〈冷食流通インタビュー・大手卸〉国分フードクリエイト・中村典正常務「変化を価値へ、4つの機能で対応」

国分フードクリエイト・中村典正常務執行役員営業統括兼デリカ事業部長
――足元の業績概況と市場環境について

国分グループとして、市販用冷食は前年を上回った。カテゴリー別では市場同様、弁当・スナックは苦戦したが、米飯・麺類・惣菜は好調だった。また、アイスは冷夏の影響で苦戦、チルドは前年並、デリカ(業務用)はプラスで、当社グループの戦略業態の一つである中食に関してはグループ全体で1,000億円を超えた。市場状況は、市販用冷食は全体的に堅調、チルドでは洋日配は軟調、和日配はカニカマや納豆などメディアに取り上げられ盛り上がったが、それでも苦戦した。アイスは、昨年は冷夏で苦戦したが、年間世帯支出は2010年の6,333円から2019年は7,771円まで拡大しており、中長期的には成長トレンドにあると言えよう。

――今年度の重点取り組み事項

2020年度は、グループ低温会社として「変化を価値に変える」という基本方針を掲げている。変化とは、人口減・単身世帯増・女性の社会進出・人生100年時代への健康志向といったことを指し、仮説を立てながら「4つの機能」を強化活用して対応する。

4つの機能とは、
▽あつめる
▽つくる
▽はこぶ
▽まもる
――を指す。

「あつめる」は調達機能で、国分フレッシュリンク(株)による生鮮三品のカテゴリー、産地の拡大を図り、調達機能を高めながら、生鮮やデリカ素材として販売する。

2つ目の「つくる」は開発機能だ。グループ低温会社の国分フードクリエイト(KFC)、ナックス、中部食糧の3社では得意とする温度帯が異なり、KFCがチルド・アイス、ナックスが市販冷食・デリカ用業務用冷食、中部食糧が外食やデリカを中心に各社で開発し、それを持ち寄って売っていく。

KFC(国分フードクリエイト)ではカテゴリーIQを高め売場主幹を獲得するために売場の活性化、新しい価値の創造を基軸に商品開発を行っている。その一環として、ヨーグルト売場向けに5年前、「ギリシャヨーグルト」を発売。当時は売場に同様なものはなく、新しい価値創造に繋げた。2019年はタンパク質市場の開拓を狙った「GREEK PROTEINYOGURT」および「飲むギリシャ」を追加。今春も乳アレルギーの方も食べられる「アーモンドミルクヨーグルト」を発売するとともに、アイスカテゴリーでもアーモンドミルク、豆乳を使ったものをテスト販売し、新たなプラントベース(植物性)市場の創造を目指していく。

一方、デリカでは前述の「あつめる」機能による素材と、真空調理や下拵え処理といった加工技術に加え、人手不足に対応するバックヤードの生産性向上に寄与できるような商品開発を行っている。また、ナックスでは、昨年、だしにこだわった鶏レバー煮を、今春は海鮮にこだわった春巻を発売する予定だ。

3つめの「はこぶ」は物流機能だ。日本デリカ運輸を低温物流の基軸として物流機能を拡充していく。また、昨年9月には大阪・茨木に3温度帯汎用センター「関西総合センター」を新設したが、低温部分の運営は日本デリカ運輸が担っている。このセンターは、肉や魚、野菜をセットアップする加工場を備えており、今年9月から稼働する計画だ。ここで、スーパーのバックヤードの単純作業を請負い、スーパーでは、より付加価値・加工度の高い商品作りに傾注できるようサポートすることができる。また、今後市場拡大が予想されるミールキットの開発にも繋げていきたい。

その他、全国のセンターにフローズンチルドの機能を配置した。フローズンチルドは全国の優れた商品を調達し、鮮度を保ちながら距離も縮められる機能として強化している。調達機能とこれらの流通加工機能を組み合わせ、価値を高めるようにしたい。

そして「まもる」は品質保証機能だ。品質管理能力=企業価値と捉え、常にハイレベルな状況を維持し、お客様に安心して商品を売っていただけるよう、機能拡充をしていく。

――ナックスとの協業の進捗

現在、これまで別のシステムを使っていたナックスに、国分の営業系・物流系の基幹システムを導入している最中で、これは時間がかかるが来年には完了したい。

一方で、システムとは別にやれるところは協業を進めており、冷食・アイスに関してはKFCとナックス、メーカー様との共同キャンペーンを実施したり、共通の基本棚割りを作り、共同で強化メーカー商品を拡売したりと、スケールメリットを活かせるような活動を行っている。デリカ部門でも、ナックスと共に販促計画書の共同作成や、成功事例の共有などを進めている。

今後システム統合が完了すれば、センター配置や在庫管理も含めてシナジーはさらに高まり、お得意先様やメーカー様にさらに貢献できるようになると考えている。

――冷食市場の課題

市販冷食市場はこれからも伸びると思うが、生鮮売場などでもミールキットなどが出てきて、温度帯を超えた競合関係にある中で、簡便性という冷食の良さがほかとの差別化に必ずしもならなくなってきている。保存料や添加物が不要で、旬の状態をそのまま凍結させたという冷食の“良さ”(冷力の力)をもう一度前面に出してアピールしていくべきだろう。

また、日本人の13%がアレルギーを持つと言われる。その人たちへの提案も必要ではないか。現在はパッケージの裏面にアレルゲン表示があるが、表面に、ひと目で分かる共通のピクトグラムを入れるようにすればよいと考える。こうしたことは各社バラバラにやっても分かりづらく、業界統一で進められると良いだろう。冷食産業は装置産業でもあり、大量生産・大量販売が基本だが、人口減少局面に入る中では、さまざまな方に寄り添った商品提案が必要になるのではないか。

〈冷食日報2020年2月20日付〉