日本水産、次期中計を1年後ろ倒し、来期は体質強化の年に/2020年度上期連結業績

日本水産・山本晋也取締役常務執行役員CFO
日本水産が10月5日、発表した2020年度上期の連結業績は、コロナ禍の影響による外食・観光需要の大幅減、需要減による魚価低迷、CVS(コンビニエンスストア)向け販売減などが響いて減収・減益となった。

通期業績予想はコロナ禍の影響が上期で収まる想定だったため、影響の長期化などに伴い売上・利益とも下方修正した。また、先行きが不透明なこともあり、来年度の2021年度は体質強化の1年とし、次期中期経営計画(中計)は2022年度から開始する方針も示した。同日、オンラインで報道向けの決算説明会を開催し、山本晋也取締役常務執行役員CFOが業績概況などについて説明した。

今期の通期見通しは、売上・利益とも下方修正した。売上高は前期比5.8%減(当初予想比3.0%・200億円減)6,500億円、営業利益は同34.3%減150億円(同21.1%・40億円減)150億円の計画とした。

要因として山本常務は、5月に発表していた通期業績予想はコロナ禍の影響が上期で収まり、第3四半期より回復する想定だったが、国内外とも感染が収まらず、影響が長期化する見通しであることを挙げた。

国内水産市況では、平均価格が回復傾向も、取り扱い数量は依然軟調が継続。また、国内業務用市場、海外市場も6月以降若干回復も前年を下回る状況が続いている。一方、国内家庭用市場は、巣ごもり需要で量販店は堅調だが、家庭用冷凍食品は市場拡大も6月以降は伸びが鈍化しているという。

さらには10月以降、世界各国で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、欧米各国でもロックダウン再開や外出自粛などの制限が再開。今後も外食・観光需要や魚価への影響が続くことが予想される。それに加え、医薬品原料販売では、コロナ禍の影響で米国FDA の来日が遅れており、想定より減少する見込みだという。

地域・事業別の見込みは、食品事業では、北米と欧州では上期に続き家庭用が業務用の落ち込みをカバーし増収。日本では、CVS向けのチルド事業の販売減が響き減収。水産事業は国内・海外とも、需要減・販売価格下落が響き減収を見込む。

また、今期が3カ年中計の最終年度だが、先行きが不透明なこともあり、来年度の2021年度は体質強化の1年とし、次期中計は2022年度から開始する。今後の成長戦略には海外展開が欠かせないが、出入国制限が続く中で、協業や買収などの事案を進めづらい点などが要因だ。

山本常務は「1年間で傷んでいる国内養殖、チルド事業を中心に体質強化を図る」「(コロナ禍で先が見通せない中で)マインドが保守的になりがちで、アグレッシブなことをやりづらい状況。どうすべきかしっかり考える1年とする」など述べた。

〈業務用食品は簡便・省力化対応で差別化、欧州は英・仏中心に加えドイツで販売開始〉
山本常務は、各事業の現状の振り返りと下期以降の打ち手についても説明した。食品事業では、チルド事業がCVS来店客数減少の影響から苦戦。これに対し、人員削減や生産体制の見直しによる生産性改善および、チルド弁当・惣菜などニーズが拡大するカテゴリーの開発強化、廃棄ロス削減を意識した商品開発を行う。

外食・惣菜売場向けで苦戦気味の業務用食品では、国内においては、調理現場の人手不足対応を訴求した商品の展開を強化し、簡便・省力化対応による差別化を図る。白身魚たんぱくの訴求も強化する。海外では、テイクアウト・デリバリー向け商品を強化する。

また、欧州食品事業では、英・仏中心に加えドイツでの販売をスタートするとともに、生産機能の拡張を図る。

〈冷食日報2020年11月9日付〉