“外食相当”の品質追求、冷凍パスタ「オーマイプレミアム」ヒットの要因とは/ニップン〈ブランドの創りかた〉

ニップン「オーマイプレミアム たらこといか」
低価格帯の冷凍パスタが市場の大部分を占めていた2003年春。ワンランク上の商品を求める声に応えるために、ニップンは「オーマイプレミアム」シリーズを投入した。発売当初から外食のスパゲッティに相当する品質を追求し、一度喫食した消費者からの支持は厚い。開発に営業が携わり、トレンドにも敏感に反応できているという。このブランドは、どのようにして支持されるようになったのか。冷凍食品事業本部冷食営業部次長の篠山(ささやま)康司さんに聞いた。

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ニップン 篠山次長

ニップン 篠山次長

 
〈ブランド最初の商品はきのこ使った2種のスパゲッティ〉
2003年に初めて「オーマイプレミアム」として投入した商品は、「きのこボロネーゼスパゲッティ」と「鮭ときのこスパゲッティ」の2品だ。販売価格は300円程度を想定していた。赤を基調にしたパッケージで高級感を演出していた。
 
販売に至ったのは、個食冷凍パスタの利用者からの声だ。「味のバリエーションや、ボリュームが少ない。味わいも物足りない」との意見があったという。商品について議論を重ねる中で、ワンランク上の商品があっても良いのではという結論から上市に至った。個食パスタで紙トレーをいち早く採用し、味や品質にも自信があった。
 
当時の個食冷凍パスタの多くは価格が250円以下で、今でこそ少ないが100円均一販売の冷凍パスタも少なくなかった。その中で300円という価格設定は挑戦的と言える。
 
ただ、当時の市場ではその価格帯の商品をまだ受け入れられる環境ではなかった。篠山さんは「300円というプライスラインがなかった当時、スーパーのバイヤーさんも売れるかどうか懐疑的だった」とする。弁当関連の商品が冷食の売り上げの中心だった当時、個食冷凍パスタの販売スペースが今ほど広くなかったため、採用されにくかった。篠山さんは「最初の2年ほどは導入してくれる店舗は少なかった」と振り返る。
 
商談のたびにサンプルを持ち込み、バイヤーや売場の担当者に実際に食べてもらった。採用してもらえた店舗では積極的な試食販売を行うなど、地道な活動に尽力した。
 
〈最初のヒットは「たらこといか」〉
最初のヒット商品が出たのは2005年。「オーマイプレミアム たらこといか」という商品だ。その頃、外食でたらこスパゲッティが定着しつつあった。それを踏まえた商品投入が功を奏した。「このシリーズは外食のメニューを意識し続けてきた。『たらこといか』も流行をうまくキャッチした開発が成功の要因だったのでは」と話す。この商品のヒットから配荷店は広がり始め、ラインアップの拡充にも成功した。
 
2度目の転機となったのは、2012年のパッケージリニューアルだ。シリーズの売上は、メニューの拡充と共に伸長し続けており、さらに高い売り上げを目指すべく取り組んだ。
 
これまで洋風は赤、和風は黒を基調としていたパッケージを、白を主体としたパッケージに変更し、統一感が出るようにした。「これまでのファンが離れてしまうのでは」という危機感もあったが、購買の中心だった主婦層から支持され、販売は順調に伸びたようだ。
 
2013年にはサブブランドとして「彩々野菜」シリーズを投入した。冷凍食品は体に良くないというイメージを持つ人も少なくない。このイメージを払しょくすべく発売に至った。野菜不足が世間的に意識された時期に、野菜をふんだんに使用してヒットした。
 
2016年春には、黒を基調としたパッケージへ再び変えた。同社の商品以外でも白いパッケージの商品が増え、売場で目立ちにくくなっていた。シズルが浮き出るようなデザインにして高級感は失われないようなバランスを目指した。その結果、売上はより伸長した。
 
〈トレーをリニューアル 満足感与えられる改良を〉
2019年にはトレーのデザインを変更した。これまでは白地にベージュの縁取りというシンプルなデザインだった。それを2色6種類のデザインを用意し、喫食時に飽きさせないよう工夫した。
 
「デザイン付きの紙トレーの方が上質感や食事の楽しさを感じられるのでは」という意見から、この変更に至った。
 
篠山さんは「いつもバイヤーさんに言われるのは、『オーマイプレミアムなら味は間違いない』との言葉だ。だからこそ、どんな商品が出るのか楽しみとの声もいただいている」と話す。冷凍パスタの市場は年々拡大し、成熟期にあるという。それでも、半分近い人が冷凍パスタをまだ食べたことがない。こうした人に1度食べてもらうことで、より市場を広げられると予想できる。
 
篠山さんは「売上こそ伸長しているが、それに安住せずに細かいリニューアルを続けていく。満足感を少しでも感じてもらい、期待に応えられるような商品を出し続けたい」と力を込めた。
 
〈冷食日報2021年6月1日付〉