〈工場探訪〉米久デリカフーズ本社工場、「幸楽苑 焼き餃子」など中華に強み、グループの国内調理品を担う量産型工場/静岡県沼津市
母体となるアンゼンフーズは台湾料理、広東料理、イタリアン、ヤマキ食品はとんかつ、大龍は四川料理に強みを持っており、「3つの遺伝子」を引き継いで現在に至る。去る10月31日に実施した、食品産業新聞社など9社が加盟する冷凍食品記者クラブの合同取材では、野口英俊社長(伊藤ハム米久ホールディングス執行役員)が同社の概要について説明した。
米久デリカフーズ本社工場
〈沼津市・静岡市と群馬・前橋市の3工場体制で運営〉
現在、米久デリカフーズの自社工場は3工場体制で運営している。
沼津市の本社工場で水餃子・焼き済餃子・春巻・つくね串等、連続ラインで比較的単品量産できる商品を手掛けている。
一方、静岡市の静岡工場は西館と東館を有し、西館で餃子、海老蒸し餃子、ミニ餃子といった餃子類、エビチリ、酢豚、麻婆豆腐といった調理品、胡麻団子など、東館で肉饅頭、中華菓子、ちまき、小籠包、ニラ饅頭など点心類等、比較的手間がかかる手作り感ある商品を製造している。
〈連続ラインで水餃子・焼き済餃子・春巻・つくねを製造/米久デリカフーズ本社工場〉
今回取材した米久デリカフーズ本社工場は、沼津市内の米久の本社から数キロ離れた場所に位置する。同工場は1989年に操業開始。規模は、敷地面積9,437平方メートル、延床面積5,670平方メートルで、従業員数約150人を有する。年間生産量は、合計で約4,200トン、うち水餃子約2,000トン、春巻約1,100トン、焼き済餃子650トン、つくね約500トンとなっている。前述のように、この工場は機械化により比較的量産が可能な商品を製造している。
春巻の場合は、原料の検品や解凍・下ごしらえ後、釜で具材を撹拌し、炒める作業を行う。1台の釜で約180kgの材料を炒め、炒め後は約140kgとなる。また、春巻の成形機は、練った皮の原料と具材を投入すると、皮を焼成する→皮を規定サイズに切る→具材を皮で包む――という一連の作業を自動で行うことができる。その後、トンネルフリーザーで凍結させる。
春巻は1台の釜で約180kgの材料を炒める
なお、本社工場の玄関には、1973年に完成したという、日本初と目される春巻の皮自動焼成機が展示されている。現在の成形機も、皮を焼成する部分はこの機械と同様の基本構造をしている。
本社工場の玄関に展示される“日本初”の春巻の皮自動焼成機
取材時は12cmの春巻(40~55g)と、弁当用の9cmの春巻(30g前後)を生産しており、12cmのものは1分間に40本を4台の機械で作り、合計160本/分、9cmのものは1分間に40本を6台の機械で合計240本/分という速度で生産していた。
つくねは、小判型とボール型、2種類の形状のつくね串を生産。成形してから揚げ工程の後、スチームオーブンで2度蒸しする。その後、串刺し工程の串刺し器は、さまざまな串に対応するとともに、3個ずつ、2個ずつなど、個数にも柔軟に対応できる。串刺し後は凍結させ、トレーに入れて包装する。
水餃子・焼き済餃子も、皮・具材の原材料をそれぞれ投入することで、皮の成形・包餡・加熱調理・冷凍の工程を、ほぼ自動で行うことができる。
〈野口社長「店頭の人手不足で市販用強化は必然的」〉
米久デリカフーズでは現在、業務用商品が約75%・コンシューマー商品(市販用)が約25%の構成比で商品を製造。2011年の社名変更時は約9:1の構成比で、コンシューマー商品の比率が高まってきているという。
野口社長は「もともと米久は精肉が得意で、(調理品も)インストアパックで詰めてもらう商品に強みがあった。一方、スーパー店頭の人手不足があり、インストアパックの担い手が減少している。そうした中でデリカ商品をどう伸ばすか考えると、市販用・コンビニエンスストア向けのコンシューマー商品を必然的に強化していくことになる」と語る。
米久デリカフーズ・野口英俊社長
現在は新規採用がなかなか難しい環境にあるが、米久デリカフーズ全体で生産量が上がっているため、前年比で従業員数・海外研修生数は増えているという。本社工場は連続ライン型で人手が比較的かからないが、静岡工場では、手間暇かかる料理型商品を作っているため人数が多いため、パック詰め工程をロボット化するなど省人化投資を行った。前橋工場でも、年内にも手作業だった包装ラインに省人化投資を行う方針だ。
野口社長は「現在、当社では業務用商品を中心に、市販用冷凍食品、-5℃帯チルダ―などの商品を製造している。これからますます市場環境が変化する中、コンビニエンスストア・ドラッグストア向けの市販用商品の商品開発を積極的に進めながら、伊藤ハム米久HDにしかり貢献していきたい」など抱負を述べた。
〈冷食日報 2019年11月28日付〉