〈冷食メーカー18年度上期〉家庭用堅調・業務用は足踏み、市場構造の変化への対応要する
主要冷食メーカーの当上期業績は家庭用では11社中6社が増収だったのに対して、業務用で増収となったのは11社中3社にとどまった。
家庭用を増収としたほとんどは主力商品の販売が好調だったことを主因としている。減収となった企業においても商品の絞り込みなど商品政策上の要因が強く、主力商品の販売を伸ばしている企業が多い。下期も引き続き定番品の販売に軸足を置いた政策が強まりそうだ。
炒飯をはじめとする冷凍米飯市場は15年度以来、成長を続けてきた。特にニチレイフーズの「本格炒め炒飯」は前年度に売上100億円を突破し、さらに今年8月には過去最高の単月出荷数を記録した。日本水産も当上期、米飯の販売を大幅に伸長させている。
日清食品冷凍は10億円商材を4品から6品に拡大するなど好調だ。日本製粉はトレー入りの付加価値が浸透して販売を伸ばした。同様に明治のグランタン類もトレー入り商品の需要拡大の流れから、大幅に販売を伸ばしている。
テーブルマークは今年3月から主力商品である冷凍うどんとお好み焼き・たこ焼きの値上げを実施した。他社の追随がなく一時は販売の鈍化が見られたものの、5年ぶりのテレビCMを投入するなど積極的なプロモーション策によって値上げ影響をはね返した。
米や麦をはじめとする原料や包装・梱包資材の価格の上昇、人件費や物流費の高騰によりコスト環境が厳しいなか、一部メーカーは主力商品の高質化とともに出荷価格の改定に取り組んでいる。
味の素冷凍食品は当上期の売上げは主力のから揚げ類の苦戦や炒飯類の反動減があり減収となったが、看板商品のギョーザは皮を薄くして肉も国産に変えるなど、大幅に改良した。ケイエス冷凍食品も主力の「鶏つくね串」に新製法を導入して出荷価格を上げた。
価格改定の実施は各社方針の異なるところだが、コスト圧迫する要因が多い今期において、当面は主力商品の生産販売に精力を傾ける局面が続きそうだ。
日本冷凍食品協会による冷凍食品の国内格付け製品数量(同協会が運営する認定証マークを付けた製品の数量)は今年1~10月累計で54.0万tと前年を1.4%下回った。そのうち家庭用は0.2%減と減少幅は小さいものの、この時期としては14年以来4年ぶりのマイナス。14年は消費税が5%から8%に上がった年だ。
格付け数量は家庭用では国内生産量の6割(17年度)を捕捉しており、市場の傾向を一定程度あらわしていると見ることができる。ただし近年、市場が拡大しているコンビニエンスストア(CVS)など流通業のPB商品は含んでいない。
CVSが有名外食店とのコラボ商品で話題となり、スーパーでも助六寿司などこれまで市場になかった商品を独自に品ぞろえする動きがあらわれている。良品生活が運営する「無印良品」でも冷食の取扱いを始めるなど冷食市場が拡大の潮流に乗っていることは確かだが、冷食メーカーは主力商品で足場を固めると同時に、これら市場構造の変化を見極め、適切に対応していく必要がある。
〈コストアップ厳しさ増す、大手のアナウンスで値上げ機運〉
冷食メーカー各社の業務用冷食における18年度上期実績は、売上高・利益面ともに苦戦気味の企業が多かった。
業務用で増収となったのは主要冷食メーカー11社中3社にとどまった。もっとも業務用冷食の仕向け先である外食・中食・給食の各業態とも人手不足が深刻化する中で、調理負担軽減につながる冷食の需要は拡大傾向にある。
日本冷凍食品協会の統計によれば、今年1~10月の冷凍食品認定数量(国内生産品、重量ベース)で業務用は3.2%減。メーカー筋によれば、上期は豪雨、台風、地震など自然災害が多発する中で、内食志向の高まりがあり、業務用には総じてマイナスに働いたという。また、猛暑や豪雨で生鮮野菜の価格が高騰したことが、冷凍野菜の伸長という面では業務用冷食市場を押し上げた反面、メニュー単価を上げられない中で、野菜以外の部分でより安い商品へのシフトが起きた面もあるようだ。
利益面では、農水産畜産物の数多くの品目で原材料価格が上昇しているほか、物流費、包材費、人件費といったコストの増加が収益を押し下げ、減益となった企業が多かった。
業務用冷凍食品では、原材料価格の高騰が著しい水産品などの一部品目で、既に値上げを実施しているものもあった。そして11月8日、味の素冷凍食品は来年3月1日から全商品の6割にあたる335品目で約2~10%の値上げを発表。最大手のニチレイフーズも11月30日、業務用調理冷食と一部の常温食品について同じく3月1日納品分から約3~7%値上げすると発表した。取材過程でも値上げを検討しているという企業は多く、今後追随するメーカーが増える可能性がある。
中食、外食、シニア市場を含む給食――の調理現場では人手不足から、調理冷食の利用者のすそ野が広がっている。そのため既存の主力商品でも現場のオペレーションを含めた提案によって勝負できるとする向きも強い。製品コストの上昇が厳しさを増す市場環境の中では、なおさら自社の主力商品分野に重心が傾くことになる。
〈冷食日報 2018年12月5日付より〉