日本水産「おにぎり・中華キット惣菜で売場づくり提案強化、目的買いの売場に」/中野博史家庭用食品部長インタビュー
発表数値でニッスイ個別(国内)での家庭用調理冷食売上高は前年比1.6%増253億円、約半数が家庭用の農産冷食売上高は7.0%減63億円だった。ただ、家庭用の農産冷食は8%増と伸長した。
日本水産家庭用食品部長・中野博史氏
特に第1四半期、コロナ禍の影響で家庭用冷食が伸長し、上期のカテゴリー別ではから揚げ・竜田揚げや麺類、たこ焼きが2ケタ増、おにぎりを中心とした米飯も前年を上回ったが、構成比の高い弁当品が6%減と苦戦した。
ただ、弁当品の中でも春巻、クリームコロッケや磯辺揚げなど、食卓おかずでも使われるようなものは前年を上回ったが、カップ入り和惣菜など専らお弁当に使われるようなものが苦戦している。
農産冷食は主力の枝豆が行楽・イベントの減少もあって前年並にとどまったが、新たにエクアドル産のブロッコリー、ほうれん草やフルーツ類が加わったこともありトータルでは堅調だった。
単品で好調だったのは、今春リニューアルして強化した「パリッと具だくさん五目春巻き」が2倍以上の110%増、「若鶏の竜田揚げ」が22%増、「ちゃんぽん」が10%増だった一方、自然解凍の「3種の和惣菜」は19%減と苦戦した。
生産面では、一時の需要増でおにぎりは生産がひっ迫し、休売までいかなかったが増量キャンペーンを下期に延期した。また、オムライスは業務用の生協向けと同じラインで生産しており、需要増で「ふわとろオムライス」が一時休売となった。ほか、「かにかまの磯辺揚げ」はかにかま自体の需要も増え、原料確保で多少苦労した。
――足元の家庭用冷食市場環境について
コロナ禍の巣ごもり・買いだめ需要などで、弁当品を除き市場が拡大した。若年層の購買も増えるなど間口も広がった。いかに新しいお客様に新しい食シーンを提案できるかが1つの鍵となる。
一方、当社・冷食に限らず、今秋の棚替えで新商品の採用が少なくなっている。上期はSMで食品全般が伸長した中、わからない商品に変えるならば定番品を置いておく動きとなっている。また、量販店も人手不足の中で棚替えに人をさき辛い事情もある。コロナがすべてではないかもしれないが、当社に限らず大型商品のみの採用で、売場が大きく変わらない状況になっている。
また、2020年3月ごろから販売が大きく拡大した。量販店では売上が上がる一方、密を避けるため特売を抑えたため、利益面も膨らんだだろう。客数減・客単価増の流れの中で、前年を追うことになると特売多発などで厳しい価格競争にも陥りかねない。
せっかく来た新しいお客様に、特売メーンではなく、欲しい物を目的買いしてもらえる売場に変えるチャンスでもあり、本来は品揃え・カテゴリーを増やす取り組みが必要ではないか。
――下期の重点施策
本来は上期に、主力の焼きおにぎりに、今春発売した「金芽米でつくった!」おにぎり2品と昨年発売の「もち麦が入った!」おにぎり2品を加えたおにぎり売場展開および、「今日のおかず レンジでつくる」シリーズの中華キット惣菜の売場展開を考えていたが、コロナ禍の影響で売場展開が難しかった。
TV-CM放映を下期にずらし、全国で「もち麦が入った!」おにぎり、関東で中華キット惣菜のCMを放映するとともに、これも上期から持ち越した「大きな大きな焼きおにぎり」の増量キャンペーンを行うなど、販促をあつくしている。特におにぎり・キット惣菜での新しい売場づくりの提案を強化していく。
また、今秋は「今日のおかず」から和惣菜シリーズを発売し、惣菜売場や日配売場から和惣菜を取り込もうという取り組みも進める。「今日のおかず」シリーズの消費者キャンペーンを11月~2021年1月末までの期間実施している。
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なお、近年実施して成果を挙げた大量陳列コンテストは、状況を鑑みて今年は実施しない。
――現在の課題とそれに対する取り組み
弁当品の構成比が高いカテゴリー構成から、上期の実績も伸び率が高くなかった。弁当品の売上を落とさずに構成比を下げられるよう、カテゴリーの偏りを是正したい。弁当品のロングセラーを磨き上げ、売場に必要とされる商品にすると同時に、新しい商品を仕掛けていかねばならない。できる範囲で「若鶏の竜田揚げ」や、キット惣菜、「今日のおかず」和惣菜シリーズの展開を拡大し、売上を上げていきたい。
〈冷食日報2020年12月3日付〉