〈味の素冷凍食品 新中期経営計画〉第一に「事業構造の強化」より成長に軸足を移す

味の素冷凍食品 黒崎社長
〈組織改革、生産体制の再構築に着手 将来見据えた“種まき”〉
味の素冷凍食品(FFA)は6月23日、同本社で20-22年度の新中期経営計画の説明会を専門紙向けに開いた。19年度は「体幹強化」をテーマに国内事業の事業利益はV字回復を見せた。今中計では「事業構造の強化」を第一に掲げつつも、中長期の成長を見据えた種まきも進める考えだ。

味の素グループでは2020-25年の6カ年中計を公表している。これに沿ってFFAでは20-22年の3カ年では第一に「事業構造の強化」を優先し、23-25年で事業構造の強化を継続しながら、より成長に軸足を移すという枠組みを示した。

黒崎正吉社長は新中計の基本姿勢として「一つは冷食業界のリーダーではなくチャレンジャーとして、新生FFA をつくっていこうということ。もう一つはFFA を味の素グループの冷食事業グローバル展開における確固たる核にしていくということ。技術面、マーケティング面、バリューチェーン視点――などで具体化していくことだ」と意気込んだ。

20-22年度において、売上げは緩やかな成長となる見込みだ。

家庭用では高付加価値の具現化を目指す。そのために特にブランド強化にポイントを置く。一番好きな冷食ブランドについての同社調査によれば、40%が味の素という結果となり、2位(20%)以下に大きく差をつけているという。このアドバンテージを生かしていく。

業務用では伸ばす部分と抑える部分のメリハリを付けながら利益を創出するとした。

7月1日付で行う組織改革にも新中計を円滑に進める狙いが込められている。営業部門についは新たに「国内統括営業部」を置き東日本・西日本支社制を廃止。

営業部門のリーダーシップ強化を図る。また「マーケティングDX推進室」を新設しマーケティング力の強化を図る。味の素グループと連動して、ビッグデータなども活用しながら価値を生み出していく考えだ。

情報発信の面では「戦略コミュニケーション部」を新設。広報PR の抜本的強化を図る。

全く新しい組織となる「新事業開発部」も新設する。売上・利益を問わず、新事業にチャレンジするチームとなる。冷食が持つ無限の可能性を広げたいとしている。

黒崎社長は「固定概念を打ち破るため各組織が機能を発揮してほしい。バリューチェーンの視点でDX も活用しながら各組織がどのように連携していくか、というのが新たなチャレンジとなる」と述べた。

生産体制の再構築にも取り組む。今3カ年の設備投資額は総計390億円(国内150億円、海外240億円)と、新工場の建設は予定していないとしているが、過去最大級の規模となる。

黒崎正吉社長は「ROIC(投下資本利益率)経営の中でアセットライトは必須、一方で将来の成長を見据えて生産キャパや立地など検討していく必要がある」と話す。アセットライトと成長投資をバランスよく進める方針だ。

国内工場では主力領域のライン増設や能力増強を行う。また人手不足が依然深刻なことから、工程の合理化、独自設備の開発、ICT 活用など合理化投資を積極化する。

他方、一部生産能力が不足するカテゴリーでは国内外のパートナー企業を活用することでアセットライトにつなげる。

20年度中に全工場のフリーザーの脱フロン化が完了することから、翌21年度と22年度には成長投資を増やす考えだ。

国内では18年度に、老朽化した四国第一工場を建て替え、第二工場に集約した。国内には複数工場で老朽化の課題が残っていることから、今中計期間内に最適生産体制を検討する。またタイ・中国の海外工場については今後の国内外の販売戦略を踏まえ、両国での再編を今中計内に実施する。

7月1日付で新設した「生産統括室」では国内7工場の再編検討や生産におけるDX 推進、海外法人への支援体制の整備・強化を担う。

R&Dは更に強化が必要だとした。味の素グループのR&D拠点が川崎に集約されることから、商品開発を含め技術交流やシナジーの発揮を目指す。健康視点からアミノ酸技術の冷食への活用、減塩・減糖、アレルゲン対応などを具体的に挙げている。

〈冷食日報2020年6月24日付〉