味の素冷凍食品、17年度家庭用が牽引 減益も過去2番目の事業利益

味の素冷凍食品・日比聡取締役専務執行役員マーケティング本部長
〈組織改革 家庭用・業務用の壁なくす=日比取締役専務執行役員〉
味の素冷凍食品の17年度実績は増収・減益となった。家庭用が売上げを牽引した一方で為替と原材料コストの上昇、米国の生産体制の再構築費用もかさみ減益となった。とはいえ前年度に次ぐ過去2番目の事業利益だ。18年度は7月1日に大幅な組織改革を行い、めまぐるしい変化を見せる市場への対応力を高める。日比聡取締役専務執行役員マーケティング本部長に前年度の振り返りと今年度の展望を聞いた。

味の素の冷凍食品事業の17年度業績は日本が1,008億円で前年比2%増、海外が1,062億円で8%増、合計2,070億円で5%増となった。家庭用と業務用の構成比は63:37(味の素冷凍食品単体ベース)と、家庭用が1ポイント拡大した。事業利益は日本が78億円で7%減、海外が23億円で57%減となったが、合計で101億円を確保した。

国内売上高について、家庭用は市場全体(4%増)を上回った。16年度にギョーザ45周年で実施したプロモーション効果が続いた。「ザ★シューマイ」も堅調に推移し、市場の伸び(10%増)を牽引。唐揚げは市場が拡大(13%増)するなか「やや苦戦」した。

炒飯は「ザ★チャーハン」は堅調に推移、「香炒飯」はトライアル購買が広がらず、5月に「大海老炒飯」に切り替えている。新機軸の「おにぎり丸」は2月に改良しサイズを小さくし、価格も下げたことが奏功し、4~5月は数量・金額とも伸びている状況だ。

日比本部長は「ギョーザの水なし・油なし、食卓品質のシューマイ、おにぎり丸――いずれも今まで冷食を利用していなかったお客を取り込めていることが重要だ」と話す。

業務用は横ばいで市場(2%増)を下回った。大手外食やCVS向けの伸び悩みが影響した。17秋発売の「カツうま!チャーハン」や「袋のままスチコンで焼餃子」は調理現場の人手不足を背景に好調だ。デザート類はカット済み商品に注力し、人手不足やロス削減の課題に対応して好評だ。

国内の減益要因として、為替と原材料で20億円弱のマイナス影響があった。タイバーツの上昇でチキン製品の調達コストが上昇した。販売増とコスト削減は進んだが、吸収しきれなかったかたちだ。海外は米国で生産の再構築の再構築を進めているため費用がかさんだ。燃料価格の上昇や米国の運送規制の影響によるコスト増もあった。

海外事業について日比本部長は「ラーメンなどアジアンフードは好調。生産の再構築は足腰を強くする目的が大きく、中期的に利益は立ち直っていく」と話した。欧州もリテール販売に領域を広げていく体制を整えている。18年度の業績見込みについて「市場は家庭用が2~3%増、業務用が2%増と予想する。これを上回る成績をあげたい」とした。

4~5月について、家庭用の販売は前年同時期におにぎり丸の立ち上げやザ★シューマイの伸長があり、その反動によってやや苦戦した。ただし今後「ギョーザ、ザ★シリーズ、おにぎり丸のプロモーションや『夜9時のひとり呑み』の酒類とのコラボキャンペーンなどに取り組みながら6~7月で挽回できる」と自信をのぞかせる。一方、業務用は堅調に推移している。

7月1日付で実施する組織改革が今期の目玉だ。「末端の市場環境が激しく変化しているので、そこにいかにスピーディに対応していくかが最大の課題」として、マーケティング本部の下に、家庭用・業務用の区分ではなく、国内統括事業部・東日本支社・西日本支社・企画管理部――を並立させる。

狙いは第1に「従来の家庭用・業務用の壁がだんだんなくなってきている」として、家庭用事業、業務用事業ではなく、両方を一緒に見るため「国内統括事業部」を新設。販売は業態別の分担を取り入れるが、開発も家庭用・業務用を1本化する。カテゴリーごとにチーム分けし、家庭用・業務用互いの知見を融合していくという。

第2に「現場で変化が起こっている。営業現場を起点とした取り組みが必要」として、東西に支社をつくり現場に権限を与えていく。支社長権限により判断スピードが高まり、現場ごとの施策に多様なアイデアが出ることで、ダイナミックな動きになることを期待する。

〈冷食日報 2018年6月20日付より〉

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