極洋 食品と水産との収益均衡、海外は現地生産・現地販売に布石
極洋の井上誠社長は12月14日、同本社(東京都港区)で年末記者会見を開いた。その中で現中計(18年度~19年度)において食品事業の拡大と海外販売の拡大の2つを最大のテーマとして取り組む意欲を示した。食品事業の拡大で収益を水産商事事業と均衡させ、海外では現地生産・現地販売の体制を目指して布石を打つ考えだ。
井上社長は「私の仕事は大きく2つある。食品事業の拡大と海外販売の拡大だ」と述べてその方向性について説明した。
食品事業拡大の狙いについて「当社は水産事業に強い会社だ。これも伸ばすが、相場の影響が大きく売上げ、収支とも変動が大きくなる弱点がある。それを補うために3年後、食品事業と水産事業の収支を5分にすると考えている」と述べた。
そのために食品事業では工場を中心に据え、キョクヨーブランド商品の販売を拡大することで利益を確保する――という“真のメーカー”を目指した事業を構築する。
海外販売は3年後に売上構成比15%を目標にしている。「海外でキョクヨーブランド商品を売ることで達成したい」として、さらに日本からの輸出だけでなく、欧州、東南アジア、アメリカの現地工場で生産した製品の現地販売を目指す考えだ。
海外販売は北米に続き、東南アジアやヨーロッパへの本格的参入に着手する。「製品の優位性を明確にし、海外顧客の要望に合った商品を提供するために、現地に最終加工場を確保することも念頭に置いている」と話した。「将来的に極洋ニッポンより、極洋ヨーロッパ、極洋アメリカ、極洋東南アジア――が大きい売上げを上げるための礎をこの3年で作りたい」と意気込む。
中計「Change Kyokuyo 2021」(18年度~20年度)では3年後に売上高3,000億円、営業利益60億円を計画している。
〈煮魚・焼魚で国内No.1、海外新工場も〉
食品事業のうち冷凍食品は原料価格の高値推移、運賃・保管料のコストアップ、工場の人手不足――が課題だ。「塩釜研究所が中心となって最新設備の開発・導入による省人化、省力化を推進し、生産設備の増強、製品歩留まりの向上、流通の改善――を図り、工場の稼働を高水準に維持できる販売体制の構築」とともに「水産原料調達の優位性を活かして原料から製品までの一貫体制を構築し、品質と価格面で優位性のあるキョクヨーブランド製品を拡販することが最も重要」と話した。
キョクヨーブランドの認知度向上のため今年は、テレビCMを放映した。今後、放映回数・時間を充実させていく考え。新聞、雑誌メディアなどの露出も増やすとした。
商品開発について、特に焼魚、煮魚では国内外の生産設備の増強・改善を行い、焼魚・煮魚製造で国内No.1を目指す。塩釜工場の煮魚ラインはフル稼働となっている。海外ではタイとベトナムに生産拠点があるが、来期中に東南アジアに新拠点を構える計画を明かした。現地販売も視野に入れる。
今後、新分野となるサラダフィッシュの開発に注力する考えも示した。伸長著しいカニカマ「オーシャンキング」は現在、生産能力が7,000tまで拡充している。今期は6,500t規模に達する見通し。能力をさら高め、将来的には東日本に製造拠点を持ち、その際には市販商品の製造もスタートさせたいとした。
すり身原料の価格上昇に対しては、生産・販売量を拡大することを優先し、それにより値上げ幅を圧縮する考えを示した。
そのほかの製品値上げについて、他社の発表によって環境が整っているとしつつ、「上げなければならないものは上げる」と述べるにとどめた。
新カテゴリーとして肉、野菜のほか、麺類、米飯などの主食、惣菜カテゴリーへの参入も進めていく。家庭用で新たに取り組んでいる麺と米飯について、炒飯・ピラフについては手ごたえがあるとした。麺は具なしのつけ麺だったが不振、具付き商品を開発中。家庭用冷食は今期、売上高22億円を見込み、期首計画の30億円には届かない見通しだ。
〈冷食日報 2018年12月17日付より〉