激化する「中食・内食」競争、家庭での喫食は拡大傾向に

ロイヤルHD冷凍食品新ブランド「ロイヤルデリ」
〈冷食メーカー新商品はオリンピックを意識 外食企業の冷食販売強化も〉
中食需要は拡大を続けている。冷凍食品では個食関連の商品が伸長しており、今後もこの傾向は続くと見られる。冷凍食品メーカーではこの需要に対応した商品を今春は投入する。外食産業でもイートインからテイクアウトへと利用は移りつつある。また、テイクアウト対応の強化に加えて、店舗と同等の質を確保した冷凍商品の販売を強めるなど、業態の垣根を超えた競争が進む。

〈伸長する家庭内喫食〉
中食と内食それぞれの定義は、内食は「素材を買ってきて家で調理すること」。中食は「調理された食品を購入して家で食べること」と言われている。共働き世帯や少人数世帯の増加などで簡便ニーズは高まっており、中食・内食商品は着実に販売を広げている。

日本惣菜協会発行の「惣菜白書2019年版」によると、2017年の中食市場規模は2008年比で22.3%増の10兆555億円となった。外食は同4.6%増の25兆6,561億円、内食は14.9%増の35兆3,281億円で、伸び率は中食が最も大きい。

食市場規模の推移(「惣菜白書2019年版」より)

食市場規模の推移(「惣菜白書2019年版」より)

最近では、2019年10月の消費税増税に伴う軽減税率の導入で、テイクアウトや宅配、惣菜などの需要は大きく増えた。飲食店で喫食すると10%かかる消費税が、持ち帰りの場合は8%になる。そのため、テイクアウトを行っている飲食店では「9月まではイートイン利用が多かったが、増税以降はテイクアウトの利用にシフトしている」(モスフードサービス担当者)という。また、持ち帰りに最適なメニューの開発を強める飲食店や、デリバリーを強化する企業も増えている。
 
その中で、一部の飲食チェーンが冷凍食品の販売を強めつつある。その理由を外食関係者は「外食市場の成長は鈍化傾向にあり、今後は人口も減る。今のうちから他の市場での売り上げを確保して将来につなげたい」と話す。日本フードサービス協会の2019年1~12月の動向を見ると、全体の売上高は1.9%増で伸長したが、洋風・和風のファミリーレストラン業態や、居酒屋業態などは売上高と客数ともに前年割れとなった。冷凍食品販売を強めるのはこうした背景があると見られる。

2019年外食動向

2019年外食動向

「ロイヤルホスト」などを運営するロイヤルホールディングスは、冷凍食品の新ブランド「ロイヤルデリ」を立ち上げて、ペンネや冷凍パン、ドリアなど25品目を展開する。当面はロイヤルホスト75店舗やグループ企業の専門店4店舗に加えて、自社ネット通販でも扱う。担当者は「一般の冷凍食品より少し高めの値段だが、味や品質にはとてもこだわった」と自信を見せる。
 
ファミリーレストラン「ジョイフル」をチェーン展開するジョイフルは、今年4月に「チキンカットステーキ」を新たに発売して品ぞろえを拡充する。冷凍品の外販は3年前から行っており、拡大に向けて展示会に出展するなど力を注いでいる。
 
ピエトロも「洋麺屋ピエトロ」シリーズから冷凍パスタ4品を投入する。店舗で提供する料理と同等の質を確保し、百貨店や高級スーパーなど約60店舗に配荷する。同社の食品事業の中心はドレッシングやパスタソースなどで、冷凍パスタはこれらの商品に次ぐカテゴリーに育成したい考えだ。その他、一部外食企業でも冷凍商品の開発を進めている。ある企業の幹部は「冷凍商品は最も美味しい状態を保てるため、今の時代に最も合っている」と期待を寄せる。

冷凍パスタ「洋麺屋ピエトロ」シリーズ(糸ひきモッツァレラチーズのトマトソース)

冷凍パスタ「洋麺屋ピエトロ」シリーズ(糸ひきモッツァレラチーズのトマトソース)

〈冷食メーカーも提案を強化〉
冷凍食品メーカーも、拡大する中食・内食市場に熱い視線を向ける。共働き世帯や少人数世帯の増加に伴い、家庭での調理の機会は減っているという。その中で冷凍食品は近年、比例するように販売を伸ばしている。
 
今春の新商品を見ると、日本水産は簡便惣菜「今日のおかず レンジで作る」シリーズから、シニアをターゲットにした和食メニューを2品投入する。日本製粉は主菜と副菜をセットにした和惣菜「服部さん家の和おかず」シリーズを新たに投入する。日清フーズでは「Smart Table」シリーズから様々な食シーンに使える洋風惣菜2品を発売する。
 
また、今年は東京オリンピック・パラリンピックの開催年で、テレビなどでの観戦も増えそうだ。各社でも家庭での食事の機会は増えると見込む。イートアンドはおつまみ利用などを想定した「大阪王将 つまみ餃子」を発売する。家庭でのスポーツ観戦などは伸長すると見込んで投入する。日清食品冷凍もオリンピックを家庭で観戦することをイメージした、得意の辛味を活かした麺類3品を発売する。外食・中食・内食の垣根は薄れつつあり、その線を越えた各社の提案は始まっている。人口動態や生活様式が変化する中で今年の市場は今までとは違う活況になりそうだ。
 
〈冷食日報2020年2月13日付〉