エア・ウォーター子会社トミイチ九州の農産物加工施設が完成、取扱量が約1.3倍の年間1万2,500トンに

施設外観
エア・ウォーターの完全子会社で九州産青果物の卸売や冷凍野菜の製造・販売を行う、トミイチ九州(本社:鹿児島県鹿屋市)はこのほど、建設を進めていた農産物加工施設が完成し、6月21日から九州地区での農産加工事業に本格参入した。農業・食品関連事業のグループ会社である、北海道のトミイチとトミイチ九州を合わせた冷凍野菜の取扱量は2024年度に、これまでの約1.3倍となる年間1万2,500トンになると見込む。

トミイチ九州は2019年10月に設立され、2020年6月から九州産馬鈴薯やかぼちゃの卸売を始めていた。今般、野菜加工と冷凍保管機能を持つ農産物加工施設を新設し冷凍野菜の拡販を図る。主に南九州エリアで収穫された大根、馬鈴薯、かぼちゃなどを加工し、西日本を中心に本州の消費地へ供給する。

背景には野菜加工品のニーズが高まっている一方で、異常気象の頻発により原料野菜の安定調達のために産地分散が重要課題となっていることがある。

北海道のトミイチ(旭川市)は原料野菜の仕入れから加工・冷凍・検査・保管までの自社一貫体制が特徴で、全国の食品メーカーや外食チェーンなどに製品を供給。主に北海道産の馬鈴薯、かぼちゃ、大根など青果物の卸売、それらを加工した冷凍野菜の製造・販売を手掛ける。業務用の冷凍大根おろしや冷凍かぼちゃでは全国トップクラスのシェアをもつという。

近年、中食市場が拡大し、人手不足が続くスーパーマーケットでは店舗での作業負担を減らすために、野菜加工の省力化・半調理化ニーズが高まっており、足下では巣ごもりによる内食需要が高まり、保存が容易で調理が簡便な冷凍野菜の需要が伸びている。その一方で、国内の野菜市場は異常気象の頻発により価格相場が大きく変動しやすく、安定供給の実現には原料野菜の産地分散化がより重要になっている。

同社グループでは原料野菜の主産地としてきた北海道と収穫期が最も異なる九州地区での産地開拓として、トミイチ九州を設立した。なお、これらの取り組みは、農林水産省が実施する「産地生産基盤パワーアップ事業」に認定されている。

今後の事業運営では、エア・ウォーター西日本と資材調達や販売面で緊密に連携し、運送業務はグループ物流会社で青果物の輸送にノウハウ、実績をもつ、桂通商に委託する。グループの総合力を最大限に生かした農産加工事業を展開する方針だ。

大根おろしの製造工程

大根おろしの製造工程

 
〈新設農産物加工施設の概要〉
▽所在地
鹿児島県鹿屋市吾平町上名4760番地3
 
▽面積
敷地面積8,676平方メートル、延床面積2,199平方メートル
 
▽構造物
選果場(686平方メートル/鉄骨造1階建、既存建物を利用)
野菜加工施設(821平方メートル/鉄骨造2階建、既存建物を改築)
冷凍保管庫(692平方メートル/鉄骨造平屋建、新設)
 
▽投資額
約15億円(うち約4割は「産地生産基盤パワーアップ事業」の補助金を活用)
 
▽取扱量
年間11,000トン(青果物8,000トン、冷凍野菜3,000トン、2024年度見込み)
 
▽取扱品目
大根、馬鈴薯、かぼちゃ、さつまいも
 
〈トミイチ九州(株)の概要〉
▽所在地
鹿児島県鹿屋市吾平町上名4760番地3
 
▽設立
2019年10月30日
 
▽代表者
代表取締役社長富永泰之(とみなが・やすゆき)
 
▽資本金
2,500万円(エア・ウォーター(株)100%)
 
▽従業員数
40名(2021年6月現在)
 
▽事業内容
青果物の卸売、冷凍野菜の製造・販売
 
▽売上高
10億円(2024年度計画)
 
〈冷食日報2021年6月22日付〉