味の素冷凍食品、次期中計に向け「商品開発に一段力を入れる」/黒崎社長
味の素冷凍食品の黒崎正吉社長は12月18日に開いた専門紙向け記者会見で、2019年度は体幹強化に取り組み成果が出たとして「今後は商品開発にもう一段力を入れる」と述べた。特に健康志向の高まりへの対応については味の素グループの技術資産を最大限活用し、冷食業界No.1を目指すとした。また海外事業については、味の素グループの冷食事業では味の素冷凍食品(FFA)が核となって一体経営で役割を果たしていくと述べた。
国内の冷食市場について、市場規模は2018年度は2兆4,000億円と14年比6%増、内訳はリテール市場が8,547億円で同10%増、フードサービス(FS)が1兆5,200億円で4%増と成長している(同社調べ)。19年度はリテール、FSとも前年比2%ほどの伸びと見る。この推移を示し、黒崎社長は「日本では人口減少の中でも将来、冷食市場は着実に伸びると確信している」として「女性の社会進出によって時間が足りない状況やフードロスの問題、レストランなどでの人手不足、ライフスタイルの多様化に伴う食のオケージョンの多様化、老齢化や健康志向の強まり――など様々な社会課題こそが、冷凍食品事業の市場拡大の大きなチャンスだ。冷凍食品にさらに付加価値を付ければ利益拡大も狙っていける」とした。
「19年度は主力商品を中心に体幹の強化に傾注し、新商品の発売は少し寂しかった」としつつ、味の素グループで来年2020年~2022年の3カ年中期経営計画が始まるが、冷食事業では商品開発にさらに力を入れることを検討しているとした。
冷凍食品の基本価値によって時間の創出、フードロスの削減、メニューの多様化が解決できるとし、加えて「当社だからこそ解決できること」として、3点示した。1つは素材と製法にこだわり“おいしさNo.1″を追求し続けること。もう1つが人手不足、オケージョンの多様化、健康志向への対応について。特に健康志向への対応は味の素グループの総合力を活用していきたいと話した。
具体的な取り組みについて、FSにおける人手不足への対応としては、独自製法によるオペレーションの簡素化を挙げた。「ガツうま!チャーハン」は19年度上期に前年比50%の伸び、餃子では「焼き目付き餃子」は15%増、冷凍スイーツは5%増と実績も上げている。
家庭用の「ギョーザ」についても取り上げた。ギョーザは今後、周辺領域を含めさらに強くしていく方針だ。
ギョーザでは今年、ギョーザステーションを両国駅のほか大阪でも開催。オケージョンの提供を行ったが、キョーザ以外の商品でも様々なオケージョンに対応する付加価値を付けていくとした。
これからのチャレンジ分野として、健康視点の商品開発については、スモールマス対応を含め、本格的にチャレンジするとした。「健康視点では業界No.1の地位を目指す。そのためには味の素グループの技術資産を最大限活用していく。“風味・食感コントロール”はすでに導入しているが、世界一の技術を持っているといっても過言ではない、アミノ酸を冷凍食品に活用できるかにチャレンジしていく」。
社会課題を解決しながら事業を拡大していくグループ理念、ASV(Ajinomoto Group SharedValue)は「冷食がリードしていきたい」とする。味の素冷凍食品のブランドイメージはある調査で40%がNo.1に挙げ、2位以下を大きく上回ったという。「社会課題を解決しながら事業拡大を図る中でコーポレートブランドの価値も高めていきたい」とした。
海外事業について、黒崎社長はFFAの社長と味の素のグローバル冷食事業部管掌を兼任する。「味の素グループの冷食事業のコアはFFAだ。一体感をもって取り組む状況をどう作るかを検討していく」と話した。「これまでもFFAは北米事業をサポートしてきたが、一体経営の中で生産技術サポートはもちろん、マーケティングやロジスティック、バリューチェーンなどさらに何ができるかを検討していく」とした。海外の工場は集約(アセットライト)を進める方針だが、同時に積極的な成長投資もしていく考えを示した。
〈冷食日報 2019年12月20日付〉