日本水産、通期で減収減益も下期は経常増益回復/2021年3月期連結決算

日本水産2021年3月期連結決算(通期予想の増減率は会計基準変更を織り込んだ数字)
〈食品事業は国内外とも家庭用食品堅調で増益確保〉
日本水産が5月13日に発表した2021年3月期連結業績は、売上高が前年比4.9%減6,564億9,100万円、営業利益20.8%減180億7,900万円、経常利益11.8%減227億5,000万円、当期純利益2.1%減144億5,200万円と減収減益も、当期純利益はほぼ前年並を確保した。同日、オンラインで決算会見を開き、山本晋也取締役常務執行役員最高財務責任者が業績や方針等について説明した。
日本水産 山本常務

日本水産 山本常務

 
コロナ禍による外出自粛等で家庭内消費が増加し、家庭内食品の販売は国内・海外とも堅調に推移した。一方、外食・観光需要の急減で水産品・業務用食品の販売が減少、需要減により水産市況が悪化したほか、CVS向け商品の売上にも影響した。国内外の養殖事業では、販売価格下落に加え減産もあり、厳しい事業環境となった。
 
ただ、下期は回復してきており、上期は前年同期比で売上高7.1%減、営業利益37.1%減、経常利益26.2%減に対し、下期は売上高2.6%減、営業利益5.5%減、経常利益0.9%増と経常利益レベルで前年を上回り、当期純利益は昨年発生した株価急落による株式減損の影響がなくなったこともあり、上期35.7%減に対し下期35.7%増と大きくプラスとなった。事業別では、下期は海外の水産が引き続き苦戦したが、食品は上期から続く家庭用の好調に加え、業務用・CVS向けの改善も見られたという。
 
〈食品事業〉
売上高2.1%減3,300億3,700万円、営業利益9.7%増140億0,500万円と減収増益だった。うち、加工事業は減収増益。家庭用の冷凍食品・チルド商品が堅調に推移し、苦戦する業務用をカバーした。チルド事業は減収減益。上期、在宅勤務の増加や観光需要減で人手が大きく減り、CVS向け商品の受注が減少した。下期はチルド弁当や調理麺の回復、経費削減効果もあったが、年間では減収・減益だった。
 
〈水産事業〉
減収減益。コロナ禍による水産物の需要減があり、漁業・養殖は減産や価格低迷などが重なり大苦戦、漁撈事業・養殖事業ともに減収減益。加工・商事事業は北米でコロナ対策や原料の小型化等によるコスト増と歩留まり低下が響き減収減益となった。
 
〈ファインケミカル事業〉
機能性原料・機能性食品の販売は堅調に推移したが、医薬原料の販売減少や、医薬品販売会社の売却もあり減収減益となった。
 
〈物流事業〉
業務用顧客の荷動き低迷や入庫減少が続くが、大阪舞洲物流センター2号棟の新規稼働や経費削減効果もあり増収増益となった。

日本水産2021年3月期セグメント別概況(「その他」はエンジニアリング事業、船舶運航事業等)

日本水産2021年3月期セグメント別概況(「その他」はエンジニアリング事業、船舶運航事業等)

 
2022年3月期は、売上高6,420億円、営業利益200億円などを計画。会計基準の変更があるため、それを織り込んだ前年比で売上高4.4%増、営業利益11.3%増の増収増益計画となる。山本常務は「体質強化の1年とし、弱点を克服するとともに強みを強化し、次期中期経営計画につなげる。世界経済の正常化には時間を要すると考えられ、リスクを一定程度織り込んだ計画とする」など話した。
 
〈冷食日報2021年5月14日付〉