味の素冷凍食品 R&D部門を川崎に移転集約、テクノロジーとデザインの集積・発信拠点に
味の素グループの研究開発部門を川崎事業所内に集め、味の素、味の素冷凍食品、味の素AGFのグループ3社の技術融合を加速し、製品のさらなる高付加価値化と事業構造の強化を図る考えだ。研究開発のグローバル競争力強化を目指すともしている。10月27日に新施設をメディアに公開した。
味の素冷凍食品が入居したのは味の素・食品研究所の北棟、名称を「フローズンフード テック&デザインステーション」という。執行役員の佐野文彦研究・開発センター長は「新しいテクノロジーを生み出すことのほか、顧客視点に立ったデザイン志向の商品を作っていきたい。技術を集約して世界にも発信していきたい」と話した。
同社にとってこの移転には2つの側面がある。1つは味の素グループの国内食品R&Dの集約。「特に味の素のもつ“おいしさ設計技術”や減塩などアミノ酸技術に由来する健康栄養の分野を活用していきたい」(佐野氏)とした。
またグループで共通する、官能評価では技術や知見、人員の相互活用などで高度化・効率化を図る考えだ。
もう1つが味の素冷凍食品におけるR&Dの集約だ。これまで群馬県大泉町に研究・開発センターと品質管理部があり、埼玉県松山市に生産技術開発部があった。これを川崎に集約することでレシピ開発と設備開発が一体化し、開発のスピードアップを見込む。
味の素の食品研究棟は東棟・西棟・北棟で構成される。北棟は4階建・免震構造で延床面積7,400平方メートル。新研究開発棟の建設と既存施設の改修を含む総投資額は約60億円となる。
北棟において、味の素冷凍食品は1階全て(設備実験エリアなど)と2階(包装実験室)と3階(微生物実験室など)の各一部、4階全て(オフィスや調理実験室)を使用する。1階にはコンパクトな工場設備を設置して、素早いレシピ設計や小ロット製品開発に対応できるようにした。
3階にはグループ共用エリアとして、官能評価室とコミュニケーションスペースをおく。将来的に共用スペースのバルコニーと、線路を挟んだ東棟とを連絡通路でつなげる構想だ。
黒崎正吉社長は「味の素グループは食と健康の課題解決企業を目指し、新しい商品・サービス、独自の技術・素材の開発を高度化することを目的に、味の素、味の素AGF、われわれFFAが食品研究開発部門を川崎に集結した。シナジーを追求し、技術の相互活用しながら、社会課題や生活者ニーズの解決にスピーディに取り組んでいきたい」と話した。商品開発の方針については、冷食の基本価値、すなわち時間の創出やフードロスの削減、人手不足への対応――に加え、味の素グループらしさとして次の3点を目指すとした。
第1に味の素グループの食品技術を最大限に相互活用し、圧倒的なナンバー1のおいしさを追求すること。第2に健康栄養価値、さらなる付加価値の向上。アミノ酸技術を活用していく考えだ。第3により人の気持ちや心に寄り添う冷凍食品。調理する楽しさ、家族の絆につながるものを目指すとした。
味の素の坂本次郎常務執行役員食品事業本部食品研究所長は「食品は食べることを通して人を幸せにするものだが、それはまだ機械で測れない。ICT技術がいかに発達しても、開発担当者が集い一緒に食べることは重要な部分だ。コロナ対策は行いつつ、R&Dのメンバーが集い、互いに高めあって、お客様への新しい価値を創造していくというのが、3社のR&Dメンバーを集約する大きな意味だ。味の素の研究所では発酵技術を用いたうま味やコク味などの新しい味物質や素材の開発、それらを用いたおいしさ設計技術の開発を行っている。昨今は特に、減塩やアミノ酸の機能を活用した健康栄養技術の開発に注力している。味の素冷凍食品が強みとする原料や開発・製造、品質管理の技術と、相互にシナジーを発揮して、互いの製品のさらなる高品質・高付加価値化につながると確信している」と話した。
グループの最終的なR&D拠点の集約は来年4月に完了する予定だ。
〈冷食日報2020年10月28日付〉