日本水産、新中計期間に食品事業では9つの取組み
日本水産は8日、浜田晋吾取締役常務執行役員食品事業執行らが出席し、報道向けに食品事業説明会を開催し、食品事業の現況等について要旨次のように説明した。
日本水産・浜田晋吾取締役常務執行役員食品事業執行
【17年度の振り返り】
連結売上高7.4%増6,830億円、営業利益3.7%増234億円と増収増益で、前中計の目標を達成。一方、食品事業は売上高7.6%増3,277億円と大幅増収も原料不足と人手不足の影響があり営業利益は3.4%減107億円と停滞した。日水単体での食品事業実績は次表の通りで合計4%増2,267億円。業務用食品や常温食品は原料不足が影響し減収だったが、業務用食品は増益を達成できた。
【中計MVIP+2020について】
今年度が初年度の3カ年新中計MVIP+(プラス)2020では、技術力・経営基盤強化の上に▽ライフスタイルの変化に対応▽海外展開▽ひとつ上のステージに向けた取組み――により「新しい価値」を生むことを目指し、それに横串を刺すものとして社会課題への取組み(CSR)を置く。
数値目標としては、最終年度の2020年度、売上高17年度比11%増7,560億円、営業利益23%増290億円、当期純利益27%増220億円を目指す。また、ROA(総資本利益率)を軸とした管理を継続し、経営効率を向上させる。
新中計における食品事業の取組課題は〈1〉中食市場への対応強化:チルド事業は伸長、それ以外のカテゴリーも強化〈2〉冷凍野菜事業の拡大:利益率が高く、時代の要請に合致。枝豆は一定規模だが、それ以外を拡大する〈3〉強化する販売チャネル:Eコマース対応等強化〈4〉既存事業(練り・ハムソー)の強化〈5〉チルド事業の拡大:順調だが、市場の拡大に追随し、ベンダー再編の中で生き残る〈6〉水産調味料カテゴリーの強化:伸び悩んでおり、冷食・常温含めて強化〈7〉健康訴求商品群の強化:EPA以外に減塩等も含めて強化〈8〉海外展開の加速:北米、EUに加えてASEANでの事業強化〈9〉生産機能の強化――の9つを挙げる。
【18年度の食品事業方針と計画】
日水単体の食品事業における数値目標は、売上高3%増2,334億円、部門別では表の通り、家庭用冷凍食品3%増525億円、業務用食品4%増456億円などを計画する。
取り巻く環境は▽原料不足と価格高騰▽人手不足▽健康ニーズ高まり▽続くスポーツイベント▽続く異常気象▽実感ない景気回復――があり、景気回復基調との声もあるが、マイナス要因が影響し、前年に続き消費は保守的と見る。また、米中貿易摩擦があり、食品事業において影響は大きくないと想定するが、為替の変動の影響は大きいと見る。
そうした中、18年度の食品事業方針は「新たな価値の創造と変革のために総合力でチャレンジ!」をテーマとし、総合と変革を起こすポイントを「攻め=拡大する」「守り=質を高める」の両面から挙げる。
18年度においては「攻め」は▽中食▽凍菜▽既存商品・チャネル――の各分野、「守り」は▽生産性▽各種指標――を挙げる。また、18年度中に準備をするものとして「攻め」は▽海外▽健康▽調味料――、「守り」は▽原料▽広告宣伝――を挙げる。
また変化への商品面での対応として、今回の秋冬新商品(既報)でも「多様なライフスタイルへの対応」では▽「惣菜」「1食完結」品▽「おつまみ」品▽「簡単・便利」品――を、「健康訴求商品群の強化」では▽機能性食品▽減塩・糖質オフ等――を、「減少する魚食への対応」として▽見直される缶・びん詰▽MSC商品――を多数投入した。
生産面では、大手CVS対応のチルド伊勢崎工場を19年に新設。今秋はハチカンの冷凍おにぎりラインを増強し、おにぎりの生産能力を全体で25%アップさせる。
それとともに、国内ではIOT・AI などを駆使し、労働人口減少に対応した物的生産性向上を図る。より具体的には今年度から「スマートワーク2025活動」を推進し2025年までに配員数15%削減、総合生産効率50%向上を目指す。
また、欧州のシテマリンでは、17年に工場増設・買収により5工場体制に拡大。生産機能の増強を図っている。
〈冷食日報 2018年8月10日付より〉