冷凍の高齢者食、需要は増加傾向に 「メディケアフーズ展2019」で各社訴求、大冷は「フィッシュ・デリ」、極洋は「だんどり上手」でやわらか食

東京ビッグサイト(東京都江東区)で高齢者食や介護食を専門に展示する「メディケアフーズ展2019」が23、24日に開かれた。高齢者人口の拡大とともに需要が伸長する中、調理の現場では人手不足などで簡便性の高い商品需要が伸長している。10社以上の冷凍食品に関連したメーカーが出展し、時短ニーズに応える商品を提案した。

同展示会は、介護やヘルスケア関連企業に向けた展示会「ケアショー・ジャパン」(主催:UBMジャパン)で併催し、11回目を迎える今回は、併設展含めて1万4,517人が来場した。ブースではそれぞれの特長を打ち出した商品提案に力を注ぐ。

富士経済が2017年に発表した「高齢者向け食品市場」(メーカー出荷ベース)に関する調査によると、2017年の出荷額は1,597億円を見込む。内訳は、在宅向けは149億円で、施設向けは1,448億円だ。高齢者人口の拡大により、在宅・施設ともに販売実績は伸びており、業界関係者も「ここ3年ほどで引き合いが非常に増えている」と話す。2025年の市場規模は17年の1.2倍以上の1,997億円になる見込みだ。

高齢者福祉施設では慢性的な人手不足が続いている。医療費や介護費の圧縮などを目的に、国は在宅介護を推進しているが、老老介護や独居老人の増加などの問題もある。その中で調理負担を減らせるため、簡便性の高い冷凍食品などの引き合いが増えている。

メーカーブースでは、調理の負担軽減などにつながる商品を提案した。

冷食各社が調理の負担軽減などにつながる商品を提案

冷食各社が調理の負担軽減などにつながる商品を提案

オカフーズは、魚の骨は取り除き、ふっくらと調理できる魚の切り身を提案した。調理済みの商品として「サワラ野菜入り煮付」や「ぶり大根」に加え、「アジトマト煮」や「サーモンホワイトソース煮」といった、洋食の味付けにした商品も提案した。将来的には付加価値を付けられる調理済み冷食の販売を、素材の販売と同程度まで引き上げる方針だ。
 
大冷は野菜と魚をパックにした、皿に盛るだけで一品が作れる「フィッシュ・デリ」シリーズなどを紹介した。同シリーズは自然解凍に対応し、軽く温めるだけで食事の準備ができる。個食パックになっており、急に食数が増えても対応できる。ブースでは同商品や刻み野菜シリーズなどを紹介した。今後の取り組みとして市販向けの商品提案も進める。
 
極洋は、「だんどり上手」シリーズのやわらか食とムース食を展示した。やわらか食は、素材の味はそのままに、飲み込みやすい柔らかさにした。「やわらかさば味噌煮」や「やわらかマンダイ煮付け」などがある。ムース食は、食物繊維を配合して健康維持をたすけるほか離水にも配慮した。
 
食品商社の神栄(神戸市中央区)は、骨まで食べられる「骨までまるっ魚」を紹介した。国内で製造し、魚本来の風味や身質を維持した。調理方法を工夫して、食べても骨の硬さは感じられないようになっている。カルシウムなどの栄養価も通常の骨取り商品よりも高く、サプリメントなどで補う必要がなくなる。
 
勝美ジャパンは、カット済みの野菜や果物を紹介した。カット野菜は一度蒸してから凍結し、野菜の旨味を長期間持続できるようにした。果物では、例えばリンゴの場合、介護施設では缶詰が使われることが多い。しかし担当者によると「味付けが好きじゃない人もいる」という。そこで、味はリンゴだが触感は柔らかくして飲み込みやすくした商品などの提案も進めている。
 
マルハニチロは、「食べる楽しさ」や「栄養価」、「人手・時間」の3コーナーに分けて新商品を紹介した。「やさしいおかず」の「見た目が」シリーズは、見た目は素材に近いが、舌でもつぶせるような柔らかさで、彩りや見た目は常食に近づけている。市場は今後も伸長するとの見通しから家庭向けの提案も強める。
 
テーブルマークは、ユニバーサルデザインフード(UDF)シリーズ「やさしい口福」や、アレルギー対応、栄養素強化商品などを紹介した。
 
ケイエス食品は、塩分量を減らした商品などを訴求した。試食ではミートボールで、通常のモノと塩分を減らしたものを用意し、味にそん色がないことを伝えた。
 
イーエヌ大塚製薬は、独自技術で食材本来の食感をのこしつつも、舌やスプーンで簡単にくずせる柔らかさにした冷凍食品シリーズ「あいーと」を展示した。商品ラインアップは和食を中心に30~40品目を取り揃えており、展示会では新商品の「あいーとうどん」(2月18日発売)の試食を行った。今後は在宅向けの訴求も強める考えだ。
 
ヤヨイサンフーズは、舌でつぶせるやわらかさと美味しさや見た目にもこだわったやわらか食として、蒲焼きやフライ、天ぷらの風味を再現した商品を展示した。
 
味のちぬやは湯せんで作れるコロッケなどを提案した。油調済みの商品を湯せんするだけで作れるため、調理時間や調理員が不足しているところやフライヤーがない施設などに提案する。吉野家は自社の牛丼などの味はそのままに食べやすさを追求した「吉野家のやさしいごはん」シリーズを訴求した。
 
〈冷食日報 2019年1月25日付・1月28日付〉