フーヅリンク「クックパック」、非常事態への備えとしてニーズ拡大、サテライト側の目線での商品開発を重視/山下代表取締役インタビュー

フーヅリンク・山下純弘代表取締役
高齢者施設向け完全調理済み食材「クックパック」を開発したフーヅリンクは広島県尾道市に本社を置く「クックパック」の運営コンサルティング会社だ。2019年3月にフジ産業と業務提携し、営業・製造拠点の拡大とサテライト施設側の視点に立ったユーザビリティーの向上など、完全調理済み食材の新しい可能性に積極的に挑戦している。同社の山下純弘代表取締役に話を聞いた。

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――コロナ禍で問い合わせは増えているか

問い合わせ数はこの1月~6月で、病院、老健など種類は別にして、件数で言えば前年対比3割増で増加している。問い合わせは人手不足や給食コストの見直しに関する内容が多いが、最近は厨房内の職員やご家族にコロナ感染が出た場合の非常事態に備えたセントラルキッチンの検討が増えてきている。これは現地調理から完全調理済み食材・セントラルキッチンに完全に切り替えるものではなく、状況に応じてどちらも対応できるようにするものだ。特に、病院・特養が多い。

――クックパック開発の経緯は

介護施設運営の問題を解消することが目的。私は15年ほど前、某給食会社のセントラルキッチンで800人くらいを対象に真空調理による食事提供を行っていた。しかし、安全面や運営の問題から、365日の献立を調理提供の5日前に作っている状態で、どうしても採算が合わなかった。

また、その当時でもサテライトキッチン側の人員集めは難しく、作業効率の改善が大きな課題だった。そこで、大手スーパーのデリカ部門を何社も立ち上げている方に相談して、真空調理によるロングライフの低温殺菌の仕組みと細かい原価計算について教えてもらった。いろいろ模索して勉強し、2014年にライセンスを取った。

――他社と差別化するポイントは

サテライト側のことを考えたサービスの提供と高い栄養価がポイントになっている。私自身がサテライトの食事提供をしていたからこそ、サテライト側の目線での商品開発を重要視している。

例えば「クックパック」では、発注人数分の納品を行っている。他社では、1kg、500g、300g の重量による納品が多いが、これだと表面上は安いが余剰が出てしまい、トータルでは負荷がかかる。冷凍庫に余剰在庫を抱え、結局、廃棄になってしまう。「クックパック」はすべて開封、使い捨て、納品したものだけをお支払いいただいている。この人数分の対応は当時、外販の物流を使う会社としては革命的だった。今でも驚かれる。

――味と栄養のこだわりは

どちらかと言うと濃く、しっかりした味と感じられると思うが、1日の主菜・副菜の食塩相当量の合計値はなんと4.5g 以下。それに主食、汁物を付けても7.5g 以下となり、すまし汁で出せば4.5g 以下の減塩食となる。「こんなに味が付いているのに塩分は低い」とよく驚かれる。

主菜・副菜にごはん、味噌汁を加えた全体のたんぱく質の構成比は全体のエネルギー比の15%以上になっており、おかずだけのたんぱく質量も高い。例えば、某メーカーの調理済み食材メーカーでは1日のエネルギー値が613kcal、たんぱく質29.2g、食塩相当量5.6g だが、「クックパック」ではエネルギー値650kcal、たんぱく質35.4g、食塩相当量4.5g だ。「クックパック」に切り替え、たんぱく質をしっかりとることで、90代の方のアルブミンの値が正常値に戻ったなど、効果症例が何件か挙がっている。今後、献立のカスタマーサービスも強化していく。

――献立のカスタマーサービスとは

お客様が「クックパック」のマスター献立を他の食材に変更して発注したものを、納品するサービスだ。例えば、朝食を魚に変えてほしいなど献立をお客様側で変更できるようになる。1日3品まではお客様で変更できる。現在はテスト期間で、これから本格的に開始する。

――なぜ、東日本地域における販売強化のパートナーにフジ産業を選んだのか

フジ産業さんとなら“新しい給食”の提供ができると思ったからだ。カスタマーサービスについても完全調理済み食材メーカーの主義主張ではなく、給食会社ならではのポリシー・プライドがあることで、新しいサービスをどんどん生み出せると信じている。

〈冷食日報2020年9月3日付〉