日本水産 2019年度前期は増収増益、足元はコロナ禍影響の課題も/金澤建支業務用食品部長インタビュー

日本水産・金澤建支業務用食品部長
〈“やるべきこと”に集中して取り組み〉
――19年度の業務用食品事業の総括

ニッスイ個別(国内)での業務用調理冷凍食品の売上高は前年比6.3%増407億円、ほぼ半数が業務用の農産冷食は5.3%増117億円と順調に推移した。

収益面では原材料コストの上昇、物流費、販促費の増加に苦しんだが、生産性が向上したことで微増益となった。2月以降コロナの影響を大きく受けたが、何とか着地することができた。

主要カテゴリーでは新設備を投じた「本格中華 大粒肉シューマイ」や「本格中華10品目の春巻」が寄与した中華カテゴリーが大きく伸長した。

品質にこだわった「ご馳走エビフライ」や「ジャンボたらカツ」「ご馳走たらカツ」が牽引した水産揚げ物も2ケタ増。

コロッケ類は秋に発売した、原料と製造方法にこだわった「八ヶ岳野辺山高原牛乳使用デリカかにクリームコロッケ」が好評だった。量販店惣菜売場での採用例が多く、上期の不調を取り戻しカテゴリー全体で前年を超えることができた。

毎年伸長しているグラタン類は、たいめいけん監修品の「シーフードグラタン」が日経POSチルドグラタン部門で1位となるなど全体でも好調に推移。

一方鶏加工品、一部のスナック類は苦戦し前年割れとなった。

冷凍農産品は主力の枝豆に加え、カット済で簡便調理ができる「パパっとベジ」、彩りにもこだわった「彩りベジ」両シリーズが堅調に推移。国産凍菜やEUポテトも好調に推移したことから前年を上回った。

販売ルート別では、中食は量販惣菜での大口顧客をいくつか獲得したこともあり好調に推移したが、外食、給食ルートは2月以降のコロナ影響も受け中食ほどの伸びとはならなかった。

――コロナ禍の影響がある中、足元の業務用食品を巡る市場環境をどうみているか

2月後半からコロナの影響を受け始め、直近6月でも前年を下回る結果となっている。ほぼすべてのお客様で影響があり、とりわけ学校給食、外食、事業所給食での影響は大きい。これらお客様への依存度が高いカテゴリー、販売部門ほどマイナスの影響を受けている。一方宅配、C&C向け商材は好調であり、エリアによる差もあり状況は様々だ。

全体としては下期に向け徐々に回復していくと考えるが、残念ながらすぐに以前のようなレベルにまで戻るとは考えにくい。

ただし、昨年を振り返ると第1四半期は複数の要因が重なり、業務用冷食業界全体が大変好調に推移していた。前年と比較すると悲観ばかりが先に立つが、目前の課題、やるべきことに集中し取り組めば回復のスピードも上がるのでは、と考えている。

――20年度の重点施策や方向性

期初に掲げた、市場ニーズの高いテーマでの取り組み強化、お客様のメリットに軸足を置いた商品開発に変わりはない。具体的には、当社独自の技術や原料調達力を生かした商材や、さまざまな場面での人手不足の解消に役立つ商品開発などである。

これに今後進むであろうといわれている「二極化」「簡便化」「定番強化」などのキーワードを加え、変化に対応した新商品を順次発売していく。

コロナの影響は原料調達面においても世界中の農畜産、水産原料へ広がっており、今年度も原料高騰との戦いは続くと考えている。

――生産面での投資案件等

今年度は特に大きな投資案件はないが、生産性の向上、省人化への取組は随時投資を含め進めている。

――中長期的な方向性・目標

人の流れや働き方が変われば対応して市場も変わる。どう変わるのかあらかじめ予測するのも重要だが、あまり決めつけずに日々やるべきことを着実に行いながら、冷静に柔軟に思考して行動することが大切だと考えている。

――その他PR事項など

スケソウダラを原料とした「速筋タンパクシリーズ」が好評だ。加齢により衰える「速筋」を運動以外で増やすことが出来るとされるスケソウダラのたんぱく質を、一食当たり4.5g以上摂取することができる商品群だ。在宅勤務が続き運動不足の方にもお勧めの商品で、ぜひランチの一品や、夕食のおかずとしてお試しいただきたい。

〈冷食日報2020年6月26日付〉