中食の市場規模 9年連続増成長で10兆円からさらに拡大、消費税軽減税率が追い風となる可能性も
日本惣菜協会が5月14日に発刊した『2019年版惣菜白書』によれば、18年の惣菜市場規模は前年比2.0%増の10兆2,518億円となり、10兆円を初めて突破した前年からさらに拡大した。同協会の調査によれば、惣菜市場規模は唯一09年、調査開始以来のマイナスとなったものの、その後は再度成長軌道に乗っており、9年連続での市場拡大となった。
業態別では「GMS(総合スーパー)」が2.9%増、「CVS(コンビニエンスストア)」が前年比2.4%増、「SM(食料品スーパー)」が2.4%増、「専門店、他」(惣菜店、弁当店、給食業者、寿司販売店など)が1.2%増とそれぞれ伸長した一方、「百貨店」は1.3%減と前年を下回った。18年の惣菜市場規模を10年前の09年と比較すると、全体では27.3%増と大きく伸びている。業態別では、「CVS」が61.4%増と1.6倍以上に大きく伸び、市場をけん引。「SM」も37.3%増と大きく伸び、「専門店、他」は6.3%増、「GMS」は5.9%増と堅調な一方、「百貨店」は4.7%減と唯一縮小した。
また、市場におけるシェアは、09年は「専門店、他」が34.5%増と最大だったが、「CVS」が15年に初めて「専門店、他」を上回り、18年は32.3%と最大シェアを占め、「専門店、他」の28.8%と差が広がってきている。
10年前と比較すると、惣菜がより身近な業態で買われるようになっており、特にCVSでは、2011年の東日本大震災以降、それまで主要顧客とは言えなかった中高年にも惣菜を購入する層が拡がったと言われる。また、店舗数は09年12月に4万2,629店舗と既にかなり多かったが、18年12月は5万5,743店舗(日本フランチャイズチェーン協会)とこの10年間で30.8%増加しており、多くの人にとってより身近な存在となっている。さらに、通常の弁当、惣菜類に加え、独自PB による袋物惣菜の市場開拓、カウンター商材の充実など、品揃えの充実も市場拡大に繋がった。さらに、イートインコーナー設置による外食需要の取り込みもあり、単なる「中食」ではなく、外食のファストフードにも接近している。
かたやSMも10年前の37.3%増、構成比も1.9ポイント増26.2%と伸長している。特に有力企業で惣菜を充実させる動きがあり、好調な企業では売上高の惣菜構成比30%を目指し、メニュー開発に力を入れるようになっている。人手不足が課題となる中で、セントラルキッチン、アウトパックを導入する傾向が強まる中でも、CVSとの差別化も必要なため、主要メニューは店内調理にこだわったり、夕方にも出来たての商品を陳列したり、調理場を来店客から見えるようにしたりと、ライブ感のある売場づくりで消費者を引きつけている。前頁のグラフはCVSの販売統計(日本フランチャイズチチェーン協会)における「日配食品」(乳製品やデザートを含むが、うち6~7割は中食が占めるとみられる)の既存店売上前年比、日本スーパーマーケット協会などスーパー3団体のSM販売統計における「惣菜」の既存店売上前年比、日本フードサービス協会の外食統計における外食全体の全店売上高前年比の推移をまとめたものだ。
これを見ると、外食は足元で堅調で伸び率が高いのに対し、CVS とSM はマイナスの月も目立ち、「負けている」感じもある。ただ、外食統計が全店データであるのに対し、CVS とSMは既存店データであることには留意が必要で、特にCVS は店舗数の伸びは鈍化しているものの、スクラップ&ビルドも行われており、既存店と新店がカニバリゼーションを起こしているケースもあると見られる。
一方、SMは既存店惣菜売上高が13年5月~16年7月まで38カ月連続増となった時期に比べると、マイナスも目に付くようになっている。17年9月は群馬・埼玉両県を中心に広域発生した腸管出血性大腸菌(O-157)による食中毒事案で、群馬県前橋市のSMも運営する惣菜チェーン店で集団感染が発生し、女児1人が死亡した事案の影響もあり大きく減ったが、そこからは持ち直している。
今年10月に予定されている消費増税では、中食には軽減税率が適用される一方、外食は通常税率と税率が異なることもあり、一般論としては中食市場を押し上げる可能性がある。いずれにしても、社会的背景を見れば食の外部化は留まることがなく、中食・惣菜市場の拡大は今後もしばらく続くのは間違いないものと思われる。ただし、人手不足が大きな課題となってきており、中食を作る担い手を確保するのが難しくなってきている。いかに効率的に、かつ外食に負けない品質のものを提供できるかが問われることになりそうだ。
〈冷食日報 2019年6月6日付〉