外食経営者100人が有志の会「外食産業の声」委員会を立ち上げ、「家賃支払いモラトリアム法」策定を提言
外食産業の経営者約100人は、有志の会「外食産業の声」委員会を立ち上げた。第1回の提言として、外食店で大きな負担になっている家賃支払いの先延ばしを可能にする「家賃支払いモラトリアム法」の策定を政府に求めた。4月21日に都内で開かれた会見で、DDホールディングスの稲本健一取締役は「4月末には倒産する企業も出てくる状態だ。このままだと5月にはより増える」と飲食店の窮状を訴えた。
「家賃支払いモラトリアム法」として、
〈1〉不動産オーナーとテナントとの話し合いに応じることを義務化
〈2〉日本全体が厳しい状況なので痛みを分かち合うという精神でまずは家賃の減免交渉に応じることを義務化
〈3〉不動産オーナーが銀行借入の問題などで減免も猶予も困難な場合は、テナントと不動産オーナーの合同で政府系金融機関に家賃の立替払いを申請(その際にテナント、オーナーの両サイドから決算書を提出)。手続きを終了後、速やかに金融機関が不動産オーナーに直接家賃を支払いその返済について基本的に1年後に開始。金融機関はテナントに対して求償権を持つが、リスクなどが必要な場合は、引き続き、オーナーが参加しての話し合いを義務化する
――の3点を要請した。
現在の政府の支援策は、家賃の減免に対して「法人税・地方税社会保険料の納付猶予」「固定資産税、都市計画税の減免」「免除による損害額の損金算入」が適用される。ただし、家賃に限らず減収した際に受けられる制度で、テナントや不動産オーナーへの支援策ではない。
新たな支援策として「法人税、地方税、社会保険料の納付猶予」「固定資産税、都市計画税の減免」も、詳細は一部未定だが予定している。ただし、猶予で固定資産税と都市計画税を減免されるのは不動産オーナーで、テナントにはむしろマイナスになるという。仮にビルオーナーが3カ月家賃を半額にすると、オーナーは固定資産税と都市計画税が免除され、テナント側は家賃の支払いを続けなくてはならない。
売り上げの15~20%を家賃で占めているテナントが多く、こうした企業の負担を少しでも軽くするために家賃の支払い延長を求めている。
〈飲食店、売り上げ消えてもコストは消えず〉
タリーズコーヒージャパンの創業者でEGG`N THINGS JAPAN代表の松田公太氏は「『店を開いてもいいが、客を呼ぶな』と言われているような、非常に厳しい状況が続いている」「テナントにとって必要なのは減免と猶予の両方だ」と訴える。
飲食店の売り上げに対するコストを大きく分けると「材料費」「人件費」「家賃」の3つに分けられる。現在休業の店舗では材料費はほとんどかからず、人件費は雇用調整助成金の支払いが遅くとも6月に実施予定で、現在は企業で負担をしている。
一方、家賃や光熱費は、多くの店舗で休業していても支払いが続いている。仮に、家賃が1カ月200万円の店舗を10店経営していた場合、売り上げがないのに家賃だけで1カ月2,000万円の支出が発生する。そこに人件費もかかってくるのでコストだけが膨らみ続けている。松田氏は、多くの飲食企業で「生き延びるために借り入れを増やしている。戻る見込みの薄いお金を借金し続けているような状態」と強調する。
テイクアウトやデリバリーを行う事業者も最近は増えているが「既存店で売上が落ちていないのは元々テイクアウトを中心にやっていた業態で、これまでテイクアウトなどをしていなかった業態がいきなり転換できるのか。以前の売り上げの5%でも確保できればという思いでやっている」(松田氏)と話す。
今後も「外食産業の声」委員会ではより多くの事業者からの声を募り、事業規模問わず外食産業の現状の発信を行う考えだ。
〈冷食日報2020年4月22日〉