味の素冷凍食品、チャーハンなどの「ザ★」シリーズはなぜ支持されたのか〈ブランドの創りかた〉
味の素冷凍食品で展開の「ザ★」シリーズが好調だ。2021年4月時点で商品数は3品と少ないものの、いずれも売上は上位に位置している。外食店品質の実現を掲げ、広い支持を獲得しているこのブランドは、どのように誕生したのか。
味の素冷凍食品の田中宏樹さんは新製品の開発にあたり、「誰に向けた商品なのか、ピントがずれていたら商品は届かない」と話す。田中さんが開発に携わった「ザ★」シリーズにおける開発の軸は、「男性ターゲット」と「外食店品質の実現」。基となるコンセプトから、商品やパッケージ、プロモーションを行い、広く支持される商品は生まれた。
味の素冷凍食品・田中宏樹さん
このブランドから最初に発売された商品は2015年発売の「ザ★チャーハン」だ。
味の素冷凍食品では、1977年に「具だくさん五目炒飯」投入し、主にファミリー層から支持を得ていた。しかし、新しいチャーハンはそれとは異なるターゲットへのアプローチを考えていたという。狙ったのは、男性層だ。調べてみると、「冷凍食品は購入の中心が女性。しかし、実際に喫食するのは男性や子どもが多い」(田中さん)ことが分かった。そこで、男性がガツガツ食べたくなる外食店品質のチャーハンの開発に着手した。
そこで五目炒飯とは大きく異なる具材を採用。「世の中のチャーハンは、ネギや卵などシンプルな具材で構成されていた。しかしそこには奥深い味わいや香りがあった」ため、開発はシンプルながらも奥深さのある商品を追い求めた。開発は商品だけで1年近い時間を使った。「品質の追求を掲げた以上、妥協はできなかった」(田中さん)と話す。名前は、「これぞ王道」というイメージから「ザ★チャーハン」にした。
パッケージは、発売当時の売場では珍しく、かつ男性でも手に取りやすい黒を基調に、金色の文字で商品の特徴と名前を記している。売場で消費者の目をひくデザインになり、「ザ★」シリーズは、その後も同様のパッケージで展開を続けている。
TVCMも、商品を前面に打ち出すのではなく、外食店品質の世界観を大切にした。俳優の小栗旬さんが中華料理屋でチャーハンを一心に食らう姿を映し、最後にパッケージが大きく映し出されるという内容で、視聴者にブランドイメージを印象付けた。
田中さんは「最初のコンセプトがしっかりと練られていたからこそ、その後のブランディングが上手く進められた」と振り返る。16年発売の「ザ★シュウマイ」の好調が後押しし、2018年からブランド強化を推し進めた。「ザ★」をロゴ化し、ブランドとしての意識付けを高めた。
2020年にはブランドからは約4年ぶりの新商品「ザ★から揚げ」を発売した。「『ザ★』というブランドから出した2品が好調で、評価と期待は高いと感じていた。それに応えられる、納得できる製品に仕上げるべく、何度も試作を重ねた」という。
コロナ禍で内食・中食の需要は伸びており、「ザ★」シリーズも順調に販売を伸ばしている。「クセになる味付けから、リピーターも多く、熱烈なファンの方々に支えてもらっている」(田中さん)ようだ。「共働きの世帯が増え、手間と時間のかかる料理は避けたいと考える家庭は多い。そのため、惣菜の購入や、外食や専門店での購入、冷凍食品を活用する人も増えている」と田中さんは話す。品質の高い商品を提供することで、家庭の時間を充実させられるよう、「手間抜き」ながらも美味しい、外食店品質の商品の提供を目指している。
今後について、田中さんは「まだまだ手に取ってもらえていない方が多く、シリーズを知らない人もいる。広告や売場で商品をしっかりと訴求していきたい」と意気込みを語った。
〈冷食日報2021年5月7日付〉