味の素冷凍食品オンライン業績報告会、持続可能な利益率向上へ構造強化・改革を進める/2021年3月期第2四半期
味の素グループの冷食事業は売上高が995億円で前年比4%減、事業利益は56.4億円で21%増となった。そのうち味の素冷凍食品の当第2四半期の業績は売上高が512億円で前年比4%減、事業利益は46.4億円で31%増、利益率は2.8ポイント上昇した。生産性向上や値引き改善、単価アップへの取り組みも寄与した。
北米・欧州の海外事業は北米は売上高が472億円で2%減、事業利益は15.3億円といずれも現地通貨ベースではほぼ前年並みだった。利益率は0.9ポイントの減少。コロナ禍の影響で工場の要員確保に苦労するなか、家庭用は需要増に対して供給がひっ迫した。
〈国内家庭用主力品は軒並み2桁増〉
味の素冷凍食品の国内事業のうち家庭用は9%増と伸長したのに対し、業務用は27%減と苦戦が続いた。ただし7~9月期は家庭用が10%増、業務用22%減となり業務用も徐々に回復している。
味の素冷凍食品が担う中国・タイ・ポーランド事業の売上高は4%減。中国から北米へのチャーメンの輸出が好調に推移し、7~9月だけで見ると同海外事業の売上高は15%増だった。
収益性が向上した要因として、2019年度から継続している生産性の改善、主要製品への販売集中などの取り組みの成果が表れている。主力のギョーザ・シュウマイの販売構成比が高まり、利益率が改善した。中核製品群の売上げ構成比は家庭用(ギョーザ・シュウマイ・米飯)では90%、業務用(ギョーザ・シュウマイ・米飯・デザート)は5割弱で全体では70%ほどになる。
コロナ禍における家庭用の特需によって販促費が抑制されたことも寄与。また第2四半期は積極的なマーケディング投資を行い、家庭用がさらに伸長したことも挙げられる。家庭用の販売は4~6月7%増、7~9月10%増と伸長した。当第2四半期は家庭用ではギョーザ類が16%増、「ザ★シュウマイ」が20%増、「やわらか若鶏から揚げ」が13%増――と主力の食卓品は軒並み2桁増となり、利益にも貢献した。米飯は横ばい。「ザ★チャーハン」は健闘しているとした。
他方、業務用は4~6月に3割減、7~9月は2割減と回復傾向にあるが、足元も80~90%程度で動いており「前年並みに戻るまでは時間がかかる」とみる。
餃子とシュウマイについては90%まで回復しているが、スイーツ類は苦戦が続いている。ただしスイーツも個包装型の発売などで、徐々に回復しているとしている。業務用は今後も、外食ユーザーの回復への応援策を継続していく。一方で継続可能な事業構造の改革に取り組む。製品の絞り込みをしながら、よりユーザーに役立つよう商品を磨いていくとしている。
〈家庭用はマーケティング投資を積極化〉
下期の方針について黒崎正吉社長は「基本的な方向性として中計の中で構造強化・改革を進めることは変わらない。家庭用は売上げを伸ばしつつ構造強化する。一方で業務用は構造強化を優先する。コロナによって外部環境は予想しづらいが、サステナブルな利益率アップを徹底する。ASV(味の素グループシェアド・バリュー)を実現するためにもそれが必要だ」と話した。
※ASV(=味の素グループシェアド・バリュー)。地域・社会と共有する価値創造を通じて経済価値を生み、グループの成長へつなげる味の素グループの取り組み
コロナ禍において冷食市場が大きく変化している。「特に家庭用では新しい購入者も増えており、冷食市場にとって非常に大きなチャンスと考えている。そのため将来に向けたマーケティング投資を昨年よりも積極化する」とした。
家庭用では「ザ★」シリーズがから揚げの発売による相乗効果で販売が好調だが、特に秋の新商品「水餃子」の定着に注力する。10月末からテレビCMを投下し、販売は好調だ。
下期の売上高・事業利益はともに前年を下回る見込みだ。コロナの影響に加え、構造強化の中で売上げの中身を変えていくとする。利益面も構造改革に加えマーケティング投資を積極化するため下期は前年を下回る。ただし通期では事業利益は前年を上回る見通しだ。
〈冷食日報2020年11月16日付〉