〈冷食流通インタビュー・大手卸〉日本アクセス 「手作り早わざキッチン」発売、あえてひと手間で食卓を開拓

日本アクセス 商品統括管掌付フローズン食品MD部長・玉田功氏
――足元の家庭用冷食市場について

市場は昨年11月以降あまり良くない。要因は幾つか考えられるが、1つ考えられるのが、昨年と比べて生鮮野菜の価格が安値で安定している点。昨年終盤は生鮮野菜価格が高騰し、冷凍野菜が大きく伸びたためそのウラに当たる。ただ、家庭用冷食全体を見れば冷凍野菜だけでそこまで大きなインパクトはないはずだ。生鮮野菜が安くて需要が伸びると、消費者心理として冷食となかなか結び付かない面があるのではないか。野菜を買えば即食・調理品の冷食ではなく、料理をする方にシフトする面もあると思っている。

また、消費増税を控えるとともに、さまざまな商品の値上げが発表される中で、生活防衛意識が高まってきており、冷食に限らず食品全体で消費の鈍化傾向が見られるのも事実だ。中でも冷食は決して安い商品ではないため、生活防衛意識の影響を受けやすい。

そして、春から家庭用冷食でも米飯で値上げを行うメーカーもあり、市場がどうなるかは予断を許さない。ただ、悪いことばかりではなく、餃子は持ち直し、パスタや汁なし麺などは良くなっている。

当社の4~12月における家庭用冷食の実績は1%増とプラスだが、単月では11月以降、前年を割っている。カテゴリー別では、麺類が5%増、水産フライ10%増、中華5%増、ピラフ3%増、その他米飯3%増とプラスで推移する一方、コロッケ、ハンバーグ、おにぎりなどマイナスになっている。

――家庭用冷食での御社の施策について

1月に開催した総合展示会、フードコンベンションにも出展した通り、3月にケイエス冷凍食品が手掛ける留型のキット商品「手作り早わざキッチン」シリーズで和・洋・中メニューの3品を発売する。

調理方法は、別個の袋に入った肉だんご6個+ソースと野菜をそれぞれ電子レンジ調理した後、フライパンで計1分炒め・からめる調理を加えるもの。電子レンジ調理のみで夕食のメインディッシュを作ることには“手抜きではないか”と抵抗がある人も多く、あえてフライパンでひと手間加えてもらうことで“手作り感”を出し、食卓に上げやすくした。一方で、メニュー調味料とは異なり、別途野菜などを用意する必要はない。

近年ヒットする唐揚げ商品などは、食卓向けとは言われるが、まだまだお弁当用途で使う人も多い。ニッチな商品ではあるが、これを浸透させることで、本当の意味での“食卓向け”市場の深堀りができ、冷食市場の活性化にも繋がると考えて訴求したい。

また、既存の冷食売場をどうしていくかも課題だ。近年、棚替えで売場全体を変えることが少なくなり、一部新旧商品の入れ替えのみに留まることが多くなっている。消費者の側から見れば、目新しさが少なくなっている。さらにリーチインケースが増えることで、手に取って見ることも減ってきている。その結果、売れ筋商品が固定化され、新商品の寄与率が下がってしまっている。

その打開策として、展示会では食シーンに合わせた家庭用冷食売場を提案した。たとば朝食シーンでは、ある調査で「普段朝食を食べる」人が83%と多い一方▽毎日同じメニュー▽片付けが面倒▽栄養バランス▽準備が面倒――といった悩みを持ち、調理時間もない。そこで、冷凍食品を朝食で活用することを売場として提案。ビジネスホテルの朝食バイキングのイメージで、レンジのみの簡単調理によって朝食のさまざまなメニューを選べる売場を考えた。

また、以前より「冷凍だからおいしい」ということで、冷食の具付き麺・米飯・冷凍野菜を訴求してきた。冷凍野菜は旬の時期に急速凍結することで、栄養分を保っている。具付き麺・米飯はチルドなど他の加工食品では実現が難しい品質を実現する、まさに冷凍だからこそできるカテゴリーだ。これらに対し、店頭で興味を持って手にとってもらうきっかけとなるよう、たとえば冷凍具付き麺の「イケてるイケ麺」販促企画のような店頭企画も実施していく。

家庭用冷食での購買率は、最も売れている商品でも50%までいかないと言われている。当社が実施している消費者による投票イベント「フローズン・アワード」は6回目を数え、データの蓄積ができてきている。これを活用し、我々卸としても、新たなユーザー獲得に繋がるような提案をしていけたらと考えている。

〈冷食日報 2019年2月19日付〉