イートアンドホールディングス 冷食は買った値段以上の価値が重要〈仲田社長インタビュー・外食の冷凍への取り組みは〉

イートアンド「大阪王将 羽根つき餃子」
外食と食品事業の両立を、いち早く実現したイートアンド。そこにはどのような取り組みがあったのか。仲田浩康社に聞いた。

・〈前編はこちら〉イートアンドホールディングス 冷食にスーパーの商習慣などはハードルか〈仲田社長インタビュー・外食の冷凍への取り組みは〉

イートアンドホールディングス 仲田社長

イートアンドホールディングス 仲田社長

 
――小売店で今は多くの商品を展開されていますが、イートアンドも提案を始めた当初は苦労されたのですか。
 
しましたよ。2000年頃だと、「餃子の王将」さんは東京で知られていましたが、「大阪王将」は誰も知らなかった。スーパーの人も知らなかった。売り込みに行ったときは「『大阪王将』って何?」って何人にも言われました(笑)。初めは本当に苦労しました。
 
――どうやって提案をされたのですか。
 
「餃子は広がる市場なので一品だけでなく、もう一品どうですか」という形で提案しましたね。その時は1品あれば十分だよと言われましたが、今は数多くの商品が売られています。市場は本当に広がりました。
 
――地道な提案で20年かけてここまで伸ばしたのですね。
 
20年かけてここまでというよりも、20年かけてようやくここ、ですね。本当に大変です。
 
自分たちで参入できないメーカーがM&Aをして、参入するということもできますが、一番難しいのは卸やスーパーにモノを収めること。それが難しい。食品工場を買収しても、多くは業務用の商品を作っていたメーカーなので、外食やホテルバイキング、スーパーの惣菜など業務用のノンブランドの商品としてのルートはあります。でも、スーパーの冷凍食品売場へのルートはないので、熾烈な競争になると思いますね。価格も壁になります。
 
――コンビニだと少し単価の高い商品が順調と聞きました。
 
コンビニの場合、冷凍食品はNB品(ナショナルブランド、メーカーの企業ブランドが表に出ている商品)が減って、今ではほとんどプライベートブランドの商品ですよね。我々もコンビニに対してPBを作っています。コンビニはそういう市場になっている。外食の有名店だから並ぶかというと少しハードルは高い。並ぶところもありますよ。冷凍ではないけれども、大手コンビニでは外食店が監修した弁当を販売している。
 
我々が洋風を売っても無理で。中華だから売れた。屋号や、イメージのないブランドはやっぱり厳しいと思う。ブランドがはっきりしていると分かりやすい。
 
スーパーでは、多くの消費者は平均単価200円の商品を11品買う、という考え方になるので、その中で1000円の物を買うかどうか、難しいです。
 
――その中で売れるために、市場を知り、提案したのですね。
 
ホントそうですね。最初は餃子1品だけ。しかも他社品よりも高かった。競争力もさほどありませんでした。毎年着実に配荷店を増やしたような形です。
 
何よりも価格と、価格以上の品質があって初めて売れる。それなりのモノをそれなりの値段で売っていても、なかなか売れないですよ。買った価格以上の価値がないと残れないです。
 
消費者の商習慣は昔から変わっていません。今でもほとんど同じです。
 
また、倉庫に運ぶにも運賃がかかる。倉庫も倉賃がかかり、倉庫から運ぶにも運賃がかかる。どれだけの期間保管するかも分からない。入れっぱなしだと倉庫賃がかかり続ける。何期で商品が出るかなども計算しなければなりません。また、問屋さんに売るのもいいけれど、問屋さんとも条件があって、リベートがいくら必要だとか、色々ある。問屋もスーパーにモノを売るので、そこにもリベートはかかる。それも含めて計算をしなければ難しいです。100円で作ったから200円で売れる、という世界でもないです。専門的な知識がないと、本当に難しいと思います。
 
――ダイエーにいたからこそ、そこが分かっていて、提案ができたのでしょうか。
 
それはあると思います。流通にずっといたから、そこの知識だけは新たに吸収する必要がなかった。多少は今の成長につながったのではないでしょうか(笑)。商習慣だけは変えようもないです。大手企業でも変えられないのですから、我々のような新規参入はなおさらです。
 
――そこにうまく合わせられるか、ですか。
 
そうですね、そういうことも必要だと思います。イートアンドが良かったのは、外食の投資と、冷凍食品の投資を分けたことですね。色々と考え、ある程度はOEM(製造メーカーが他社ブランドの製品を製造すること)でやり、自社でやったほうが儲かるという段階に入ってから、初めて自社で取り組みました。
 
元々の発想がメーカーだったことも良かった。当社の場合、冷食を販売する前から、生協などに餃子の具や皮を卸していました。自前で麺や皮の工場も持っていました。冷凍食品はその工場にラインを入れたのが最初です。僕が考えたわけではなく、元からあったんです。セントラルキッチンではなくて、完全に自分のところで作り、卸していた。その視点があったから良かったです。
 
――今後の取り組みをお聞かせください。
 
今は冷凍食品コンシューマー売上第9位なので、それを上げていきたいです。順位を上げることだけが目的ではありませんが。今は水餃子や焼売、小籠包も販売している。より多くの商品を発表できればと思います。中華というジャンルには様々なメニューがあります。中華に近いアジア風の料理もいいですね。チヂミやトムヤムクン、アジア料理全体を作れれば可能性も広がりますし。まずは中華に取り組んでいきます。
 
〈冷食日報2021年4月9日付〉