難しい状況だ。国内原料についても米は2年連続で上昇し、野菜は天候不順の影響で総じて高値推移。国内水産物はサケ・サバ・サンマ・イカといった主要魚種が不漁となり、数量確保が困難、価格も大幅に上がっている。物流費、労賃も人手不足により上昇を続けている」。このコスト要因が重なっている状況に鑑みて「さらに悪化するようなら価格転嫁の場面も想定される」と述べた。ただし、現状は業界全体に値上げ機運が高まっている状況には至っていないとの認識も示している。
一方で販売価格については「もっと価値のある商品だと思うが、消費者の支持が必要な事柄だ。生活が変化するなかで時間の価値が認識され、冷食の価値も上がってくるはず。おいしさが認識されることに伴って価格も上がってくると思う」と述べた。
大手会員企業の動きが活発となっている、海外事業展開についても触れ「各社のグローバル戦略の中で各社の技術力を背景に海外事業を拡大していくことは、日本の冷凍食品産業の発展にも寄与するものとして、期待している」と話した。
国内の設備投資についても取り上げた。「国内生産基盤の維持・強化のため、新工場建設や大規模改修が今年もあった」としてマルハニチロの新石巻工場、キンレイの大阪工場の新設、大規模改修としては宝幸の筑西工場、ヤヨイサンフーズの清水工場、日本水産のハチカン工場――を挙げた。一方で特定フロンHCFCの2020年製造中止や代替フロンHFCの規制強化に関して「自然冷媒への転換が急務だ」と述べた。
自然冷媒化の補助金については「来年度予算の概算要求で食品製造工場を含めた要求が提出された。補助事業などをテコに自然冷媒への転換を指導していく」と述べた。環境省への陳情が功を奏した形だ。
協会事業に関して、広報事業について、今年冷凍食品アンバサダーに就任した三國清三シェフが参加したPRイベントについて「三國シェフには『東京オリンピックでは100%冷凍食品を使用する』と力強い言葉をもらった」などと評価。来年度は「ウェブ・新聞・テレビ・ラジオなど多様なメディアの連動を図り、効率的に広報を展開する」とした。また2020年東京五輪開催に向け「日本の冷凍食品の素晴らしさを広く伝える機会と位置付け、新たな取り組みを検討中」であることを明かした。
今年4月に基準の一部改定を行った、認定制度については「円滑に運用されている」とした。HACCP制度化をにらみ「品質管理担当者に対する講習会では今後、HACCP制度に重点をおく」。なお業界のHACCP手引書作成について、認定基準がHACCPに準拠していることから、いわゆる基準Aの手引書として抽出する作業を進めている。基準Bへの対応については「保留」とした。
〈冷食日報2017年12月13日付より〉