冷凍の幼児食に引き合い、“あの時あったら良かった”を形に/子どもの食卓
1歳半から6歳前後の子どもに適した食事「幼児食」の冷凍食品を展開する、「子どもの食卓」(東京都港区)。元々は幼児食の弁当を販売しており、2019年11月からは冷凍食品の販売を始めている。事業を加速度的に大きくするのではなく、子どもの成長や子育て家族の安心につながる食事の提供に力を入れている。権寛子社長に話を聞いた。
「子どもの食卓」権寛子社長
――事業を始めるきっかけは
上の娘が2歳を過ぎた頃に野菜を全く食べてくれない時期がありました。私は30歳過ぎまで多くの時間を仕事にかけてきて、料理も初心者でした。それでも子どもにとって良いとされる、栄養バランスのよい、味の濃くない食事を作っていました。主人の帰りは遅く、娘と2人きりで夕飯を食べることが多かったのですが、ご飯を作ってもほとんど残される毎日で、台所に立つのは苦しかったです。多分、全国にこうした悩みを持つお母さんは大勢いらっしゃると思います。その時感じた「もしもあの時にこういうものがあれば良かったな」と思えるものを届けたくて、会社を立ち上げました。
最初は1日に100食程の弁当を販売していました。しかし、化学調味料や合成添加物を使っていないため消費期限は短く、いったん販売を打ち切りました。その後、インスタグラムのダイレクトメールで地方に住んでいる方から「販売してほしい」という声をいくつも頂きました。そこで、冷凍庫から使いたいときに使えるというメリットのある冷凍食品に取り組んでみることにしました。
クラウドファンディングで需要を調べたほか、大手食品メーカーの方に直接お会いして話を聞くなどして、2019年11月から販売を始めました。
――商品の特徴は
栄養バランスはもちろん、化学調味料や合成添加物は使用してないため、安心して食べられるようにしています。また、食材本来の味を感じられるようにしています。メニューは和食が中心です。真面目な方ほど食事の準備ができないと罪悪感を覚えてしまいます。子どもにうす味を食べさせたいと思っても、なかなか手に入りにくい。その中で、冷凍庫に入れておけば気軽に使えるのはすごくいいなと思いました。
商品は6社の協力工場にお願いしています。メニューによって得手不得手があるため、商品によって変えていて、安全性と美味しさを両立できる会社と取り組んでいます。
――新型コロナウイルスの影響は
今回の新型コロナウイルスで引き合いは非常にありました。4月23日に、「ミニおいなりさん」や「米粉のたこ焼きさん」など子どものおやつだけでなく補食にもなるおやつシリーズ3品を、自社ECで発売しました。ですが、発売開始からわずか2時間で売り切れてしまいました。この商品は昼食にもなる商品で、過度の砂糖を入れなくても満足な甘みを感じてもらえると思います。
――今後の取り組みは
今は自社のECのみで販売していますが、7月15日から21日まで、伊勢丹新宿本店(東京都)でポップアップストアを予定しています。実は商品の原価はかなり高いため、こうした場所に出店すると利益的には厳しいところがあります。ただ、新型コロナウイルスの流行した時期にスーパーの棚から商品が消えていたのを見て、何かできればと思いました。そんな時にオファーを頂き、出店を決めました。来た方が安心して買い物できるような売り場づくりをし、新商品などもいくつか置く予定です。
会社をどんどん大きくしたいわけではなく、どんなママさんにも優しい商品を作ることのほうが大切です。自分が欲しくないものは相手も欲しくないと思っていて、自分の生活から感じた「あったらいいな」と思うものを作っています。この市場は決して大きくはありません。でも、この先も子どもの成長に合わせて、その時に「あったらいいな」と感じる食事を形にしたいです。それが、日々の食事に悩む方たちの助けに少しでもなれればと思います。
〈冷食日報2020年7月20日付〉