キンレイ、コロナ禍需要で3~6月売上40%増、「通常は閑散期だが需要期同様のフル生産」
キンレイは7月28日、東京・新橋の東京本部で和田博行社長らが出席し、新商品発表会を開き、業績や今期方針等について白潟昌彦常務らが説明した。
2019年度(3月期)業績は、売上高が前年比14%増141億5,800万円、税引後純利益は黒字回復で3.9億円と増収増益だった。白潟常務は「売上は旧工場では100億円のラインを超えられず2015、2016年度と頭打ちだったが、2017年の大阪工場稼働で(生産能力も上がり)再成長軌道に乗った」「利益面では、大阪工場への大型投資で2017・2018年度は赤字だったが、2019年度はやっと利益を出せた」という。
今期は売上高148億円を計画していたが、コロナ禍で3~6月売上は40%増と伸長し、予算から売上高6億円、利益で2億円上回っているという。「通常、当社にとって3~6月は閑散期で生産を絞るところ、需要期同様のフル生産で乗り切った。今後このまま予算通りにいけば150億円に届くことになり、さらなる工場も考えねばならなくなるかもしれない」という。
今期の経営方針は「次なるステージに向けての変革~愛されるメーカーとして食を通じての貢献と社会的責任を果たす」とした。それを具体化するため、現在4つのプロジェクト(PJ)
▽理念浸透PJ
▽味の探求PJ
▽CSR PJ
▽業務プロセス刷新PJ
――を展開している。
また、事業体制は従来の
▽営業本部
▽生産本部
▽管理本部
――の3本部制だったが、今期より商品本部を設立し、4本部制に変更。
商品本部下には、営業本部の商品企画部と生産本部の商品開発部を統合した商品部と、生産本部から移管した購買部を配置。齊藤克敬商品本部副本部長商品部長は、商品本部の方針を「コミュニケーション力を高めての業務推進と変革」とした。消費者の声に耳を傾け、社内コミュニケーションを活発化し、“原料/企画/開発/PR”までを一気通貫でストーリーある企画開発を推進し、モノづくりメーカーとしてさらなるレベルアップを図るという。
そのストーリーある企画開発の一環として前述の「味の探求PJ」の取組みを推進。2014年から、究極の鍋焼きうどんを目指した「THE 鍋焼き」に始まり、一昨年から取り組むPJ ではこのほど、1年かけて具材・スープ・麺それぞれで最良のものを目指した非売品「THE 醤油らーめん」を作成し、全社員に配布。レポートにまとめてもらい、通常のものづくりと何が違うのか探り、次の商品開発に繋げていく構えだ。足元の営業概況については澤田卓士営業本部営業部長が説明した。
2019年度の家庭用冷凍麺市場は前年比4%増と伸長。うち、ラーメンは9%増と順調に伸長し、同社が昨年「お水がいらない」シリーズから発売した「横浜家系ラーメン」「塩元帥塩ラーメン」「五目あんかけラーメン」もそれに貢献した。
また、家庭用冷凍麺の同社のシェアは10.1%と1割を超え、ラーメン、具付きうどん、ちゃんぽんではいずれも3割を超えるシェアとなったという。
販路別販売構成比推移を見ると、2010年度は業務用23%、生協14%、CVS(コンビニエンスストア)57%、量販6%だったが、2019年度は業務用8%、生協19%、CVS37%、量販36%と、量販が大幅に躍進。澤田部長によれば、CVSも金額は伸びているが、量販は2010年の「お水がいらない」シリーズ発売以降、累計1億食を突破するなど躍進し、販売構成比が大きく上昇したという。
また、価格帯別の冷凍具付きうどん・ラーメンの市場規模は、10年ほど前は200円以下が多数を占めていたが、「お水がいらない」シリーズで、同社が200円台半ばの市場を作ることができた。今秋新商品「お水がいらない鍋」シリーズでは、現状ほとんどない300円台半ば以上の市場にチャレンジする。
発表会の冒頭、あいさつした和田博行社長は要旨次のように述べた。
「新年度の経営方針を策定し、3本部制から4本部制に体制を変更した。また、役員体制は新取締役に田嶋徹生産副本部長、青山易司営業副本部長が就任した。昨年度は売上高141億円となったが、課題が蓄積しており、もう一段ハードルを上げて取組みさらなる成長を目指したい。今年4~6月はコロナ禍で売上高が前年比40%増と伸長しているが、決して実力ではなくその20%程度だと思っている。昨年度も1~2カ月はコロナ禍が押し上げた部分もあったが、メディアでも冷食が多く取り上げられ、冷凍麺もメジャーなものになってきた。かつては安かろうまずかろうで特売の目玉にされてきたが、プロパーな価格の指定席を得てきており、この流れを続けたい」。
〈冷食日報2020年8月6日付〉